カラフの首は何故つながったか?
朝日新聞連載「ツウのひと声」掲載。今回は、オリンピック金メダルの影響で大ヒット中の「トゥーランドット」考。
あのオペラ、プッチーニの作品の中で一番好きなのだけれど、最後の場面でトゥーランドット姫がみんなの前に進み出て「名前が分かった。この者の名は・・・・」と歌う所でいつもドキドキする。たぶん聴いている誰しもが一瞬そう思うのだろうが、姫の次のセリフは「首を切っておしまい!」…なんじゃないかと想像してしまうわけだ。それが、予想を裏切って「この者の名は・・・・〈愛〉です!」と叫んでカラフ王子と抱擁し、大団円のハッピーエンドになる。まさにオペラらしい感動的かつドラマチックな幕切れなのだけれど、その一方、あまりにも男に都合のいい夢物語すぎて現実には絶対ありえない…という違和感があるのも確か。(いや、そもそも求婚者に謎を出して、答えられなかったら片っ端から首を切る…というシチュエーション自体がとんでもない…のだが)
それにしてもボエーム・トスカ・蝶々夫人…と悲劇的な結末のオペラばかり書き続けてきたプッチーニが、なんで人生の最後の最後にこんな夢みたいなハッピーエンドのオペラを思い付いたのだろう? 最後のあのシーンで姫が「首を切っておしまい!」と叫び、カラフが首をちょんぎられて、「おーほほほほほ」と姫が高笑いして終わる幕切れだって充分ありえるし、そっちの方が恐妻家のプッチーニとしてはリアリティある結末だったんじゃなかろうか。え?それは通らんドット?(笑)。
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