クマのぬいぐるみ事件
3日ほど前、近所のアパートの門柱の上に大きな白い熊のぬいぐるみが置いてあった。大きさは赤ん坊ほど。赤い小さな帽子をチョコンとかぶっていて身体は純白。まだ真新しい。それが門柱の上から通行人を見下ろしている。ちょっと不思議な光景だ。
「見たまえ、ホームズ、こんなところに熊のぬいぐるみが置いてある。どういうことだろう?」
「ふむ。推理して見たまえ、ワトソンくん」
「そうだなあ。まだ真新しいところを見ると、これはプレゼントじゃないだろうか。誰かがこのアパートに住む女性に恋をして、帰ってきた時にビックリさせようと・・・例えば誕生日プレゼントとして置いたんじゃないかな?」
「キミはロマンチストだね。ワトソンくん。でも、違うね。これは単にアパートの住人が不要品として捨てたのさ。ただ、ゴミとして捨てるには忍びなくて門柱の上に置き、誰かに持って行ってもらおうとしてる…と、そんなところだろうね」
翌日行くと、ぬいぐるみは門柱から降りて、アパート入口の排水溝の上に座っていた。その眼差しは、心なしか少し寂しげに見える。
「ホームズ、見たまえ。今日はこんなところに座ってる。どうやら彼女は、彼からのプレゼントが気に入らなかったらしい。受け取ってもらえなかったようだね」
「キミはあくまでもロマンチストだね、ワトソンくん。よく見たまえ、このぬいぐるみは、赤い帽子をかぶっている。たぶんこのアパートに住む女性が恋人から去年のクリスマスにでもプレゼントされたのさ。しかし、それから8ヶ月ほど経ち、二人の間は冷えてしまった。そこで女性は、今となっては苦い思い出の記念品でしかなくなった彼を捨てることにした…と、そんなところだろうね」
そして、昨日の朝、通りがかると、ぬいぐるみはアパートの前の燃えるゴミ置き場に転がっていて・・・夕方には、ゴミと一緒に影も形も無くなっていた。ワトソン氏とホームズと、どちらの推理が正しかったのか、あるいは別の思いもよらない真実があったのか・・・それは知る由もない。
« 冥王星によせる哀歌 | トップページ | 仕事場(秘境)探訪 »
1.クマに血痕は付いていませんでしたか?
2.腹の中に宝石はありませんでしたか?
3.まさか脱色したパンダだということは?
投稿: 御手洗潔 | 2006年9月10日 (日) 16:46
こんなのはどうでしょう?
そのアパートに住む人妻が、旦那の留守の合図として門柱にぬいぐるみを置いた。ぬいぐるみがあったら「旦那は留守だから部屋に来て」の合図というわけです。(これ、よく聞く話です。小石だったり、何かのマークだったり、いろいろなケースがあります)
で、いつもなら、間男さんはそのぬいぐるみを持っていそいそと部屋に行って、密会する。
ところが、間男さんが現われないうちに旦那が帰ってきてしまい、「門柱におまえの持ってるクマがあったけど、あれは何や?」と聞く。奥さんは返事に困って「あ、あれは捨てたの」と答える。
かくして、今さら取りにも行けず、かと言って門柱に置いておくと「旦那は留守」の合図になってしまうので、翌日すぐ排水溝の所に移動した。
そして、結局クマさんは(何も悪いことをしていないのに)ゴミの日に出されることになってしまった。
投稿: 名探偵Conan | 2006年9月12日 (火) 10:59