田部京子シューベルト・チクルス
浜離宮朝日ホールで、田部京子さんのシューベルト・チクルス最終回を聴く。今回はシューベルトの177回目の命日(1828年11月19日没)にちなんで、最期の年に書かれた3つのピアノ曲(遺作)と最後のソナタ(第21番)という最晩年の作品ばかりを集めた、ちょっと鬼気迫る組み合わせ。最晩年…と言っても、わずか31歳の青年が書いた音楽なのだから、たっぷり長生きした我が身を思うとちょっと複雑な気分ではあるけれど…。
それにしても、 第21番変ロ長調のソナタは(そもそも田部京子さんのピアノに出会ったのが、この曲だったのだが)、いつ聴いても不思議な虚無感とたゆたうリリシズムで思考を心地よく麻痺させてくれる。よく書けているとは言えないし無駄に長いのだが、そのバランスを失した長さこそが愛おしいのだ。特に今回の演奏では(命日の演奏ということもあったのか)第2楽章の白濁夢の中に聴こえてくる葬送の歌に不覚にも涙を覚え、改めて音楽の深淵に心震えてしまった。死後177年経ってなお人の心に入り込む。恐るべしシューベルト。
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