左手のコンチェルト&ピアニスト
左手のピアノがらみの本が2冊出たので、新聞(赤旗)の書評を頼まれる。
舘野泉さんの「左手のコンチェルト」(佼成出版社)は、左手のピアニストとして活躍している現在から、音楽との出会いにまつわる回想までを語りおろした一冊。優しくにこやかな顔で淡々と語る氏の語り口そのままに(実際、聞き書きをまとめたものとのこと)、左手になられたいきさつや新しい作品のこと、フィンランドに初めて行った時のことやデビュー当時のことなどが綴られ、まるで暖炉の前で話を聞いているような、ほんわかした気持ちになる。
ハンガリーのピアニスト:ゲザ・ズィチに関する「左手のピアニスト」(河出書房新社)の方は、この音楽家に対する作者(シュミット村木眞寿美)の情熱が伝わってくる一冊。ちょっと前なら、このような無名な音楽家(私もこの本で初めてその名を聞いた)の本など出せなかったに違いないが、舘野泉さんと抱き合わせ(?)にすることで可能になった貴重な力作。ヴィトゲンシュタインら左手のピアニストと作品についての記述も詳しいが、全体の80%はズィチの伝記。リストからマーラーの時代にこんな音楽家もいたのか、と思わず感慨にふけってしまう(…と同時に、冒頭でいきなり私の名前が出てきてちょっとギョッとしてしまった(@ @)
ちなみに、現在、左手のためのピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」の改訂稿を制作中。改訂と言っても、ピアノパートをいじくるわけではなく、オーケストラを通常の2管編成にするという修正稿(初演はバッハ時代の室内管弦楽編成)。9月4日に関西フィルの定期演奏会(ザ・シンフォニー・ホール)にて初披露の予定。
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