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2012/07/10

大河ドラマ「平清盛」音楽全仕事

Cd_kiyomori1  NHK大河ドラマ「平清盛」の音楽を担当して一年。本編ドラマの方は全50回の中盤27回、最大のクライマックス平治の乱を終えたところだが、音楽は一足先にほぼ全作業を完了した。

 そこで、一年に渡る音楽制作の全貌を、ひとまずざっと統括してみることにした。ドラマを見る上での一興として、あるいはこういう種類の音楽を目指す若い人たちの何かの参考になれば幸いである。
(放送までのいきさつに関しては、今年1月の《大河ドラマ「平清盛」音楽制作メモ》に書いたので興味のある方はそちらもご参考に)

□制作日程

Kiyomori_2 すべては2010年9月下旬、NHKからの作曲の打診から始まった。
 まだ前々回の「龍馬伝」が佳境の頃。題材は「平清盛」。個人的に大河はやはり戦国武将系が好みなので、ちょっと変化球ながら面白い目の付け所だと思った。1年間NHKに毎週通うようなハードな制作方法ではないことを確認してから、内諾。

 ただし、この時点で分かっていたことは、原作はなく物語はオリジナル(脚本:藤本有紀)であること。清盛が栄華を極める以前の若い頃の話がメインであること。いわゆる雅な「平安絵巻」ではなくダイナミックな群像劇にしたいというコンセプトくらい。

 原作があれば、まずはそれを読み込むところから仕事が始まるのだが、それはないということで、ひとまず清盛がらみの小説や文献などを読み漁ることから始めた。そのあたりの詳しい話は前回の「制作メモ」を参照されたい。

 その間、もちろんブログなどで「大河ドラマの音楽をやることになりました」とか「題材は《平清盛》です」などと書くのは御法度。配役なども含め「くれぐれも正式発表までご内密に」と言い含められていた(笑)

 そして11月25日にタイトル(平清盛)や主役(松山ケンイチ)が発表され、本格的に2012年大河ドラマとして始動。(ちなみに2011年は「江〜姫たちの戦国」)
 その後も、配役とか内容に関しては「何月何日までは内密に…」とささやかれ続けることになる。

 そして迎えて2011年・・・

Photo 2月、ようやく第1回台本が届く。
 台本は、初稿・改訂稿・最終稿のように3種類あって、脚本家が書き下ろした台本に時代考証や演出上のチェックが入り、最後に収録に使用する「台本」が出来る。そのため、各回最低3冊の台本(一年間で150冊!が届く計算になる)

 今回のドラマを見た人によく「なに盛・なに盛・・・だらけで登場人物の区別がつかない」と言われるが、台本だけを最初に読んだ印象はまさにそれ。配役が決まっていないうちは「顔」が想像できなくて困った。

 3月、音楽に関する最初の打合せ
 ディレクター、プロデューサー、音響監督らと音楽の方向性などについての打合せ。かなりスケールの大きな物語であり、ひさしぶりのクラシック系作曲家起用と言うことで、壮大なオーケストラサウンドを期待していますとのこと。

 こちらも十代の時から見続けてきた伝統のドラマへの参加ということで、かなり力が入っていることを強調。個人的には、今や唯一の年間「時代劇」となった大河ドラマなので、音楽としては和楽器(特にこの当時の雅楽器)を全面に出したいと希望するも、これに関しては了解を得られず。この辺りから微妙な空気になる。

4月、京都〜神戸の清盛ゆかりの地を回って作曲の構想。
5月、私が今までに書いた曲(オーケストラ作品、雅楽や邦楽の作品など)から今回のドラマのイメージのきっかけとなるものをリストアップして検討会。

Kiyosamplea そして6月、いよいよ本格的にドラマの音楽のサンプル制作を始める。

 まずは主人公のモチーフ、敵のイメージ、平安時代の公家のイメージ、戦闘シーン、クライマックスシーンなどなどドラマの様々な場面を空想しての楽曲を制作。「遊びをせんとや」の初音ミク版、「清盛」「源氏」「公家」のモチーフなどはこの頃に決定。

 例えば6月4日稿では「清盛A〜E」「敵(源氏)A〜E」「公家A〜E」「雅楽風A〜C」「歌A〜D」「情景A〜C」など25曲37分ほどを作曲し、さらにデジタル音源で作ったオーケストラの音をCDにして制作側に試聴してもらっている。

 ところが、このように制作サイドからの発注がないまま、作曲者が自発的に作曲を進めるのは今までにはなかった作り方だったようで、トラブル発生。
 まず制作側から「曲の発注」があって、それに即した音楽を「作曲」し、それを放送に使うかどうか「確認(ハンコをもらう?)」というお役所のような段取りが必要だったらしい。このあたりでまた微妙なすれ違い。

 7月、そのことを含めた音楽のコンセプトおよび作成方法に関する意見が合わず、かなり厳しい雰囲気になる。
 もともと私はドラマや映画の音楽を作曲する「プロ」ではないので、40年間自分の音楽を作ってきた「やり方」は曲がらない(というより変えられない)。一方、NHKの方も長年ドラマをやって来た「作り方」があり、一年間音楽を安定供給するためのノウハウが固まっている(らしい)。

 結果、正面衝突し、本気で「この仕事降りる」と決心すること数度(笑)。現在放送されているテーマ曲も、実はこの頃制作側から「うーん、こういうのじゃなくて…」というノリで「ボツ」にされたためこちらが激怒。かなり険悪な状況になった。

 そんな中、8月17日、出演者&スタッフほぼ全員(200人近くいただろうか)がNHKの大きなスタジオに集まって顔合わせ。脚本:藤本有紀さん、主役:松山ケンイチ氏とも顔を合わせる。私の隣が伊東四朗さん、その隣が松田聖子さん、という凄いメンツ。
 写真でも撮っておけばお宝映像だっただろうが、とてもそんな雰囲気ではなく(笑)。こちらは6月以来ずっとかかりきりの作曲作業でほとんど外にも出られず、この日が8月中ほとんど唯一の「外出」日となった。

 そして翌日、撮影クランクイン。岩手にある藤原の郷に平安時代の京都のセットを作って大がかりな撮影が始まる。
「ぜひ一度、遊びにいらしてください」と言われたものの、こちらはそれどころではなく(笑)、頭から湯気が出ているような状況下でテーマ曲に七転八倒中。

Nhk509_2 9月27日、テーマ曲収録
 @井上道義指揮NHK交響楽団、p:舘野泉、歌:松浦愛弓

 テーマ曲は7月から8月末にかけて3タイプ(+異稿)を書いては潰しのハードワーク。しかも前述のように制作側と正面衝突していて、最終稿は合意が得られないまま「これで行く!」と押し通してしまった。
 そんな中での録音とあって、この時のぴりぴり度といったらなかった。ある意味スタジオには「殺気」が満ちていたかも知れない。おかげで緊張感溢れるいい出来になった点は怪我の功名か。N響とのすったもんだのレコーディング裏話は前回の制作メモ参照。

10月17日/18日、本編音楽第1回収録(計55曲)
 第1巻:オーケストラA(主人公のテーマ系)9曲
 第2巻:オーケストラB(背景系、メロディ系)10曲
 第3巻:アンサンブルA(抒情系)11曲/異稿を含め全16曲
 第4巻:アンサンブルB(ブリッジ系)11曲
 第5巻:雅楽ほか 7曲
 タルカスより@噴火:2タイプ
 @藤岡幸夫指揮東京フィル/雅楽:伶楽舎

Nhk505 テーマ曲を仕上げて休む間もなく、本編の音楽を書きまくる日々が続き、ほぼ4ヶ月が潰れる。なんとなく制作側との距離感もつかめてきて(向こうとしては言うことを聞かない作曲家の扱いに相当苦労されたとお察しするが)、想像力の赴くままとにかく書く…という独走態勢(?)がほぼ固まる。

 今回の収録は、気心の知れた藤岡幸夫指揮東京フィルの面々なので、スタジオは(もちろん緊張感はありながらも)和やかな雰囲気。最初に「タルカス」をフル編成で録り、その後2日かけての録音セッション。

 丸2日で30〜40曲、時間にして1時間強の音楽を収録する…というのは普通の劇場用映画なみだが、これを45分ドラマ中10数回分の音楽としてつかうのはかなりのやり繰りが必要になる。基本は「40曲くらい」という話だったのだが、「出来るだけ沢山ください(いくらあっても足りないので)」というリクエストがあったほど。

 そこで、この第一回の収録では(アンサンブル用に書かれた)一つの曲から…メロディ楽器在りヴァージョンと無しバージョン、打楽器在りバージョンと無しバージョンのように…複数のタイプを採取できるように意識して作曲した。
(ちなみに、この場合も複数回演奏する必要はなく、管楽器や打楽器を別ブースに入れてマルチチャンネルで録音する。そして、最後のミックスダウンの段階でその楽器を「抜く」か「加える」かすれば、1回のテイクの演奏から複数の楽曲が抽出できる…という次第)

 個人的には、雅楽にストリングスとノイズをかぶせた「剣ノ舞」が渾身の一曲。本心を言えば、こういう方向(雅楽楽器とオーケストラのブレンド)で全体の音楽を作りたかったわけである。

 10月31日□左手ピアノ&三手連弾収録(計5曲)
 5月の夢の歌、アイノラ抒情曲集ほか
 @舘野泉、平原あゆみ
 NHKからのリクエストで、別枠で舘野泉さんのピアノ収録。3手連弾の「5月の夢の歌」はお弟子さんの平原あゆみさんとの共演。

 と、音楽がひとまず出来上がって、ここから映像とのミックス作業になるわけだが、今回はそれについては演出側(と音響)に一任した。
 理由は簡単で、作曲作業(と音源制作作業)に膨大な時間と手間と労力がかかったうえ、さらにそのあと毎週映像と音楽の組み合わせ作業にもあたるには、体力がなかったこと。(これは、この仕事を受ける最初の段階で決定していた。三十代くらいなら徹夜してでもやったかも知れないが、老体では無理である。げほ。)

 もうひとつ、制作側と作曲側では音楽におけるコンセプトに相当なズレがあり、楽曲を作るまでにも相当な衝突とストレスを重ねたのは先に書いたとおり。もちろんお互い「ベストなものを創りたい」からこその衝突だが、このうえさらに「どこにどの音楽を付けるか」でぶつかるのはしんどすぎると考えたこともある。

 共同作業というと「お互いを信用し合って」というのが基本のように思われがちだが、「全く信用できない同志が双方全力でぶつかり合う」という作り方もアリなのだなと、しみじみ感じ入った。
 制作側は、私が「最小のモチーフを変奏して全体の世界観を作る」という作り方は(そうじゃなくてとにかく沢山曲数を書いてください!の一点張りで)全く理解できなかったようだが、私の方も平安時代の時代劇に「タルカス」や「カッチーニのアヴェマリア」を使うというのは全く理解できなかった。お互い様と言えば言えるわけで・・・

 そんなこんなで、一体どうなるのか?予測が付かないままいよいよ本放送が始まった。

□放送開始

Photo_2 2012年・・・・・
 1月8日、第1回「二人の父」放送。

 第一回放送は実家で見た。実を言うと作曲した当人も「どこにどんな音楽が付いているか」は放送で見るのが初体験(笑)。「なるほど、ここでこう来るか」「ええ〜、ここにこれが来るのか?」と感想は色々あったが、概ね「なるほど」と感心する方が多かった。

 武士が主人公なのでかなり骨太のタイプの曲を書いたつもりだったが、むしろ(貴族用に書いた)優しいタイプの曲の方がメインに使われていたのがちょっと意外だった。しかし、ドラマの展開の激しい外見よりも、登場人物の内面のデリケートな心の動きの方に焦点を当てた付け方であることは良く分かった。

 このあたりは、もし私自身が音楽を付けたら全く違った方向になっていただろうとしみじみ思う。作曲者としては作った音楽の思い入れがあるので、客観的には付けられない。そのあたりは人によって意見は色々だろう(某作曲家には「自分の音楽を何処に入れるかは自分で決める。そうでないやり方は考えられない」と言われたこともある)が、これはこれで良いのでは?と思っている。

2月1日、サントラ盤発売。

2月6日、□紀行の音楽収録(計4曲)
 紀行@2曲:版違え4曲
 @ チェロ:長谷川陽子、二十絃:吉村七重

 第一期の「紀行」の音楽は、本編音楽と一緒に、舘野泉さんピアノ、木嶋真優さんヴァイオリンで収録。しかし、第二期の音楽は違ったソリストでということで、チェロの長谷川陽子さん、二十絃箏の吉村七重さんという和洋折衷コンビで収録。
 曲は「夢詠み」と「桜の下」の2曲。デュオのみのバージョンと、弦楽アンサンブルのアフレコによるバージョンとそれぞれ2パターンの計4曲を収録した。

3月14日/19日□本編音楽第2回収録(計30曲)
 第6巻:アンサンブル(追加曲)13曲。雅楽アフレコ2曲
 第7巻:合唱追加@11曲。二十絃追加@2曲
 @藤岡幸夫指揮東京フィル/合唱:二期会

 本編音楽第2回めの収録は、放送されたドラマを見て「こういう音楽も欲しい」と感じた追加曲集。中盤以降の保元平治の乱などでのスケールアップを図るため、第1回で収録したオーケストラ曲に合唱をアフレコで加えることも試みた。中には、使うあてもないのに今様をがっつりフルコーラスにしたものまである。

 管弦楽の方はフルオーケストラではなく、いくぶん小振りの室内オーケストラ。ちょっと意識して「弦楽器と打楽器とチェレスタ(バルトークの名曲)」の編成に合わせ、曲も少しミステリアスなものを増やしている。

 ちなみに、この回あたりから、モチーフが相互に絡み合う対位法的な作り方を強調し始めたのだが、やっているうちに「源氏と遊びをを掛け合わせて」とか「清盛を公家とからませて」とどんどん止まらなくなってきた(笑)。

Chorus

そして、1月〜5月にかけて劇中で歌う今様(7曲)も作曲。
 「遊びをせんとや」「舞え蝸牛」
 「よくよく目出度く舞うものは」「女人五つの障りあり」
 「われを頼めて来ぬ男」「美女うちみれば」「長恨歌」

 これは、劇中に登場する白拍子が歌ったり、後白河天皇が口ずさんだりするもの。iPadのボーカロイドアプリ(YAMAHA iVOC)で音源を作り、それを芸能指導の方が俳優さんに口伝で教える…という方法で制作している。

506a_3 6月5日/6日□本編音楽第3回収録(計32曲)
 第8巻:オーケストラ@10曲
 第9巻:アンサンブル@16曲
 +タルカス@2曲(マンティコア、アクアタルカス)
 +サイバーバード協奏曲より4曲
 @藤岡幸夫指揮東京フィル
 二十絃:吉村七重、琵琶:稲葉明徳、笛:竹井誠
 ソプラノ:市原愛、sax:須川展也、p:小柳美奈子、perc:山口多嘉子

 いよいよ最終収録回は、ふたたび第1回と同じくフルオーケストラの布陣。ただし、「とにかく曲数が欲しい」第1回に比べるともう少しじっくり制作できた。個人的には、「遊びをせんとや」風ストリングスのヘビーローテーションになっている現状を変え、少し低音重視のゴツイ曲を増やしたつもりである。

 曲調としては、いくぶんダイナミックな(昔の白黒映画時代の時代劇のような)ごりごりしたオーケストラサウンドのものを幾つか。そして、(少し余裕が出てきたのか)プログレ風エスニック風アヴァンギャルド風ワルツ風などなど「そんな音楽何処で使うんだ!」とツッコミが入りそうな曲を幾つか。(本当に何処で使われるのか?書いた本人が一番楽しみ!だったりする)

 琵琶や笛などソリストが入る曲は、最初にオーケストラだけでカラオケを作り、それにソリストの演奏をアフレコ(After Recording)でミックスして作成。
「タルカス」と「サイバーバード」の追加録音は、NHK側からのリクエスト。サイバーバードのソリスト3人も後日アフレコで参加。壮絶な演奏を繰り広げてくれた。

Kiyo2w □劇中音楽たち

 というわけで、丸一年かけてドラマ用に書き下ろした新曲は計100曲ほど。
 登場人物やシーンの音楽…という発想ではなく、全編を貫く4つのモチーフ=清盛(平家)、源氏、朝廷(公家)そして「遊びをせんとや」の変奏で100曲を作ってしまおうというのが(前回の制作メモに書いたように)基本コンセプト。ゆえにほとんど全ての曲に、そのどれかの断片が組み込まれている。

 編成は「オーケストラ」にこだわった。ドラマの音楽としては、ソロとか2〜3人の小アンサンブルというのもアリなのだが、新曲の中にはひとつもない。
 最大編成はもちろんテーマ曲で、3管編成(3-3-3-3,6-3-3-1,6perc,hp,pf,Strings)に左手ピアノ、そして子供の歌が加わる。

 それ以外の劇中音楽は、通常の二管編成(3-2-2-2,4-3-3-1,4perc,hp,pf,Strings)のものと、室内オーケストラサイズ(picc, fl, ob,ハープ、打楽器、ピアノ、弦五部)のものの2種類。

 分量としてはかなりの量だが、1年間で50回のドラマとしては、例えば1話に12曲使うとしても全部で600曲。当然ながら多くの曲は繰り返し使われることになる。
 悪く言えば「使い回し」のわけだが、同じ音楽が何回か別々のシーンで登場することになる以上、(繰り返し聞くに耐えるように)クオリティをあげる必要がある。逆に言えば「一回で使い捨ての音楽」を書く方が楽とも言える。

 ただ、反省すべきは、「質」と「量」は常にバランスを考えるべきだということだ。
 使う方としては確かに「曲はいくらあっても足りない」。しかし、それを真に受けて無尽蔵に供給することは(労力の点から見ても、コストの点から見ても)愚かしいことで、プロの仕事ではない。
 今回は(冗談めかして言えば)「労力3年分で収入3ヶ月分」の仕事だった。これはもうプロとしては失格というしかない(泣)。

Cdtarkus □既成の楽曲+

 さらに、今回の「平清盛」では、ドラマのために書かれたオリジナルの新曲以外にも既成の楽曲が幾つか使われている。

◆タルカス

 タルカスは、EL&P(エマーソン・レイク&パーマー)が1971年に発表したプログレッシヴロックの名盤「タルカス」のタイトル曲。
 初めて聴いたのは大学生の頃。以来「これはオーケストラになるのでは?」と思い付き40年間ひそかに耳コピをしつつプライベートにオーケストラ編曲を進めていた掌中の珠。
 それがひょんなことから2010年に東京フィル創立100年の企画コンサート「未来への音楽遺産」で披露されることになり、最終的にはCD化もされ大きな反響を得ることになった。

 それを耳にしたNHKの制作陣(特にチーフ・ディレクターの柴田岳志氏)が私に白羽の矢を立てたわけで、ある意味では今回の大河のイメージテーマ曲と言える。

Tarkusbook この「タルカス(Tarkus)」というのは作曲者キース・エマーソン氏が考えた空想の動物(アルマジロのような甲羅を持つ戦車のような生物兵器?)。
 火山の噴火の中から生まれ、世界を破壊しつつ進むうち宿敵マンティコア(ライオンと人間がブレンドされたような怪物)と戦い、勝利したものの傷ついて海に帰って行く。

 考えてみれば、火山の噴火の中から生まれたタルカスは、まさに大きな激動の時代の中から生まれた「清盛」そのもの。生物なのか戦車なのか出仕が分からないがあたりも、武士の子なのに上皇の御落胤という主人公の出仕と重なる。
 そして、彼を苦しめる宿敵マンティコアは「源氏」。最後は海に帰って行く(アクアタルカス)というのも、海上貿易に生きた清盛の姿と壇ノ浦という海に消えた平家の行く末にダブる。まさしく(偶然ながら)ぴったりの素材である。

 全曲は20分近い長さのものだが、ドラマのために冒頭とコーダ(曲の最後)を繋げた2分弱の短縮版を新たに録音。クライマックスシーンなどで使われている。
 その後、第3回めの録音では新たに「マンティコア」と「アクアタルカス」も収録。ドラマ後半で活躍するはずである。

 ちなみに、サントラ盤第2集では、この版(噴火短縮バージョン)を収録する予定。全曲版はCD「タルカス〜クラシックmeetsロック」(コロムビア)に収められている。

◆ピアノ曲
Cd_pleiades_2 タルカスと並んで、最初からのリクエストに上がっていたのが「5月の夢の歌」という曲。
 元々は、むかしむかし某ラジオ番組のために「心温まる投書を朗読するシーン」での音楽として書かれたものが原形。のちに「4つの小さな夢の歌」というミニ四季組曲の〈春〉として発表。ギター、ピアノ、ハーモニカとピアノなどなど色々な編成で演奏されCDも多く出ている。

 この曲は演出側から、平家の「家族の絆」のイメージ曲として考えられていたようで、ドラマの激しい部分は「タルカス」、優しい部分はこの「5月の夢の歌」というのが、大河ドラマ「平清盛」の音楽の最初の構想だったそうだ。

 実際、冒頭のテーマ曲を書いている時、「どういう曲がいいんですか?」と言ったところ返ってきたのが…「《5月の夢の歌》で始まって、後半が《タルカス》」という無茶苦茶なアイデア。(いや、それも実際に作ってみたのですけどね!)。
 そんなわけで現在の最終版(今、放送されているもの)にも、その片鱗が残っている(笑)

 そんなこんなで「5月の夢の歌」を舘野泉さんのピアノで収録することになったのだが、せっかく舘野さんにスタジオに来てもらって一曲だけ録音というのももったいない…ということで、カッチーニなど5曲ほども録音することになった。
 ただし、録音している時は(何度も言うように)、どこにどんな風に使われるのか全く分からなかったし、想像もできなかった。ドラマと言うのは分からないものである(笑)

◆カッチーニのアヴェマリア
「タルカス」と共にもうひとつ、私の作曲ではない挿入曲が「カッチーニのアヴェマリア」。
 これは数年前、舘野泉さんのためにシューベルトのアヴェマリアなどと共に左手ピアノ用に編曲を施したもので、今では舘野さんのコンサートでは定番のアンコール曲。なぜかは分からないが知らない間に涙が出て来る不思議な曲である。

 カッチーニはイタリアのバロック期の作曲家だが、これは彼の作ではなく現代ソヴィエトの作曲家(故人)によるもの。フリース作曲の「モーツァルトの子守唄」と同じで、カッチーニの「アヴェマリア」ではなく、「カッチーニのアヴェマリア」が正しい。

 8つのコードが延々繰り返される構造は、バロック期の名曲パッヘルベルのカノンなどと同じだが、ビートルズなどにも通じるかなりポップスっぽい作りであるとも言える。シンプルな曲ながら、あまりの美しさで90年代以降世界的に広まった名品である。

□今様

 今回、本編の音楽以上に頭を悩ませたのが、ドラマ全編の隠れメインテーマとも言うべき今様「遊びをせんとや」。後白河法皇が編纂した「梁塵秘抄」に収められた膨大な今様の中でもっと有名なもののひとつである。(これについても詳しくは前回の「制作メモ」を参照のこと)

Asobi♪遊びをせんとや生まれけむ
 戯れせんとや生まれけん
 遊ぶ子供の声聞けば
 我が身さえこそ揺るがるれ

 これは、台本もまだ無いうちから「遊びをせんとや…という歌が全体を貫くテーマとして全編に出て来ますから」と言われていたので、3〜4ヶ月かけてじっくり作り込んだ。笙だけの伴奏でも歌えるように笙の和音…雅楽の「平調」という音階でそれっぽく…しかしちょっと間合いなどをひねって(しかも3拍子で)…書いたのだが、「あ、これ、いいじゃないですか」と意外な好評で採用になった。

 放送当初「西洋音階に聞こえる」という声があって苦笑してしまったが、平安時代にはまだ日本音階も西洋音階もない。なにしろバッハが生まれる500年以上も前の世界なのだから。
 当時は逆に、大陸(中国や朝鮮半島あるいは東南アジアからインドまで)から様々な音楽が入ってきて、色々なタイプの音楽がそれこそ…戦後日本にジャズやロックが次から次へと入って来たような…何でもありの活気あふれる時代だったような気がする。

Mikus ちなみに、最初期にイメージを伝えるためサンプル音源をヴォーカロイド「初音ミク」で制作。そのことを前回の制作メモでちらっと書いたところ思いもかけず話題となり、ネットで騒がれ、テレビ出演まですることに(笑)。世の中分からないものである。
 サントラの第2集ではその原版を(ミクの制作元クリプトン・フューチャー・メディアのご厚意を得て)収録する予定。

□雅楽

Gagakua 清盛の時代の(特に宮中での)音楽は何と言っても「雅楽」である。
 雅楽はまさしく平安時代におけるオーケストラ。《管絃楽》という名の通り、管楽器(笛、篳篥、笙)と弦楽器(箏、琵琶)そして打楽器(鞨鼓、鉦鼓、太鼓)からなっている。(正確には《管絃打楽》だが…)

 と同時に、これは平安時代のロックバンドでもある。3人一組の打楽器…鞨鼓(スネア&タム)鉦鼓(シンバル)太鼓(バスドラム)…はそのままドラムセットであり、琵琶と箏はベース&サイドギター。オルガンサウンドの笙はキイボード、そしてメロディ担当の篳篥と笛はリードギターに当たる。これに歌謡(ボーカル)が加われば、そのままロックバンドなのである。

 主流となるリズムは普通に4拍子や3拍子ではあるが、中には3拍子と2拍子が交互に出て来る《ヤタラ拍子》というのがある。これは実質5拍子でなんとタルカスと同じだ!。
 もちろん変拍子なので当時も非常に演奏しにくかったようで、「やたらと難しい」という言葉の語源となっているほど(というトリビアもブログで書いた)。

□和楽器
Heike そんな時代に一世を風靡した平家は、楽器の名手が多いことでも知られている。
 中でも「敗れ討たれし平家の公達あわれ」と《青葉の笛》で歌われた平敦盛が笛の名手だったことは有名。清盛の甥(弟経盛の長男):経正は琵琶の名手だったほか、平家一門には器楽の名手が多い。

 そこで当初は、そういった和楽器の音楽をかなり突っ込んで作ってみようと手ぐすね引いて待っていたのだが、制作側としてはそこまで《当時の音楽》に力を入れて作る意図はなかったようで、最終的には「時代考証」の範囲内での演奏になった。そのあたりはちょっぴり残念ではある。

Biwa 琵琶
 ドラマの中では、清盛の最初の妻が琵琶の名手という設定。次の妻時子も琵琶をたしなむ。当時弾いていたのは《楽琵琶》と言われるもので、ギターのように横にして抱き、しゃもじのようなバチでボロロンとゆっくり和音を掻き鳴らす。

 現代の私たちには、《琵琶》といったらベンベンと掻き鳴らす平家琵琶のイメージだが、あれは平家が滅びたのち(おそらく)100年以上たってから盲僧が「平家物語」を吟じるために生まれたもの。現在のような薩摩琵琶が生まれるのはさらに200年以上たった江戸時代になってから。清盛の時代には当然まだない。

 ドラマの中で女性たちが弾いていたのは、曲と言うよりほとんど調弦されたままの開放弦。当時はなにかメロディのようなものを弾くというより、楽器をただ鳴らし、その「音」そのものを楽しんだのだろう。日本語に「心の琴線に触れる」という言い方があるように、絃のビーンと震える響きは、確かに心を震わせる。

 ちなみにドラマの中で俳優さんが弾く琵琶は、芸能指導の友吉鶴心さん指導のもと俳優さんが実際に弾いているもの。劇中曲としては、その演奏をエコーさせるために一曲「枇杷」という曲を書いた。楽琵琶とストリングスとの静かな協奏である。

 笛
 先の敦盛ほどではないが、清盛もかなり笛をたしなんだという。どのくらいの腕前だったか分からないが、かなりいい楽器を持っていたようだ。
 ドラマでは特に笛のシーンでの楽曲のリクエストはなかったが、どうしても一曲作っておきたくて「細波(さざなみ)」という笛をフィーチャーした曲を作った。江戸時代以降の笛(いわゆる「篠笛(しのぶえ)」ではなく、雅楽で使う当時の「龍笛(りゅうてき)」での演奏である。

 笙
 笙は掌サイズのミニオルガンで、実に摩訶不思議な響きがする。今様などは、この楽器を伴奏にして歌われることが多かったようで、ドラマでも使いたかった楽器のひとつ。
 ドラマ後半では伊豆に流された源頼朝が「笙」を吹くという設定がある。

Yoshimura 箏
 私たちがいわゆる「お琴」として思い浮かべる…チントンシャンと粋に鳴らす楽器は江戸時代のもの。清盛の時代の箏は《楽箏》といって弦の数は後のお琴と同じ13本。ただしお琴よりは弦が太く、竹製の爪で掻き鳴らす。

 今回のドラマの音楽で「箏」として鳴らしたのは二十絃という楽器。普通のお琴が十三絃、中低音専用の箏が十七絃。二十絃はそれよりさらに音域を広げた新しい楽器である。
 個人的には(どうしても西洋の香りがする)ピアノよりこちらを全面的に使いたかったのだが、「和楽器を全面的に使う」ということに関してはかなり激しい抵抗を受け、断念したいきさつがある。

□紀行の音楽
Kiko 本編終了後にゆかりの地を紹介する1分半のミニ番組が「大河ドラマ紀行」。1991年の「太平記」より、番組にちなんだ名所旧跡を訪ねる「紀行」コーナーとして定着したそうだ。

 音楽は…春、夏、秋、冬という季節に合わせてか…3ヶ月ごとに変わるのが最近の定番。というわけで楽曲は、全部で4パターン作った。第一期は舘野泉さんのピアノと木嶋真優さんのヴァイオリンによる「夢詠み」(これは第一集に収録)、第二期はチェロ長谷川陽子さんと二十絃吉村七重さんによる「桜の下」。
 これから放送される第三期はソプラノの市原愛さんによる「友愛」、最後の第四期は再びチェロと二十絃による「夢詠み」の予定。いずれもバックは藤岡幸夫指揮東京フィルである。
 

□演奏者たち
 最後に、今回音楽に関わってくれた演奏家たちを紹介して締めとしたい。

Photo_3 オーケストラ(テーマ曲)
 井上道義指揮NHK交響楽団

 大河ドラマの冒頭テーマ曲はNHK交響楽団による演奏が伝統。これは第3回「太閤記」からずっと続いている。指揮者は毎回違うが、だいたい中堅どころのクラシック指揮者が担当し、外山雄三、岩城宏之、森正、若杉弘、山田一雄、尾高忠明、大友直人からデュトワ(葵徳川三代)、アシュケナージ(功名が辻、義経)まで錚々たるマエストロたちの名前が並ぶ。

 劇中音楽は作曲家の指揮というのもアリだが、テーマ曲にそれはない。完全に「クラシック系」の作りを意識しているようである。
 今回の指揮者井上道義氏も日本のクラシック界を代表する指揮者。私個人も「朱鷺によせる哀歌」「鳥たちの時代」といった作品を演奏してもらっているお馴染みのマエストロである。
 
506b オーケストラ(劇中音楽)
 藤岡幸夫指揮東京フィル

 それに対して、ドラマの中の音楽は、いわゆるスタジオミュージシャンによる演奏が基本。と言ってももちろんクラシック系のアンサンブルだが、編成に応じて十数人ほどを集めてスタジオ収録(こちらは作曲者の指揮もあり)というのが多いようだ。

 今回は「オーケストラサウンド」にこだわったため、日本有数の老舗オーケストラである東京フィルに全面的にお願いすることにした。東京フィルは前年「タルカス」を初演したオーケストラでもあり、NHKでは昔からかなりの量の放送初演をこなしているので、通常のクラシックオーケストラよりかなり新しいモノへの順応力が大きいのもポイントの一つだった。

 指揮の藤岡幸夫氏は、イギリスでBBCフィルなどと私の作品集7枚を指揮している強力な右腕。交響曲第3番第4番などの録音初演をこなし、修羅場を共に切り抜けてきた仲。当然、私の作風(や性格?)は熟知しているし、お互い気心も知れている。一日で新曲二十曲ほどを次から次へと録音してゆくにはベストの布陣だ。

 ちなみに、番組冒頭のクレジットにはこの「藤岡幸夫指揮東京フィル」がない。NHK的にはスタジオミュージシャン扱いとして個々の演奏家の名称までクレジットしないということらしい。
 しかし、ドラマ全体の音楽を作っているのは彼らなので、番組最後の「紀行」で彼らをフィーチャーすることで「演奏:藤岡幸夫指揮東京フィル」のクレジットが番組の最後に毎回必ず流れるようにした。このあたりは「清盛流」知略の影響を受けたというか……(笑)

Photo_4 ピアノ:舘野泉
 舘野泉さんは日本を代表するピアニストのひとり。北欧フィンランドを拠点に、ロマン派から現代作品までを弾きこなす旺盛な演奏活動を展開していたが、10年ほど前に脳溢血で倒れ、その後左手のピアニストとして復活。以後、ますます精力的な活動を展開している。

 NHK側から「タルカス」の使用と並んで最初に相談を受けたのが「舘野泉さんにご登場願えないか」ということだった。東日本大震災から不屈の精神で起ち上がる日本を象徴するように、番組テーマ曲は舘野さんのピアノで始まる。冒頭ほんの一分ほどの登場だが、単音のピアニシモからフォルテの轟音まで、凄まじいダイナミクスの幅を聴かせてくれる。
 ドラマの中で強烈な印象を残す「カッチーニのアヴェマリア」や「5月の夢の歌」など、ピアノソロが聞こえてきたらそれは全て舘野さんである。

 ヴァイオリン:木嶋真優
 その舘野泉さんと紀行の音楽「夢詠み…紀行」で共演したのが、ヴァイオリン木嶋真優さん。彼女は同じ音楽事務所ジャパンアーツからの推薦による若い女性ヴァイオリニスト。
 舘野さんとの共演は初めてで、ほんの1分半の短かい演奏だったが、音が出た途端にすーっとあたりの空気が変わる存在感と芯のある豊かな響が素晴らしい。

Kikourec チェロ:長谷川陽子
 第二期の紀行の音楽「桜の下…紀行」に登場するのはチェロの長谷川陽子さん。日本のクラシック演奏界の新しい時代を作った人気演奏家の一人で、現代的な若々しい感性が魅力。
 今回の演奏でも、ナレーション付き番組のBGMだから少しおとなしい演奏で…というリクエストで演奏してもらったものの、「やっぱりフルに(情熱を込めて)演奏してみたい」と再度トライ。結局、そちらの方を使うことになった。美しくも情感溢れる演奏が聴ける。

 二十絃:吉村七重
 その「桜の下…紀行」で長谷川陽子さんと共演しているのが二十絃の吉村七重さん。私の作品集CDも何枚か出している名手で、「箏(こと)」のイメージを一新する美しい響きが圧倒的だ。
 ちなみに「夢詠み」は、元々は彼女のために書いた二十絃ソロ曲(夢詠み)の中に出てくるメロディをピックアップしたもの。ドラマ本編の音楽でも「慈愛」「虚無」「儀式」「息吹」「静寂」といった楽曲で登場してもらっている。

506st サクソフォン:須川展也、ピアノ:小柳美奈子、パーカッション:山口多嘉子
 ドラマ後半の音楽の「隠し球」が《サイバーバード協奏曲》。これもNHKからのリクエスト。どうせやるならと一番派手派手しいところを初演以来の黄金トリオで演奏してもらった。須川氏の狂乱のアドリブ咆哮がどんな場面を彩るのか…お楽しみに。

 ソプラノ:市原愛
 7月後半から流れる第三期の紀行の音楽「友愛…紀行」でヴォーカリーズ(歌詞のない歌)を歌ってもらったのはソプラノの市原愛さん。NHKスペシャル「知られざる大英博物館」(音楽:岩代太郎)でも美しい歌声を聞かせている。

 笛:竹井誠
 唯一の笛の曲「細波(さざなみ)」を演奏してもらったのが竹井誠さん。日本音楽集団で尺八と笛を兼任する名手。一口に笛といっても、情感溢れる雅楽の「龍笛(りゅうてき)」や、鋭い響きの「能管(のうかん)」、和風な響きの「篠笛(しのぶえ)」など色々な楽器があり、その表現する世界も色々。もう少し笛の曲を書きたかった。

 琵琶:稲葉明徳
 楽琵琶のために書かれた「枇杷」でのソロは稲葉明徳さん。むかし拙作「星夢の舞」で壮絶な篳篥のアドリブソロを聴かせてくれ、笙や笛からジャズのサックスまでこなすマルチプレーヤー。今回の大河ドラマには音楽監修や雅楽演奏などでも参加している。

Reigakusha 雅楽:伶楽舎
 日本における雅楽の専門集団としての老舗は、もちろん宮内庁の式部職楽部。
 しかし、一般にもプロ活動している雅楽集団というのがあり、伶楽舎はそのひとつ。1985年、芝祐靖氏を音楽監督にして結成され、古い雅楽の演奏や現代雅楽の初演など意欲的な活動をしている。
 私も1997年に国立劇場での雅楽「鳥夢舞(とりゆめのまい)」、2007年に委嘱による雅楽「夢寿歌(ゆめほぎうた)」で一緒に仕事をしている。

 清盛が初めて宮中で舞楽を舞うシーンでの「剣の舞」、忠盛の「舞楽」で登場。前者は清盛(平氏)モチーフの雅楽。その他「遊びをせんとや」の旋律による舞楽、白拍子(女性のダンサー)が舞い歌う場面などでも演奏を聴かせてくれる。

 二期会(合唱)
 二期会は1952年創立の老舗の声楽家グループ。オペラ活動を中心にする日本のクラシック音楽界には欠かせない団体である。
 今回は、第二回の収録でオーケストラ曲にかぶせるコーラスとして参加してもらった。編成は男性6女性4。男性合唱は「謀略」「戦闘」など源氏のモチーフの低音強化。女性合唱は「慈愛」「記憶」「友愛」などで抒情的かつ耽美的なサウンドを膨らませたほか、劇中で歌われた今様「我を頼めて来ぬ男」のコーラス版も歌っている。混声合唱では「勇み歌」「決意」などで大団円的な壮大なオーケストラ+コーラスサウンドを作り上げてくれた。

          *

Cdtatenoyoshi 大河ドラマ「平清盛」の音楽

 ■平清盛サウンドトラック盤(第1集) 
 COCQ-84927

 テーマ曲のほか上記の劇中音楽の中の第一期収録分から全27曲が収められている。
 第2集は、第3期収録分を中心にタルカスなどを含め9月中旬発売予定。
 また、今回収録された音源を網羅した「コンプリートBOX」も企画中。

 ■舘野泉X吉松隆 
 AVCL-25762

 こちらは舘野泉さんのピアノで、ドラマに使われたものを中心に収めたコンピレーション・アルバム。「紀行三景」(遊びをせんとや、友愛、夢詠み)の左手ピアノ版は今回書き下ろしたもので初録音。

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