ブラームス先生の凄さ
某テレビ番組の作曲家取材(ネタ探し)第2弾。今度のお題はブラームス先生の交響曲第1番。
♪ブラームスはどこが凄くてどこが斬新なんでしょうか?
いや、どこも凄くなくてどこも斬新じゃないでしょう。「三大B」っていうのは「土用の丑の日」みたいな語呂合わせのキャッチコピーだし、1番が「まるでベートーヴェンの10番だ」って言うのは第9のリスペクトメロディがあることの皮肉だし、あの曲で記憶に残るのは冒頭のティンパニと最後の終わり方だけで後は何をやっているのか記憶無いし、2楽章3楽章ってどんなでしたっけ?って言われてもとっさに思い出せないくらい印象薄いし。20年かかって書いたって言うのも、横でブルックナーが変な交響曲を書き出したのを見て、「あいつなんかに交響曲やられてたまるもんか」とあわてて20年間ほったらかしだった楽想を引っ張り出して、派手な冒頭と最後のコーダくっつけて仕上げたっていうことでしょ。その証拠に、続く2・3・4番は数ヶ月でひょいひょい書いてる。そもそもブラームスの音楽ってハッキリしたメロディはないし耳に残るところないし新しいことは何もやってないし、内声が延々と内省的なこと言っているだけでメインテーマも発展性も結論もないですし、才気も華も全然ないんですよね。
♪じゃあ全然ダメじゃないですか?
とんでもない!。どこも凄くなくてどこも斬新でなく才気も華もないにもかかわらず、彼の交響曲はその後のチャイコフスキーやドヴォルザークやシベリウスなど民族楽派交響曲の教科書的なお手本になったし、ブラームス型2管編成は現在でもオーケストラのグローバル・スタンダードだし、自分勝手に暴走して自爆したベートーヴェンの散らかしっぱなしの交響曲の世界を地道に整理整頓して「聞いて面白いわけでもお金になるわけでもないクラシック音楽」を21世紀の現代にまで生き延びさせることになった基礎を作った。その「どこも凄くなくてどこも斬新でない」ところが凄くて斬新なんですよ!
♪????????
あのー、今回もボツでしょうか?
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コメント
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先生、凄いです。 チャイコフスキー命の私は、ブラームスはどうしても理解できなくて、コンサートやテレビの名曲探偵さんで何度も聴かされて、ようやく馴染んできたところだったのですが、そのなかなか受け入れられなかった原因がこの文章で明確になりました。 ありがとうございます。 でも、耳に残るところ、ちょっとはありました。 大貫妙子が「昨日今日明日」という歌で使っているメロディー(3番の3楽章)とか。
某テレビ番組とは・・・?
投稿: uncle bear | 2009年11月21日 (土) 17:35
吉田秀和氏も、ブラームスは作品が才能を上回ったとおっしゃってますよね(笑
ブラームスは、ベートーヴェンが完成させたものを、真に受けてただ延命したと言うことでしょうか?
だとすれば、おなじベートーヴェンを崇拝していたブルックナーやワーグナー、マーラーは、ブラームスとは音楽的才能が違っていたのでしょうか…
投稿: 石崎和男 | 2009年11月21日 (土) 22:29
わたくしの音楽センサーには「昔フラれていまだ立ち直れない」ないしは「煮え切らない」音楽検出機能が備わっており、邦楽ではスピッツ、クラシックではブラームス、あと分野違いですが、夏目漱石や島田雅彦の小説群に接したときに盛大に反応いたします。かれらの作品の特徴は、一度女性にフラれたばっかりに生じた、自己へのエンドレスな懐疑(オレのどこがだめなんだぁ)を創作のモチベーションとしているため、常に同じ問い(なぜ自分はフラれたの?、あるいは、実は相手はまだ自分のことを好きではないのかという妄想)に答えを見つけるべくチャレンジするも、結局は答えを見出せずに失敗して煮え煮えに煮え切らないまま終わっているという点にあるように見受けられます。したがってブラームスの煮え切らなさ、あるいはダサさは、ある種、ワーグナー的に煮えきったわかりやすさ、あるいはめくるめく革新的エクスタシーという観点から評価するのは難しいだろうと思います。一方、私のような煮え切らない人種にとっては、ブラームスの突出して純度の高い煮え切らない音楽の価値は自明であり、ぜひとも擁護したいものであります。ただ、同属嫌悪といいますか、ブラームスを聞くと、居たたまれなくなってしまうため、あまり聞かないのも事実だ。という点と、吉松せんせの初期の作品を聞くと、若干、同センサーが反応するということもあわせて告白させていただきます。長文失礼いたしました。
投稿: まつの | 2009年11月22日 (日) 00:22