第九とオリオン
月刊誌「男の隠れ家」2010年1月号:特集「大人のクラシック」に〈第九を識る〉寄稿。
第九の聴きどころからベートーヴェン先生の思惑、そして初演から現代までの受容史(日本での演奏史や年末の風物詩になるに至る歴史)などを全8ページにわたって紹介。
とは言え、この曲、ひと言で言ってしまえば(歓喜にも楽園の娘にも縁遠い)五十男のアブナイ妄想の産物。合唱付きの終楽章は文字通り「取って付けた」代物だし、今までの自分の音楽を全否定して「こういうのじゃなくて、もっと楽しい歌を」と歌い始めるのが(よりにもよって)「あの」メロディ。初めて聴いた人は絶対「(ベト先生)壊れた!」と思ったはず。
それが、180年の時を経て東洋の島国の年末まで汚染する「クラシック音楽屈指の傑作」かつ「人類の至宝」になるとは、世の中捨てたもんじゃない。だから友よ、世界中の五十男たちよ。現実を捨てて妄想せよ!星空の彼方には貴方を抱擁してくれる壊れた神サマがきっといる!
蛇足ながら、第九の今風な使い方…として映画「時計仕掛けのオレンジ」(1971)とアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(1996)を挙げたのだが、つい最近、ビートルズの映画「ヘルプ!」を(何十年ぶりかで)見ていたら、「第九を聴くとおとなしくなるトラ」に襲われそうになり、みんなで第九を大合唱するという(アホな)シーンを発見。こっちの方が面白かったかも。
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宣伝ついでにもう一点。カメラータ・トウキョウの〈コンテンポラリー・クラシックス〉シリーズで、作品集 II「オリオンマシーン」(CMCD-50020)再発売。
初作品集「鳥たちの時代」に次いで1996年に発表した2枚目の作品集で、収録曲は、トロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」(箱山芳樹、外山雄三指揮日本フィル)、および「カムイチカプ交響曲」(尾高忠明指揮東京フィル)。
ちなみに両曲とも初演の音源で、デフレ時代にふさわしく(作曲家泣かせの)廉価版(¥1,575)での再登場。こちらは(当時)三十男の妄想の産物。
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