北京オリンピック記念:オペラ〈トゥーランドット〉考(前編)
Blog「月刊クラシック音楽探偵事務所」更新。今回は「北京オリンピック記念:オペラ〈トゥーランドット〉考(前編)」。
プッチーニ最後のオペラ「トゥーランドット」は、西洋人から見た空想の中国が舞台のグランド・オペラ。圧倒的な音の洪水の壮麗さもあって、結構好きなオペラのひとつである。
ただ、当の中国の人から見たら、使われている中国風のメロディから設定から話の流れから、すべて「怪しすぎる」作品であることは容易に想像が付く。
ところが、先日のまさに「満漢全席」を絵に描いたようなオリンピックの開会式を見ていたら、この空想の世界が現実として壮麗に目の前に立ち現れて来て、ちょっと不思議な感慨(とショック)を受けることになった。
これでもかという膨大な数の人間が一糸乱れぬ動きをし、ワイヤーアクションで吊られた天人天女たちが非現実的で幻想的な飛跡で舞う。そして、人間がまるでコンピュータ画面の「画素」のひとつのように精密かつ完璧に動く。
その世界を、「きわめて人間的」と言ったらいいのか、逆に「ひどく非人間的」と言ったらいいのか。スケールが違いすぎて、もはや日本人の感覚では付いて行けない。
そう言えば、この開会式の演出は映画監督:チャン・イーモウ氏。北京紫禁城で行われた歴史的な「トゥーランドット」中国公演(1998)も彼の演出だった。中国的でありながら極めてハリウッド的なスペクタクルに見えたのはそのせいか。
巨大オーケストラをバックに大音量で愛を歌い、首を切り、皇帝万歳を叫ぶ。
その下で民衆は「画素」のひとつとして微笑む。
プッチーニの慧眼に拍手。
トゥーランドットの世界がここにあった。
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久しぶりに開会式ライヴかぶりつき鑑賞となりました。
「中国って人間多い・・・」
あの群舞で間違えたりしたら粛清されちゃうのか?
と、冷や冷やしながらも素直に感動した1時間でした。
投稿: ぱゆ | 2008年8月11日 (月) 11:30