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2006年6月 4日 (日)

創作と盗作の狭間で

Mozartto 洋画家W氏の盗作問題が世を賑わせている。美術家の知人は彼のファンで画集も持っているとかで、ショックを隠しきれない様子。でも「これが盗作なら、もう一人心当たりがあるけど…」とも(笑)。

 今回の場合は、あまりにも「盗作かつ剽窃」の度が過ぎて弁解の余地もなさそうだが、本来は、芸術に「模倣」はつきもの。と言うより、すべての創作は「模倣」から始まる。模倣を承諾した上下関係を「師弟」と言うくらいだ。私も音楽上はシベリウスを模倣するところから始まった。だから、彼を(会ったことはもちろんないけれど)「師匠」と呼んでいる。

 問題が問題だけに実名は出せないが、日本を代表する某大作曲家のスコアにも「ここはMそっくり。これはBそのまんま」と驚く部分があちこちにある。ただ、それを盗作とは誰も言わない。なぜなら、それらの素材を見事に消化吸収し、どこからどう聴いても彼の音楽になっているからだ。それを「オリジナリティ」と言う。

 しかし、メロディの場合は難しい。最近も、某地方都市(これも問題が問題だけに「某」ばかりになるのはお許し願いたい)で歌われている新しい街の歌というのを聴いてギョッとしたことがある。むかし歌番組などでよく歌われていた外国製の某曲そっくりなのだ。
 ただ、アマチュアらしいその曲の作曲者がそれを自覚して盗作したかどうかは分からない。子供のころに聴いて、誰のなんという曲かも知らないで頭に染み込んでいるのが出てきたのかも知れないからだ。素直な作曲家ほどいつ剽窃の地雷を踏むか分からないとも言える。

 一方、プロともなるとその点は巧妙で、最近のポップスなどでは、1フレーズ単位の盗用(パクリ)を切り張りしたような曲が実に多い。すべて「どこかで聴いたことのあるパーツ」の寄せ集めなのだが、曲そのものは特定の何かの曲の盗作ではない…という高等テクニック(?)である。だから(これだけパクリが横行していながら、皮肉なことに)業界内では「おたがいさま」として、滅多に盗作・剽窃で訴訟が起きないとも言える。

 かの現代音楽界などは、いくらオリジナリティを主張しても逆にどれもこれもみんな同じに聴こえて、誰にも区別がつかないから「おたがいさま」。コミックスなどでも、ペンタッチから構図からキャラクターからストーリーからほとんど盗用…という例も少なくないが、これも盗作だ剽窃だと非難した途端に自分の所に返ってくるから「おたがいさま」。創作と盗作の距離感は、限りなく微妙だ。

 というわけで、格言をひとつ・・・

 何を盗んだかわからないほど盗めば
 それはもはや創作である(笑)

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