ヴォーン=ウィリアムス・(マイ)ブーム
10日に出演したFM番組で交響曲第5番(ノリントン指揮NHK交響楽団)を聴いて以来、ヴォーン=ウィリアムスの交響曲に改めてはまっている。
Ralph Vaughan Williams(1872-1958)は、イギリスを代表する大作曲家。86年の生涯に9つの交響曲を書いていて、シベリウス、ショスタコーヴィチと並ぶ20世紀の偉大なる交響曲作家・・・なのだが、本国イギリス以外ではあんまり評価が高くない。
しかし、壮大無比な大オラトリオ風「海の交響曲(第1番)」や、良質な映画を見ているようなロンドン交響曲(第2番)、美しくも暗き自然の風景を描いた傑作「田園交響曲(第3番)」、南極で遭難したスコット隊の悲劇を描いた映画音楽を元にした南極交響曲(第7番)あたりを入口にして、もっと聴かれていい作曲家だと思う。
個人的には、イングランドの霧の向こうのはかなくも美しい風景のような第3番「田園」・第5番ニ長調が好み。第4番ヘ短調・第6番ホ短調は対照的に、第二次世界大戦の悲劇をエコーさせたようなドラマチックで陰りのある音楽。このあたりの中期の作品(年齢的には50代から70代)が、やはり彼の真骨頂だろう。
80代を超えてからの最後の2作(第8番・第9番)は、枯れた境地に達した謎めいた不思議な曲だが、いまいちキャラクターを掴み切れない。ちなみに、第9番はなんと86歳で書かれていて交響曲作曲のおそらく長寿記録(91歳という長寿記録のシベリウスも、最後の交響曲を書いたのは60歳。老巨匠ブルックナーですら第9番は70歳の時の作である)
このところ繰り返し聴いているのはボールト指揮ニュー・フィルハーモニアの懐かしのEMI盤交響曲全集だが、往年の名盤プレヴィン指揮ロンドン響もお勧め。最近のものではA.デイヴィス指揮BBC響の全集が、全9曲CD6枚で3000円前後!という廉価盤で手に入る。
・・・蛇足ながら、RVW翁(イギリスでは敬愛を込めてこう呼ぶ)が亡くなったのは1958年だから、まだ没後48年。ショスタコーヴィチの時も思ったのだが、著作権の切れてない作曲家の交響曲全集を、そんなに安く売って大丈夫なのだろうか?(…と、我が身に置き換えて心配になったりする(笑)
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