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2008年5月 5日 (月)

ツィンマーマン:歌劇「軍人たち」

Soldaten1 初台の新国立劇場へオペラ「軍人たち」を観にゆく。

 全4幕からなる2時間ほどのこの現代オペラ、シュトックハウゼンと並ぶドイツ現代音楽界の雄アロイス・ツィンマーマン(1918〜1970)が1965年に発表した作品で、ベルクの「ヴォツェック」に次ぐ20世紀オペラの傑作・・・ではあるのだが、ほぼ全編無調の難解な音楽の上、巨大オーケストラや膨大な打楽器群やジャズ・コンボや電子音響が必要な超難曲のため、滅多に上演されない問題作。これが日本で上演されるというのは、掛け値なしの「事件」である。

 とは言っても、昔から「兵士たち」というタイトルで輸入盤LPやCDで紹介はされていて、個人的にも結構お気に入りの(一体どんな風に上演するんだ?と言う興味も含めて)20世紀音楽のひとつ。ちなみに、私の編著「クラシックの自由時間」でも、「マニアになるためのクラシック名曲」として1ページを裂いて取り上げている。
 我が国では10年ほど前にコンサート形式では演奏されているが、オペラ形式では今回が初演。最初で最後にならないよう心から祈る。

Soldaten2 物語は、商人の娘マリーが、軍人や伯爵など色々な男に翻弄され、最後は娼婦に転落してゆく暗い話。・・というあらすじを聞いただけで、オペラに詳しい方なら「ヴォツェック」と「ルル」を足したみたいな話だな?と思い至るはず。

 それもそのはず、原作も同じヤーコプ・レンツだし、バンドが出てきたりバッハ風の賛美歌が聞こえてきたり運命の中心音がReだったりするアイデアも含めて、完全にベルクを意識した作品であることは明々白々。(そもそも、主人公がマリーで、「Soldaten(兵隊さん)」というタイトルであること自体「ヴォツェック」を思い浮かべるなと言う方が無理)
 こういう引用(パクリ)と前衛性の混合が彼ツィンマーマンの音楽の最大の魅力だが、それを嘲笑し指弾されて孤立したのが原因なのか、大阪万博の年(1970年)に52歳の若さで自殺しているのは、残念と言うか、身につまされると言うか・・・。

Soldaten3 今回の舞台は、ザクセン州立歌劇場で制作されたものをレンタル輸入する形で実現したとのことだが、白塗りの顔に真っ赤な軍服という「軍人たち」に対して、白の「一般市民」、黄色の「貴族」という色彩による色分けによる演出は、視覚的にきわめてわかりやすい。
 しかし、一方で、登場する軍人たちが全部「赤」で、役柄の区別がほとんど出来ないのは問題。マリーをたぶらかしている大尉も許嫁の男爵も取り巻きの士官も、ぜんぜん区別がつかず、カーテンコールでようやく別人だと分かったほど(・・・私の目が悪いからか?)。

 音楽は60年代現代音楽サウンドの見本市といった感じで、個人的には懐かしい響きのオンパレード。歌手たちの歌は、高音の限界に挑戦するかのような「叫び」の連続で、オーケストラは退屈する間も与えないほど次から次へと前衛サウンド(その中にはジャズや賛美歌も混じり込む)を繰り出し、聴き手の耳に突き刺さる。

 しかし、見事にこなれた主役歌手陣を始め、若杉弘指揮東京フィルの演奏は実に素晴らしかった。また、ダンスやパントマイムで登場した劇団?の面々の熱演にも拍手。最初こそ現代音楽的な響きのカオスにとまどっていた聴き手も、最後の第4幕で会場のスピーカーから軍靴の音が耳をつんざくような大音量で聞こえ、「次の犠牲者」がひとり取り残されて運命のReの音ですべてが消えてゆくのを聴いた時、総毛立つような「感動」を感じたものと確信する。

 上演は、7日(水)19:00と10日(土)14:00のあと2回。1階席23,100円とお高いが、だまされたと思ってぜひ。(ただし、観て「だまされた!」と思っても当方は一切関知いたしません(~ ~;)

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