信長オペラ
TVのお正月番組で「明智光秀」(光秀:唐沢寿明、信長:上川隆也、秀吉:柳葉敏郎)を見る。
ここでの光秀は、どこまでも真面目で家庭的な常識人。比叡山焼き討ちに戦慄し、信長の暴走を止めようとする。そして、信長を本能寺で討った後、自らも秀吉に討たれることまで予見し、それでも敢えて捨て石になって死んでゆく。ここまで「光秀=いい人」という視点の脚本(十川誠志)は、ちょっと珍しい。
そんな2時間半のこのドラマを見ていたら、以前、信長と光秀が出て来る演劇の音楽を頼まれたことがあるのを思い出した。演じられる場所は能舞台、役者は信長と光秀の2人だけ、そして音楽はチェロと打楽器だけ…というなかなか恐ろしい企画で、台本まで出来ていたのだが、残念ながら諸般の事情で実現しなかった。
甲高い声で「金柑頭!」(信長は光秀のことをこう呼ぶ)と叫ぶ信長と、常に冷静かつ真面目に常識論をぶつ光秀の応酬は、どこかイエスとユダのドラマを思わせる。自らを「神」と称する男と、もっとも忠実な弟子でいながら裏切る男。考えてみれば、これはまさしく受難劇そのものだ。それに、信長は安土城でオルガンやクラヴィコードの音楽を聴いているというから、西洋楽器でのオペラ化もあり得なくはないではないか。
というわけで、その日の夜の夢の中では、狂気じみたカウンター・テナーの信長と、とことん慇懃なバリトンの光秀、その横に男装アルトの森蘭丸、そして突然乱入するコロラトゥーラ・テナー?の秀吉…といった面々が壮大な架空のオペラを繰り広げていた・・・ような気がするのだが、朝起きたら何も憶えていない。残念(笑)。
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