耳かきお蝶
何冊か届いた今月の新刊(吾妻ひでお「うつうつひでお日記」、鶴田謙二「日本ふるさと沈没」、カサハラテツロー「ライドバック6」etc)の中の一冊、湯浅ヒトシ「耳かきお蝶2」の〈火の華銀次〉の章に泣く。花火に命を賭けた江戸の花火師の話。まんが的タッチの絵柄はシリアスとは程遠いのだが、ツボにハマったと言うか、泣けて仕方なかった。
玉屋の銀次は、いつ暴発するか分からない火薬の調合にがたがた震え、最愛の女房を事故で失いながらも、誰も見たことのない花火を造ろうとする。「そこまでして・・・いってぇ何になるんです?」と弟子は問い、彼は「何になる?・・・初めて花火を作った奴は、そんなことをかんげえたかな?」と震えながら答える。そして、両国橋で見たこともない花火を揚げ、彼は爆死する。
「その一瞬のために何もかも削り尽くして、
後には形あるもの何も残らず」。
ものを創ることの狂気は、確かに花火に似ている。
〈追記〉・・・と、漫画に思わず過剰反応してしまったのは、「そこまでして・・・一体何になるのか?」という、さんざん言われ、そして自問した言葉のせいかも知れない。この〈決して答えのない問い〉に何と答えて生きてゆくのか?ということこそが、ものを創る人間に一生つきまとう呪縛。決して軽々しく言ってはいけない禁断の言葉でもある。
« バッハと五線譜の中の暗号 | トップページ | 夏風邪をひく・・・ »
「本CD映画etc」カテゴリの記事
- 帰ってきたあぶない刑事(2024.05.25)
- CD:チェロ協奏曲:ケンタウルス・ユニット(2024.03.06)
- チェロ協奏曲の夢(2024.01.19)
- ゴジラ-1.0(2023.11.03)
- CD宮田大「VOCE」(2023.10.23)
コメント