2001年(ハイビジョン版)宇宙の旅
昨夜、夜中にNHKのハイビジョンで「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey。監督:スタンリー・キューブリック)」をやっていて、思わず時を忘れて見入ってしまう。
冒頭で鳴り響く「ツァラトゥストラ」が印象的なこの作品、もちろん映画館でも見たし、ビデオテープ版、レーザーディスク版、DVD版と、メディアが代わる度に何度繰り返し見たか分からない古典中の古典なのだが、ハイビジョン放送された今回の映像のあまりの鮮明さに、2時間半の間、目が釘付け。
1968年の作(アポロが月面着陸する前の年。21世紀がまだ「遠い未来」だった時代だ!)だから、40年も前の作品ということになるのだが、「最新のCGで制作された」と言われても信じてしまいそうなクオリティの高さとディテールの細かさに改めて感服する。
宇宙ステーションだの宇宙服だのコンピュータだの、全てが40年前に「想像で」デザインされたものなのに、まったく古臭くないし、冒頭の人類黎明期の猿人のシーンからラストの異次元へ突入するトリップ・シーンまで、圧倒的な映像美で微塵の隙もない。うーん、凄い。
この映画、ストーリーの難解さ(なんじゃこれは?度)でも映画史上屈指の名作だが、私は昔から、これは「殺人事件(ミステリー)」の映画なのだと思っている。
コンピュータHALが乗組員(自分を生んだ人間)を殺すのは「父殺し」であり、しかも、宇宙空間なのだから「密室殺人」そのもの。そして、その(人格を持った)コンピュータを機能停止させる船長の行為もまた「殺人」以外の何ものでもない。その伏線として、黎明期の人類が骨という道具を持って最初にやったことが「殺人」である、という冒頭シーンに繋がる。
問題は、その後、人類はどうなったか?(つまり、高次元の存在によって罰せられたのか、あるいは単に種族淘汰と見られたのか・・・)ということなのだが、そのあたりについて映画では「見る人の想像におまかせ」と突き放している。
おかげで、そこには色々な「解釈」が生まれるわけで、1982年には原作者アーサー・C・クラークが続編「2010年宇宙の旅(Odyssey Two)」(1984年に映画化)を発表している。しかし、これは文字通りの「蛇足」で、残念ながら何の解決にもなっていない。
読編(解決編)としては、キューブリックが全く同じく密室殺人を扱った映画史上初のホラー映画「シャイニング」(1980年)を上げるべきだろう。・・・ほら、HALをジャック・ニコルソンが演じてるし(^ ^;)
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コメント
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たぶんコンピューターが人間を(あるいは人間がコンピューターを)殺したからといって、宇宙的な知性から見れば「殺人」でも「罪」でも何でもないですよね。
だって、人間から見れば、ネコがネズミを捕まえて殺しても、クジラがプランクトンを食べて殺しても、別に殺人でも罪でも何でもないんですから。
そこに「殺した」ということの罪と罰を感じるのは、キリスト教的な狭〜いモラル。でも、宇宙人はキリスト教徒じゃないですよ。絶対!
コンピュータに逆転勝利して木星に到着した船長は、やっぱり「よくやった」ということでスターチャイルドに昇格してもらった・・・んでしょうねー・・・(それも全部、船長の見た夢だった、というオチも考えられるけど)
うーん。でも、やっぱり、宇宙人の考えることは、わかんないや。
投稿: AKI | 2007年11月11日 (日) 12:39