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2007年6月

2007年6月30日 (土)

星夢の舞@芸能花舞台

Geino03 NHK教育TV「芸能花舞台」で「星夢の舞」放送。

 現代邦楽の特集の回ということで、解説でもゲスト出演。沢井忠夫「独奏箏と箏群による〈詩(うた)〉」、杵屋正邦「風動」、吉松隆「星夢の舞」の3曲をスタジオ収録による演奏で聴きながら、作曲家から見た邦楽についてしばし真面目に話をする(聞き手:中川緑アナウンサー)。

Geino01 そして本日の演目、最後のトリに登場した「星夢の舞」は、きらきら満艦飾のイルミネーションに浮かぶクリスマス・パーティの余興みたいな邦楽ビッグバンド・ジャズ仕立て。中盤まではいいとして、ラストのブギは、やっぱりお客がいてノッてくれないと恥ずかしい。(ノッてくれたって恥ずかしいンだから!)

 それにしても私の作品というのは…何と言うか…、マジメに批評するのがバカらしくなってくる曲ばっかりだな……(^ ^;)

2007年6月29日 (金)

東と西の管絃楽

Jpinstr_1 雅楽「夢寿歌(ゆめほぎうた)」のリハーサルのため、伶楽舎の練習場へ。16人のメンバーがみっしり集まって、あと2日に迫った演奏会のお稽古も最後の追い込み。

 和楽器の世界というのは「とろける時間」が支配していて演奏時間が読めないことが多いのだが、今回は結構リズムやビートを核にしたこともあってかピタリ計算通り30分内外に収まりそう。なにしろ基本は全5章のダンス舞曲集。雅楽なのにアレグロ楽章なんていうのがあるし(笑)。
 初披露は、7月1日(日)14:00 紀尾井ホール。「伶楽舎第八回雅楽演奏会〜伶倫楽遊〜」にて。

 夜は、NHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」解説生出演のため渋谷のNHKホールへ。雅楽の後はオーケストラ(^_^;)。でも、雅楽というのは1200年前の東の「管絃楽」で、オーケストラは200年前の西の「管弦楽」。元をたどればルーツは同じ(ということにしておこう)。

 本日はアシュケナージのN響音楽監督としての最後のコンサートということで、満員御礼の聴衆を集めてベートーヴェンの交響曲第6番(田園)と第7番。いいなあ。確かに音楽は聴き手を幸福にする。(でも作曲家を不幸にすることが多いのだけど・・・(>_<、)

2007年6月27日 (水)

FM シンフォニーコンサート

Matsumoto NHKで「サンデー・クラシック・ワイド/シンフォニー・コンサート」7月分の収録。

 今回は、円光寺雅彦氏指揮の東京フィルで、今年没後100年のグリーグ「ホルベアの時代から」、同「ピアノ協奏曲イ短調」、そして没後50年のシベリウス「交響曲第2番」という北欧の2人の大作曲家による3曲。

 ゲストに、グリーグのコンチェルトのソロを務めた松本和将氏を迎えて、ピアノや音楽にまつわる話などを色々伺いながらの2時間10分。

 松本氏は、まだ二十代という若さの、人気と実力を兼ね備えた「明るい天才ピアニスト」。2005年のアルバム「静止した夢のパヴァーヌ」(Victor:VICC-60422)やリサイタルでは、私の「プレイアデス舞曲集」を弾いていただいている。
 ベートーヴェンやラフマニノフなどの大曲では奔放でダイナミックな構成力を聴かせ、返す刀でグリーグや私の小品などには抒情派の美音も聴かせる、硬軟自在の俊英である。

Nhk0706 それもそのはず、学生時代はロックバンドでギターを弾いていたと言うし、ジャズにも興味を持ちキース・ジャレットのソロ・コンサートを耳コピーしてリサイタルで披露したりと、なかなか自由な感性の持ち主。
 最近、結婚をされたそうで、プライヴェートも充実し(でも、女性のファンはちょっぴり減るかも知れないけれど(笑)、お行儀のいいクラシックの枠には収まらない、さらなる豊饒な未来が楽しみな逸材である。

 放送は、7月8日(日)14:00〜16:10。

2007年6月26日 (火)

せんくら PodCast

Podcast せんくら(仙台クラシック・フェスティヴァル)2007のポッドキャストに登場。

 クラシック音楽の現状から作曲家あるいは現代音楽についてまで好き勝手に語った前編・後編と2回にわたるロング・インタビュー(長すぎ?)。聞き手:平井洋氏(せんくらプロデューサー)。

 しかし、早口だな。もう少し落ち着け!(笑)。

2007年6月25日 (月)

スコア・ダンスの妖精

Scoredance スコアを書き始めると、どこからか音符の形をした妖精がやって来て、五線紙の上で奇妙なダンスを始める。

 いや、妖精がダンスを始めると、スコアを書き始める…のかも知れない。

 そこから先はアブナイ世界だ。良い子は決してのぞいちゃいけない。

2007年6月22日 (金)

停電&キャンドルナイト

Photo_12 仕事場のマンションで電気工事のため昼間(13時〜17時まで)全館停電。配電設備の老朽化による総取換え工事…と10日ほど前から予告されていたので、しかたなく別の場所に避難して仕事をする。

 なにしろ、電気がないとコンピュータもピアノもCDも照明もエアコンも動かない……ということは、作曲もできなければ原稿もイラストもメールも書けず、文字通り何にもできないのだから情けない。今さらながら電気に依存している生活を思い知る。

 さて、夜になり、ようやく電気が点いたと思ったら、今度は「100万人のキャンドルナイト」とかで、夏至に当たるこの3日間、20時から22時まで「電気を消しましょう」と言う。
 住宅の明かりがひとつやふたつ消えても、街にあふれる街灯や信号機や自動車のライトが消えなければ、「闇」は戻ってこないよなぁ……と思いつつ、明かりを消してコンピュータの画面に向かう。

 むかしは電気などとは無縁の職業だったはずの「作曲家」も、今では「電気がなければ開店休業」。音楽も世の中の進歩に大いに影響されているわけで、まさに「歌は世につれ、世は歌につれ」……って、ちょっと違うか(笑)

2007年6月21日 (木)

芸能花舞台@NHK112studio

Photo_11 NHKの112スタジオで、教育テレビ「芸能花舞台」…現代邦楽の魅力「重なり合う和楽器の響き」…のトーク部分(聴き手:中川緑アナウンサー)収録。

 いわゆる「純邦楽」(長唄・常磐津・日舞など)」の世界というのは、さすがにほとんど縁がないが、今回は「現代邦楽」の特集ということで、作曲家としてゲスト出演。
 スタジオ収録された3曲を聴きながら、邦楽とのそもそものなれそめなどを含め、日頃思うことなどを少々お話しする。

 曲目は・・・
 ・沢井忠夫「詩(うた)」(1983)
  …独奏箏と箏群のための
 ・杵屋正邦「風動」(1965)
  …尺八3本のための
 ・吉松隆「星夢の舞」(2002)
  …邦楽アンサンブルのための

 最初の曲は箏だけ、次の曲は尺八だけ、そして最後は色々な楽器の大合奏…という楽器の重なり具合の変化も興味深いが、それぞれ1960年代、80年代、2000年代…とほぼ20年おきに書かれていて、その時代時代の邦楽器に対する距離感およびスタンスの変遷がよく分かって面白い。

Nhk1_1 先週豪華きらきらセットで収録した「星夢の舞」も見ものだが、スモークのたかれたスタジオに20人以上の箏がずらりと並ぶ沢井忠夫作品もなかなか壮観。

 収録後、司会の中川緑さんと記念撮影→。放送は6月30日(土)13:00よりの予定。

2007年6月18日 (月)

埼玉・音探しの旅2

Chichibu03 埼玉の音探しの旅2日めは、ここ数年、中学高校での卒業式の歌として定番になっている「旅立ちの日に」という曲が生まれた影森中学校の取材。

 この曲、15年ほど前に、当時の校長先生(小嶋登氏)が詩を書き、音楽の先生(坂本浩美さん)が曲を付け、卒業生を送るために先生たちがサプライズの出し物として歌った歌なのだそうだ。

Chichibu04_1 その一度きりのはずの歌が、口コミで広まって、今や日本中の学校で歌われている。
 当の校長先生にもお話を伺ったのだが、「音楽の先生に〈なにか詞を書いて下さい〉と言われて、一晩で書いたもの」、「詞を書いたのは、後にも先にもこれ一曲っきり」とおっしゃる。確かに詞も曲も、プロの作詞家や作曲家にはない「巧まずして生まれた素朴さ」がある。なかなか素敵な話だ。

 ロケでは、その「発祥の地」である学校で、音楽の時間に2年C組の生徒さんたち30人ほどが歌っているのを撮影し、自分たちの学校で生まれた歌について話を聞く。

 そのあと突然、「ちょっと一緒に演奏してみませんか?」と言われ、急きょ私のピアノ伴奏でフルコーラスを歌ってもらうことに。ちなみにこの曲、コード進行なども含めて実はピアノ弾き語り系のロック・バラードそのもの。弾いているとどんどんロックのピアノになってしまうのが分かる(笑)。
 それにしても、中学校の音楽室のピアノを弾くなんて40年ぶりだ。

          *

Kawagoe02 午後は、さらに足を伸ばして川越へ。(とは言っても、位置的には東京方向に戻る感じになるのだが)

 これも〈埼玉の音〉ということで真っ先に頭に浮かんだ「時の鐘」の登楼を見上げに行く。レトロな蔵造りの商店が並ぶ街は平日だと言うのに観光客でいっぱい。さすが観光地である。

 次いで、町外れの「三芳野神社」というところへ寄る。ここは「通りゃんせ」発祥の地と言われる神社。ただし、観光名所になっている気配はない。「ここはどこの細道じゃ」と入ってゆくと、鳥居の下からまっすぐ伸びた「天神さまの細道じゃ」があって、なるほどと合点。

Kawagoe01 ただ、歌の最後の「行きはよいよい帰りは怖い」という部分は(考えてみると)怖い。
 謎めいた「かごめかごめ」の歌詞もそうだけれど、童歌というのは純朴な子供の世界に見えて、実はその底に暗くも恐ろしい深い「闇」が潜んでいるということか。

 ・・・と、うまくまとまったところで、埼玉を巡る旅、終了。

2007年6月17日 (日)

埼玉・音探しの旅1

Chichibu01 NHKBS「おーいニッポン」のロケ…〈埼玉の音探し〉…のため秩父へ行く。

 埼玉県ゆかりの「音楽(歌)」ということで真っ先に思い浮かんだのが、秩父の「屋台囃子」の太鼓。というわけで、何はともあれ秩父の山へ辿り着き、丘の上から武甲山を臨む。

 そして夜、秩父神社に出向き、屋台囃子(高橋利雄氏率いる「若葉会」)の練習場にお邪魔する。

 屋台囃子は、毎年12月に行われる秩父夜祭りで聴かれる勇壮な和太鼓。6基の笠鉾と屋台が登場し、町は屋台囃子のリズムで満ちあふれる。

Chichibu02 この囃子の基本のユニットは、まず小太鼓(締太鼓)が3面。これが「テレテッケテレテッケ」という8ビートのリズム連打を叩き出し、そのバックで摺り鉦(いわゆるチャンチキ)がリズムを補強する。それに乗ってソリストである大太鼓1面が「大波」「小波」などと呼ばれる自由な乱打を聴かせ、それに呼応して篠笛がオブリガート的に装飾音型を吹きまくる。

 一番目立つのはもちろん大太鼓によるソリスティックな乱打だが、屋台が道の角を曲がる時には、大太鼓が休んで締太鼓だけになる「玉入れ」という打法になる。ここでソロの締太鼓奏者が叩き出す16ビートは、そのドライヴ感と言いスピード感と言い、実に素晴らしい。

Taiko_1 面白いのは、一見均質な8ビートに聴こえる締太鼓の連打のリズムが、独特なゆらぎを持っていること。耳には「A」のように聴こえるのだが、よく聴くと3拍めが微妙に(よほど注意して聴いていないと分からないのだが)長く、「B」のようなリズムになっている。

 これは地元では「子供のころから聴いていて身体に染みついている」そうなのだが、このゆらぎをキープしたまま延々と連打するというのはちょっと真似出来ない。(なので、一般の太鼓グループが「屋台囃子」を真似て演奏したものは、まずほとんどここが均質な8ビートになっている)

Chichibu02b そう言えば、ウィーン風のワルツも微妙にゆらぐ3拍子(「3.14拍子」と言った方が正確か)。ウィーンっ子は身体に染みついているらしいが、これが実に難しい。民族的な伝統のリズムと言うのは「よそ者には簡単にマネできない」ように、ひそかな仕掛けがあるものらしい。

 それにしても、ナマの太鼓の音というのは、耳で聴くだけでなく内蔵に共振して五臓六腑に染み渡る。今回の番組では、この屋台囃子にオーケストラとロックバンドが加わるスコア!を書かなければならないのだが…、さて、どうなることやら。

2007年6月13日 (水)

星夢の舞@NHK101studio

Nhkhoshiyume_1 NHKの101スタジオで「星夢の舞」を収録する。

 星夢…というタイトルにインスパイアされたのか、NHK最大の巨大スタジオに(スターウォーズの撮影か?というほどの)豪華きらきらセット。民放の歌番組なら珍しくないけれど、NHKの純邦楽の番組としては異例(たぶん番組始まって以来!とか)。ちょっと見ものです。

 今回収録されたのは、序の舞・喜々(きき)・綺羅々(きらら)・丁々(てうてう)・舞戯(ぶぎ)の舞……という5曲(計12分ほど)。演奏は、田村拓男指揮日本音楽集団のみなさん。放送は、6月30日(土)13:00 NHK教育テレビ「芸能花舞台」の予定。

2007年6月11日 (月)

おーいニッポン次回

Nippon_1 9月放送予定のふるさと紹介番組「おーい、ニッポン」(NHK BS2)の打ち合わせ。

 昨年10月の茨城編に続いて、次回は埼玉編。番組最後で演奏する好例の「ふるさとラプソディ」は、地元のオーケストラ、200人規模の混声合唱、児童合唱という(ただでさえ大変な)大編成なのだが、今回はこれに加えてさらに、ファンファーレ隊、秩父の屋台囃子(和太鼓)、さいたま出身のタケカワユキヒデ氏によるロック・バンド・・・が合体する「超」大編成になる予定。

 オーケストラと合唱をバックに「ビューティフル・ネーム」や「銀河鉄道999」も歌ってもらうと言うことで、タケカワ氏とも打ち合わせ、しかし、これは、スコアが何十段あっても足りんわ!

2007年6月10日 (日)

マーラーに聴く人類の行く末

Mahlera_1 Blog「月刊クラシック音楽探偵事務所」更新。今回はマーラーの音楽のリバイバルを通じて20世紀後半を俯瞰する「マーラーに聴く人類の行く末」。

 誰が言ったか「芸術は、芸術として生まれるのではない。(それを愛好するものや利用するものの様々な思惑が重なり合い絡み合って)芸術になるのだ」・・・という冷めた史観。それをもっとも具現しているのが(たぶん)マーラーの交響曲だろう。

 かつては「日曜作曲家が道楽で書いた支離滅裂な交響曲」と二流扱いされていた音楽が、20世紀後半になって一躍「ベートーヴェンに次ぐ偉大なる(人気)交響曲」とまでもてはやされるようになったのは一体なぜか? 

 その背景を(毎度おなじみの独断と偏見を駆使して好き勝手に)探る。マーラーせんせ、妄言多謝。

2007年6月 9日 (土)

名作*ここが読みたい

Platero 読売新聞夕刊(6月9日付)の「週刊KODOMO新聞ライブラリー〈名作ここが読みたい〉」でスペインの詩人ヒメネス(1881〜1958)の「プラテーロとわたし」という一冊を紹介する。

 各界の色々な人が、子供たちに読んでもらいたい古今の名作を紹介するコーナーで、「不思議の国のアリス」とか「銀河鉄道の夜」とか、普通に思いつきそうな名作は当然ながらもう既に網羅されている。そこで、ちょっと頭をひねった揚げ句、取り上げることにしたのが、この30年来の秘密の愛読書。

 舞台は南欧スペイン(アンダルシア地方)のモゲールという村。その太陽と青い空と木々の緑にあふれた美しい田園における四季の出来事や風景を138編からなる詩で綴った名作……なのだが、ここには美女もご馳走も酒もロマンスも登場しない。
 心に傷を負って田園をさまよう孤独な「わたし」が見つめるのは、相棒のロバ(プラテーロ)であり花や木々や水や風であり、それ以外はと言うと村の片隅にいる「乞食」や「びっこ」や「つんぼ」や「おし」や「きちがい娘」や「白痴のこども」や「皮膚病の犬」や「老いた馬」や「大道芸人」など、社会のどん底にいる弱者たちばかり。

 しかし、彼らのその短く哀れな生と死が、詩人の優しい眼差しにかかると、まるでキリストに祝福された聖なる宝石のように悲しいまでの光を放つ。

 私が最初にこの作と出逢ったのは30年ほど前。1975年の岩波少年文庫版「プラテーロとぼく」(長南実:訳)によってである。
 ただ、今回新聞で紹介するに当たっては「現在でも手に入る版」という条件があり、最新の2001年岩波文庫版「プラテーロとわたし」を引用せざるを得なかったのだが、実は全編を読み返してみてちょっと愕然とした。「ご想像通り」、同じ訳者ながら(現在の情勢に則して)上記のような言葉が微妙に言い換えられているのである。

 それは確かに「微妙な」違いではあるのだけれど、それによって失われた哀感や詩情は・・・ちょっと取り返しがつかないもののような気がしてならない。詩人がこれを知ったら、その「殺された」言葉たちのために、プラテーロと一緒に泣いたことだろう。
 例えば冒頭の献辞の訳(共に長南実氏)を忠実に2つ並べてみる。この微妙な違いから生まれる「喪失感」を感じていただけるだろうか?

  桑の実とカーネーションを
  いつもぼくにとどけてくれた 
  〈太陽(ソル)〉通りの
  あのかわいそうな気ちがいむすめ
  アゲディーリャの
  思い出に・・・(旧訳:岩波少年文庫)

  桑の実とカーネーションを
  いつもわたしにとどけてくれた
  太陽(ソル)通りのあの可哀そうな狂女 
  アゲディーリャの思い出に・・・(新訳:岩波文庫)

2007年6月 7日 (木)

左手のピアニストふたたび

Chinai 左手のピアニスト智内威雄(ちない・たけお)氏のドキュメンタリー番組のための取材を受ける。

 彼は31歳になる俊英のピアニスト。ドイツに留学し国際コンクールに入賞し、音楽家としてのキャリアを積み始めた頃、ジストニア(筋肉が自由に動かなくなる神経症)を発症。現在は左手のピアニストとして活動しているそうだ。

 私が舘野泉さんのために書いた「タピオラ幻景」も既にレパートリーとして演奏してくれていて、短いビデオで拝見した限りでは、なかなか切れ味がよくダイナミックな演奏。左手のピアノ…というジャンルでこういう優れた新しい個性が出て来るなんて、世界も捨てたもんじゃない。

 「左手だけのピアノ曲を書く難しさは?」とはよく聞かれることだが、作曲家にとっては「左手のピアノ」というのも立派な楽器のひとつ。単旋律しか吹けないフルートや、伴奏ピアノが必要なヴァイオリンを、誰も「不自由な楽器」とは思わないように、1本の手で弾くピアノも条件は同じ。良い演奏家が生まれば、そのまわりに音楽が生まれる。それだけのことであって、さほど作曲するのに難しいというわけではない。

 ただ、「(彼のような)音楽を志す若い人たちにひとことを」……と言われると、これは難しい。
 音楽は一生を賭けても悔いのないほど素晴らしいものだけれど、職業としての音楽家(表現者)になるには闇をさまよい地獄を見る心積もりも必要。無責任に「頑張ってください」とは言えないからだ。

 でも、闇があるからこそ、人は光に向かって歩き続ける。
 若者よ。大いに学び鍛え、悩み苦しみ、
 力強く地獄と闇とをさまよいたまえ!

 …なんて言っても、テレビじゃ放送出来ないですよね(笑)。
 …はい、カット! お疲れさま。

 ちょっと先になるが、今年の10月18日には兵庫県立芸術文化センターでリサイタルの予定とか。詳しくはこちらへ。

2007年6月 4日 (月)

ピアノ・ルーレット

Room_3 ひと仕事終わって、次の仕事に入る前は、部屋の模様替えをする。

 とは言っても、かれこれ30年近く、2.2m四方(三畳間)のスペースに〈机〉と〈ピアノ〉と〈コンピュータ〉と〈製図デスク〉が四面並び、その真ん中に飛行機のコックピットよろしく椅子が鎮座している配置は不動。(ちなみに、〈机〉は文字を書く処、〈デスク〉は絵を描く処である。念のため)

 では、どこが模様替えなのか?と言うと、要するに、この四面の配置を〈ピアノ〉〈机〉〈デスク〉〈パソコン〉にしたり、〈デスク〉〈机〉〈パソコン〉〈ピアノ〉にしたりするわけで、私はこれをひそかに「ピアノ・ルーレット」と呼んでいたりする。

 おかげで、たま〜に仕事場を訪れる方は、来るたびに「あれ?ピアノの位置が変わりましたね?」と驚かれる。もちろん、「ピアノ」と言っても、通常のピアノの3分の1ほどの重量の電子ピアノ。でなければ、そうそうひょいひょい動かせるわけもない。

 で、今回も〈机〉〈ピアノ〉〈デスク〉〈パソコン〉とか〈デスク〉〈机〉〈パソコン〉〈ピアノ〉といろいろシャッフルして並べ替えていたわけなのだが、3日ほど経って気付いたら、前と同じ配置になっていた。・・・要するに、これがベスト・ポジションということなのだろうか。

 というわけで、また前と同じ配置で次の仕事へ。

2007年6月 1日 (金)

芸術劇場〜左手のピアニスト その後〜

Nhk3 NHK教育テレビ「芸術劇場」左手のピアニスト その後〜舘野泉に贈られた音楽〜に出演。(司会:中條誠子さん)

 左手のピアニストとして復帰されて3年目を迎える舘野泉さんと、その間に生まれた〈左手のピアノのための新曲〉にまつわる話。4月のフィリアホールでのリサイタルの映像と、スタジオでの演奏(タピオラ幻景より〈水のパヴァーヌ〉、ゴーシュ舞曲集より〈ロック〉)もまじえて現況を語る舘野さんは、どこまでも笑顔でにこやかながら、ふと感極まって言葉につまったりするところもあり、心を打たれる。

 作曲家というのは所詮、音楽を書く以外は何の役にも立たない人間なので、せめてその作る音楽が誰かの役に立ってくれるなら(そして聴き手の心を癒してくれるなら)こんなに嬉しいことはない。

 とは言っても、作曲家というのはとことんひねくれているので、誰の役にも立たず誰の心も癒さなくても、それでも音楽を書くのですけどね・・・

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