NHK512スタジオにて「芸術劇場」の収録。スティーヴ・ライヒ特集の回の〈情報コーナー〉にガイド役としてゲスト出演する。
ライヒの音楽(とミニマル・ミュージック)は、前衛音楽が隆盛を極めた60年代現代音楽界ではきわめて冷たくあしらわれていたが、1980年前後にECMレーベルで「18人の音楽家の音楽」や「テヒリム」などの録音が出始めた頃から、ジャンルを超えた音楽ファンの注目を浴びるようになった。私も「テヒリム」はあちこちで絶賛して「現代音楽撲滅運動」の実例?にしたほど。(ちなみに、アルヴォ・ペルトのブームも同じ頃、やはりECMが火付け役だった。プロデューサーであるマンフレート・アイヒャー氏の慧眼には驚くばかりだ)
そして、最近の若い世代がライヒを知ったのは、1999年にクラブ・ミュージックの人気ミュージシャンたちが集まって「ライヒ・リミックス」というコンピレーション・アルバムを発表したのがきっかけ。ピアソラの場合もそうだったが、音楽シーンを動かすのは専門家たちではなく、常に「愛好家(マニア)」たちだ。以来、彼はマイナー(現代)音楽中最大のメジャー作曲家(??)となった感がある。
今回は、そんなライヒの「コンポージアム2008」での来日ライヴ・コンサートと、NHKが制作した「ディファレント・トレインズ」の映像とで、この作曲家の世界に迫る。もちろん「生きてる作曲家」の姿が見られるライヴでの演奏も見ものだが、音楽と映像と言葉のリンクを手間暇かけて作り上げた「ディファレント・トレインズ」はNHKならではの労作。受信料のこういう使い方こそ文化国家の国営放送(?)のあるべき姿かと。だまされたと思って是非ご一見を。
放送:7月4日(金)NHK教育テレビ
□22:30〜22:48(18分)
情報コーナー:スティーヴ・ライヒの世界
司会:中條誠子、ゲスト:吉松隆
VTR出演:スティーヴ・ライヒ、磯崎新、ピーター・バラカン
□22:48〜24:17(1時間29分)
「ダニエル・ヴァリエーションズ」
「18人の音楽家のための音楽」
演奏:アンサンブル・モデルン
・コンポージアム2008でのライヴ
□24:17〜24:45(28分)
「ディファレント・トレインズ」
演奏:ストリング・カルテット・アルコ