浦沢直樹 PLUTO(3)
注目作の第3巻。最初にこの作品の第1巻に出会った時は、人間そのままの姿で登場するアトムやお茶の水博士やゲジヒト刑事に感動し、手塚治虫の「鉄腕アトム」の世界を見事に21世紀風のリアリティで翻案したその世界に快哉を叫んだものだ。確かに日本のマンガ史上に残ることを約束された作品であると思う。
しかし、3巻目ともなると、浦沢WORLDに特有な「思わせぶり」の演出(そのあたりは手塚治虫流と言うより、「AKIRAって何?」という謎で延々と引っ張った大友克洋流か)のあざとさと、それより何より登場人物の誰も彼もが眠たそうな(悲しそうな?)無気力で暗い目をした凡人の外見をしていることに、ちょっと付いて行けなくなりかけている。
ロボットが普通に存在する近未来の世界を描いていながらあまりにアナログな絵柄(ちなみに今回の巻の表紙がウラン!)も、始めはそのギャップこそが最大の魅力だと思えたのだが、ここまでメカニックな描写が希薄で情緒が勝ったストーリーが続くと、逆に今後の展開が心配になってくる。さすがにアトムとプルートゥの戦いは「ピカッ」とか「ドーン」という擬音だけの思わせぶりの描写ではすまないだろうし。
彼独自の(まるでヨーロッパの文芸映画でも観ているような)風格ある絵のタッチが今のところ破綻を防いではいるけれど、ロボットと人間が共存生活をしている世界の設定も曖昧だし、そういうことを考えずに「マンガだから」と笑って読むにしては作品世界がリアルにすぎるし(笑)。もっともそれもこれも、期待度が高いゆえの不満なのだけれど・・・。
◇後注:これはあくまでも第3巻を読んでの印象。第1・2巻の段階ではまったくこの種の不満は感じなかったので、念のため。もちろん第4巻が出れば、また発売初日に買ってしまうのだろうな(笑)
« モーツァルトに盗作疑惑? | トップページ | いちめんのモーツァルトいちめんのモーツァルト »
「本CD映画etc」カテゴリの記事
- クリスマスを追いかけて(2024.12.24)
- 帰ってきたあぶない刑事(2024.05.25)
- CD:チェロ協奏曲:ケンタウルス・ユニット(2024.03.06)
- チェロ協奏曲の夢(2024.01.19)
- ゴジラ-1.0(2023.11.03)
こんばんは。
私も、AKIRAはずいぶん前に読んだことがありますけど。
付いていけないなら、止めたらどうですか?
思わせぶり。。。あざとさ。。。外見からみたら、そう
見えるかもしれませんが、真実って本当にそうなんでしょうか?
だって、情緒って変化があってその時はそうだったかもしれないけれど、
あとになってみたら、こっちのほうがその人・事柄にとって、ベスト
なんじゃないかって思うことも多々あるんじゃないでしょうか。
わたしにとっての情緒って、相手に対する想像力、
相手にとって何がベストなんだろう、と考えることです。
私もかなり的はずれなコメントで、申し訳ないです<(_ _)>
投稿: あっちゃん | 2006年4月 4日 (火) 03:49
>付いていけないなら、止めたらどうですか?
この漫画の作者が止めるべきですね。
大きな勘違いでした。ごめんなさい。
投稿: あっちゃん | 2006年4月 5日 (水) 23:51