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錦糸町のトリフォニーホールへ舘野泉さんのリサイタルを聴きに行く。
左手のピアニストになられてからも精力的な活動をこなし、大ホールの満員の聴衆を音楽に引き込む手腕は少しも衰えていない。拙作「タピオラ幻景」は2月の初演以来8ヶ月ぶりに聴いたのだが、「ずいぶんと上手くなったでしょう? あれからフィンランドや日本で20回以上弾いてますし、CD録音もしましたから」と微笑む舘野さん。
で、ちょっと頼まれていた3手連弾(両手+左手)用の小品の楽譜を渡す。新作ではないのだけれど、以前、美智子皇后と舘野さんとの連弾用に頼まれて書いた「子守唄」の姉妹編。「もう一曲くらい書いてくださいよ」と言われて、デッサン用の五線紙が切れていることを思い出し、昼のコンサートだったので帰りに楽譜店に寄って補充する。コンピュータ上で作曲すると言っても、最初の最初の音符はやっぱり鉛筆で五線紙に書かないとすまないのですよね。……人間だもの。
CD柴田恭兵「Yuji The Best」 (フォーライフ)届く。
実はここに収録されている「Running Shot(ランニング・ショット)」という曲、むかし東京キッドブラザースの仕事で知り合った柴田恭兵さんから「今度、刑事モノのTVドラマをやるんだけど曲を書いてくれない?」と言われて1986年(20年前!)に書いた私の唯一のポップス系ヒットソング。
ポップス系の曲を書いたのは後にも先にもこれ1回こっきりなのだが、そのTVシリーズ「あぶない刑事」で使われ、そこそこヒット(オリコン最高位7位)。おかげで、不遇の三十代をなんとか食いつなげた思い出の1曲である(笑)。
・このドラマ「あぶない刑事」(1986年10月〜日本テレビ)は、舘ひろし(タカ)と柴田恭兵(ユージ)の2人の刑事が主人公。最初のTVシリーズではエンディング・テーマを舘ひろし氏が歌うことが決まっていて、「それなら恭兵さんも歌わなきゃ」という話が放送直前になって急きょ持ち上がった…らしい。急にTV局に呼び出されてパイロット・フィルムを見せてもらい、恭兵さんからは「行くぜ!…っていう感じの奴を書いてネ」とだけ言われて書くことになった。恭兵さん演じるユージは、とにかく「(犯人を追いかけて)走る」&「(拳銃を)撃つ」ので、それで単純に「ランニング(走る)・ショット(撃つ)」というタイトルを思い付いたのだが、本来はテニスやゴルフの用語らしいと後で知った。当時は、ヒットするなんて誰も夢にも思わなかったから(そうでなければ、ちょっと知り合いで昔ロック・バンドをやってたというだけのクラシックの貧乏作曲家なんかに曲を頼むわけがない!)、作詞・作曲・編曲ぜんぶ一人でやった(…と言うか、やらされた、と言うか(笑)。でも、ものすごくうまい女声コーラス・グループをバック・コーラスで使えたり、当時の最新設備を持つ録音スタジオでコンピュータやシンセ音源や一流のスタジオ・ミュージシャンを扱えたりして、なかなか面白い仕事だった。ちなみに、劇中歌として流れたのは、放送が始まってから2ヶ月ほどたった第10話あたりから。
・曲としては、20年も前のコンピュータ打ち込み最初期のダンス・ビートで書いた曲……なのだが、その後、ドラマも映画もヒットして延々とシリーズ化されたおかげで、時代に合わせたデジタル・ビートに模様替えされたリミックス版が(作曲者に無断で!)続々と登場(…していたらしい。最近知った)。このアルバムに収録されているだけでも「HysteriCa Mix」「ShotGun Mix」「Hold On Mix」「Single Mix」など(知らないうちに)6種類も!。でもやっぱり、後半みっちりとピンク・フロイドっぽい厚いサウンドにした最初のオリジナル版Single Mix version(これがシングル・ヒットした当時のEP盤のもの。このVersionのみが私のオリジナル・アレンジ) が好きだなあ。それから、この曲のB面として書いた「真夜中のステップ」(これも作詞作曲&編曲)が、今回初めてCD収録されているのが何と言っても嬉しい。A面のホットに対して、こちらはクール。個人的にはこっちの曲の方がお気に入り。
◆シリーズ最新作「まだまだあぶない刑事」は10月22日より全国一斉ロードショー。
朝日新聞連載「ツウのひと声」(イラスト付き)掲載。
今回は、テレビやネットにおける音楽のブツ切り問題(?)について。
それにしても最近の世の中は、「できる」ということと「やっていい」ということは違う…という常識をあざ笑うかのように、「法律的に合法」・・「技術的に可能」・・「消費者のニーズ」・・「国民の総意」・・「時代の要請」・・などなど色々な言い訳の下に、様々な「やっちゃいけないこと」が横行している。小は「著作権法上問題さえなければ音楽をズタズタに出来る」・・「お金さえあればTV局でも球団でも買収できる」・・「工事の許可(あるいは運転免許証)さえあれば騒音をまき散らし環境破壊が出来る」・・から、大は「爆弾さえあれば世界中どこでも自由に無差別テロが出来る」・・「軍事力さえあれば他国の市民生活をメチャメチャにできる」・・まで。
…昔からこんなだったろうか?(…いや、そう言えば、昔からこんなだったかも知れない)。ここからミュージカル風に……「♪おお、なんでも出来る素晴らしい世界! 何でもやっちゃえば勝ち!」(リフレイン「どうして〈やっちゃいけないこと〉をやっちゃいけないの?」 )
体育の日。1964年に東京オリンピックの開会式のあった日で、晴れの特異日だったはずだが、今年は雨。あの日、実家の窓から見上げたブルーインパルス(自衛隊のF86戦闘機の編隊飛行チーム)が描く五輪の輪が、青空にきれいに映えていたのを思い出す。
この秋の長雨連休中に、北九州国際音楽祭用に頼まれたトリオ版「プレイアデス舞曲集より」仕上げる。ギター(大萩康司)、フルート(藤井香織)、ピアノ(松本和将)の3氏のコンサートのために同舞曲集IIIより3曲ほど抜粋してアレンジしたもの。それにしても、こんな不思議な編成のトリオにオリジナル曲などあるんだろうか? コンサートは11月18日(金)、響ホール(北九州市)。
本日発売の「THE 21」(PHP)というビジネスマン向けの雑誌の、その名も「ビジネスマンのための超クラシック入門」というTOPICSで取材を受けてコメント。
確かに最近、某コミックスの影響でちょっとしたクラシック・ブームらしいが、何がきっかけはともかく、この種のブームは何年周期かで来るもののようだ。10年前(1995年)にも「アダージョ・カラヤン」と「グレゴリオ聖歌」のヒットがあって、いきなりクラシックが「ヒーリング(癒し)」グッズとして蔓延したのは記憶に新しいし。
でも、「ちょっとクラシック音楽でも聴いてみようかな」という他愛のない気まぐれが、コミックスやTVや映画をきっかけに若い人の間で同時発生しただけ…と言えば、まあ、それだけのことだけれど。…いや、ブームと言うのはすべからくそういうものか。