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左手のためのピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」の演奏を聴きに紀尾井ホールへ。ピアノはもちろん舘野泉さん、玉置勝彦指揮東京エラート室内管弦楽団。
2管8型(8-6-4-4-2)のサイズによる「改訂2管編成版」の演奏。併演はモーツァルトの交響曲第25番ト短調とメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。
そもそも華やかな技巧を聴かせるコンチェルトではないし、完璧・無傷の演奏では決してないのだけれど、音楽に包まれる心地よさがじわじわ伝わって来て後半は思わず涙が・・・
曲が終わって舘野さんに舞台の上から手招きされて、「そうそう、これ私が書いたんだっけ…」と思い出して答礼(笑)。
今年は演奏家活動50周年ということで(仲間の演奏家たちと)記念のコンサート・ツアーがあり、左手のために書かれた作品の連続奏破?も企画中で、さらにブリテンのコンチェルト(もちろん左手の)にも初挑戦するんだよ、とにこにこ。
なんだか、ますます若々しくお元気。隣は50代で早くも老境&隠遁モードの私(++;)
ちなみに、舘野さんが持っているのは、プレゼントした新しい3手連弾の「3つの子守歌」(編曲)の楽譜。
NHK406スタジオで「FMシンフォニーコンサート」3月分2本の収録。
3月7日(日)放送分は、モーツァルト:交響曲第25番ト短調、フルート協奏曲第1番ト長調(fl:工藤重明)、交響曲第40番ト短調。梅田俊明指揮東京フィル。
3月14日(日)放送分は、ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第1番、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番(vn:三浦章弘)、レスピーギ:ローマの祭りほか。D.エッティンガー指揮東京フィル。
モーツァルトの回は「ト調」つながり(ト短調〜ト長調〜ト短調)と一目で分かるけれど、面白いのはショスタコーヴィチ〜ブルッフ〜レスピーギと並べた(ちょっと見には脈絡の無さそうな)プログラムの方。
指揮のエッティンガー氏はイスラエル生まれ。この4月から新しく東京フィルの常任指揮者に就任する俊英で、単純にロシア(ソヴィエト〜JAZZつながりでアメリカ)〜ドイツ〜イタリア…と国際的に並べたとも見えるが、ショスタコ・ブルッフとも(自身はユダヤ系ではないのに)ユダヤ音楽に固執し、自作に組み込んだり引用などして当局から睨まれた同志ということに思い至るとちょっと意味深。
レスピーギはムッソリーニ政権下でぎりぎり嫌ファシズムを通した人だが、その「ローマの祭」はローマ皇帝ネロのキリスト教迫害シーン(チルチェンセス)から始まる曲。ネロは同じくユダヤ人迫害でも知られ、その時それに反抗して一人ヴァイオリンを奏でた英雄がユダヤに伝わる「屋根の上のヴァイオリン弾き」の伝説。「ローマの祭」の前に(ユダヤ風のトーンを持った)ヴァイオリン協奏曲を持ってきたのは、そのあたりの連想からか。
さすがにNHKの放送では「これはユダヤつながりですね」とは言えなかったが、こういう深読みの楽しさが〈クラシックはミステリー〉(笑)。
昨年11月に行われた仙台ジュニアオーケストラ第20回定期演奏会の模様を記録したDVDが届く。
20周年記念の委嘱作「鳥のシンフォニア」を含めて全4曲。子供たちによる6管編成18型!のオーケストラ(指揮:山下一史)が放射する音響の饗宴が懐かしく思い出される。
それにしても、こういう高水準のジュニア・オーケストラがあって、その上に兄貴分としてプロフェッショナルのオーケストラ(仙台フィル)がある…というのは、地方都市の音楽の在り方としてはかなり理想的なのではなかろうか。
もちろんジュニア・オーケストラで育った彼らすべてが音楽家を目指すわけではないだろうが、彼ら自身とご両親たちが心強き音楽の理解者になるのは確かなのだから。
それに、子供たちが大きくてきれいなホールで力一杯演奏した演奏会が、こうして映像に記録されDVDで視聴できるなんて……羨ましい時代になったものだ。
調性で現代音楽を書くための作曲理論書・・・?・・・ではなく、「調」に関するよもやま話・CD付き・・・のような本になる予定。
しかしながら、紙媒体の「本」というのは、今かなり曲がり角だとひしひし感じる今日この頃。
今回のような題材でも、HPやブログでやれば、譜面もサンプル音源もリンクもレイアウトも自由自在(おまけに字数も無制限)。紙で「出版」するのはもはや「不自由さ」しか思い付かない・・・ということに思い至る。(確かに、売れれば多少出版印税はもらえるけれど…)
今はまだ「本」の方がアクセスの自由度は高いが、それがどこまで不変なものか、最近ちょっと分からなくなってきた。
かれこれ20数年前にパソコンがネットにつながってから、パソコン通信・ホームページ・ブログ…と結構ヘビーに利用して(遊んで?)きたが、Twitterには手を出していない。
個人的に「電話」というのもそうなのだが、反応を期待し、されるようなリアルタイムなコミュニケーションがどうも苦手…というせいもあるだろうか。(じゃあ、ブログやメールはどうなんだ、と言われそうだが)
そもそも「作曲」という行為自体が、書いてから音になるまで数ヶ月とか数年・ひどい場合は死後…というタイムラグのある「最も非効率的」かつ「反応が返ってくる確率がめちゃくちゃ低い」最悪のコミュニケーション手段である。
それを嬉々としてかれこれ40年も続けているということ自体が人間関係に破綻している証拠であり、むしろちゃんと正常に反応(返事)などされると、逆にうろたえてしまうわけだ。
そのくせ「鳥のさえずり(Twitter)」は好きで、良く聞くし音楽にしている。
ただ、あれは「意味不明な鳥の言語」が人間の耳には「心地よい音の羅列(音楽)」に聞こえる…というすれ違いの具合が面白いわけで。
だから、彼らが「何を話しているか」知りたいとも思わないし、そもそもお互い初めからコミュニケーションを取ろうとなど思っていない…その透明な関係こそがいいのではないか、と…(笑)。
…などと書いたものの、このウィンドウの右下→に新しく付いた青い「ヒ」のマークはどうやらTwitter参加のボタンらしい…
英EMIが負債削減のためロンドンのアビーロード・スタジオ売却を検討中というニュースを聞き、むかし(1996年)須川展也氏たちと「サイバーバード協奏曲」のレコーディングに訪れたことを思い出した。(←当時の写真はないのでGoogleMapより)
ビートルズのアルバム・ジャケットで有名な横断歩道の横にポツンとある(ちょっと見るとかなり小さな)録音スタジオだが、バルビローリやビーチャムなど往年の大指揮者たちの録音も行われた歴史ある場所。
何の変哲もない場所にある何の変哲もない建物だが、録音の合間に近くを散歩していたらいきなり「ビーチャム」という表札がかかった家を見つけて興奮した記憶が…。
もちろん演奏者たち4人(sax:須川展也、p:小柳美奈子、perc:山口多嘉子、作曲者:私)とあの横断歩道は渡ったが・・・証拠写真は・・・ない・・・
あるのは(何で描いたか記憶にない)イラストだけ→
で、その時に録音したCDがこれ(D.パリー指揮フィルハーモニア管弦楽団)
ちなみに、ビートルズやピンクフロイドなどが録音していた〈スタジオ2〉はピアノがでんとあるだけの小振りなサイズだが、オーケストラ用の〈スタジオ1〉は普通に大きい。(写真は、同じくAbbey Road StudioのHPから)
昨年の4月にメールをもらったサクソフォンのSergey Kolesov氏のソロアルバム「CONTRASTS」を輸入盤情報で発見。
彼は2006年のアドルフ・サックス国際コンクールの優勝者で、1982年生まれというからまだ二十代。私の「ファジーバード・ソナタ」のほか、デニソフ、プーランク(オーボエ・ソナタの編曲)、F.デクリュック…の4つのサクソフォン・ソナタを並べた一枚で、おそらくデビューアルバム。
CDの現物はまだ聞いていないが、YouTubeでの演奏で片鱗は少し。
ロシア「МЕЛОДИЯ(メロディア)」盤というのも(かつてソヴィエトの作曲家たちの稀少盤を買いあさった世代としては)何だか嬉しい。
それにしても、この曲、初演(1991)の時は、あのヴィルトゥオーゾ須川展也氏でさえ悶絶しかけたほどの難曲。なのに、あれから約20年。今やコンクールで普通に課題曲になっているというから、演奏の進化というのは恐ろしい。
インターネット放送局 Blue Radio の「カフェ・フィガロ」(パーソナリティ:林田直樹氏、アシスタント:柳志乃さん)にお邪魔する。
番組パーソナリティの林田直樹氏は、音楽の友やレコード芸術の編集を勤めていた頃、何度か記事や対談でお世話になったことのある音楽ジャーナリスト。今回は「雑誌の取材風に…」ということで、作曲について、作品について、日本のクラシック音楽について、プログレについて、3月のコンサートについて、本(クラシック音楽はミステリーである)について、などなど幅広くおしゃべりする。
番組内で流す…何か(メジャーでないレーベルの音源で)おすすめ曲を…と言われて、「鳥たちの時代」や「アトムハーツクラブ組曲」と並んで、まだ初演されていない「アメリカRemix」のフィナーレ(約6分)もMIDI音源で提供。これはちょっと聞きもの(お宝音源)かも。
放送は、3月9日・16日と、ちょっと先。番組はBlue Radioに登録(無料)すればインターネット環境で試聴可能。
…と、このところ「引きこもり隠居作曲家」にしては珍しく人付き合いの多い日々が続いている気が…
MusicBirdのトランスワールド・ミュージックウェイズ(パーソナリティ:田中美登里さん)にゲスト出演。3月の例のコンサートがらみで「オーケストラの未来形」をテーマにした1時間。
今回初披露の「アメリカ remix」のピアニストを務める中野翔太氏も交え、スタジオにMacを持ち込んでアメリカの原曲とremix版の聞き比べや、タルカスorchestra版のさわりなども披露。
放送は2月14日(日)10:00〜11:00 MusicBird:cross culture「トランスワールドミュージックウェイズ」。
Blog「月刊クラシック音楽探偵事務所」更新。
今回は、モーツァルト雑感、「モーツァルトのピアノ協奏曲な世界」。
3月の「JA道Classic」コンサートについて、東京フィルのコンサート・マスター:荒井英治氏(写真右)と対談。聴き手:柴田克彦氏(中央)。
荒井氏はモルゴーア・カルテットのトップ・ヴァイオリニストで私の「アトム・ハーツ・クラブ・カルテット」の生みの親であるほか、自身でもキング・クリムゾンの「太陽と戦慄」や「21世紀の精神異常者」を弦楽四重奏で演奏してしまうほどのプログレ・マニア。
おかげで、クラシックの作曲家とヴァイオリニストの対談なのに、ピンクフロイドが、イエスが、エマーソン・レイク&パーマーが、キング・クリムゾンが、ジェネシスが・・・という話が延々2時間、止まらない。(別に「プログレ対談」というわけではなかったのだが)
そもそも彼がコンサートマスターに居るので「東京フィルでタルカス」などという無謀な試みをやろうという気になったわけで、今回の「タルカス」オーケストラ版や「アメリカRemix」では、オーケストラの手綱を引き締め豪快な演奏を聴かせてくれるはず。乞うご期待。
ちなみに、次々作として彼のための「ヴァイオリン協奏曲」も構想中。一瞬「ピンク・クリムゾン」というタイトルが頭をよぎるが・・・いや、さすがにそれは・・・(^ ^)。
3月初演予定の「アメリカRemix」と「タルカス」の音源CD(演奏者や指揮者に渡すサンプル盤)を制作する。
かつてはFinaleで作成した楽譜をMIDIデータに落とし、それをDigital Performerなどの演奏ソフトで音色やダイナミクスなどを加工する…という面倒なことをしていたものだが、最近は結構Finaleだけでもそこそこの演奏をするようになったので、そのまま行くことにする。
3管編成で30チャンネルほどあるので、それを上右図のように、それぞれの楽器ごとにMIDI音源を設定。フルートは「チャンネル:2」「パッチ:74」「flute」、ホルンは「チャンネル:9」「パッチ:61」「french horn」、第一ヴァイオリンは「チャンネル:18」「パッチ:49」「String Ensemble1」などというように振り分ける。
次に、各楽器を鳴らすプレイバック音源の設定をする。
一番シンプルなのは、Macの内蔵音源(Soft Synth)。作曲中のチェック用には便利だが、ちょっとチープな音なので、こだわりたい楽器についてはfinale付属のGarritan音源(図上)や市販のサンプリング音源などを併用する。
昔は「8チャンネルで同時発音数16音」…というような限界があって、ちょっと音が多くなるとフリーズしてしまったり音がダンゴになってしまったものだが、今はパソコンのスペック次第で3管フル編成オケ3群だろうが、500声部のアンサンブルだろうが、たぶん…鳴らせる。
ここにお金をかければ、かなりリアルなオーケストラ・サウンドも可能だが、あくまでも「サンプル音源」なので、このくらいで。
音源を設定したらFinaleでプレイバックする。ミキサーも付いているので、楽器の定位置やバランス、エフェクトの付け具合からホールの残響などまで設定可能。
それをUSB出力からオーディオ・キャプチャ−(UA-3FX)経由で「Sound It」というサウンド編集ソフトに取り込む。このあたりは、ライヴ録音と同じ感覚だ。
そして、収録したデータを調整(余分な音をカットしたり、音量レベルを調整したり)し、AIFF、WAV、MP3などのオーディオ・ファイルとして保存する。
そうやって出来た「音データ」を、iTunesに取り込み、曲順に並べて「プレイリスト」を作り、それを「ディスク作成」を使ってCDに焼く。
これで(まだ初演していない曲が録音してある!)「超レアCD」の出来上がりである。
ただし、演奏の参考にはなるものの、当然ながら「人間業ではない」演奏なわけで・・・・・音楽はやはり生身の演奏が一番かと。
半年にわたる大仕事がようやく一段落ついたので、フィンランドの山荘に温泉療養に出かける。
推理小説の古典名作(むかし一度は読んだことがあるのだが)を10冊ほど抱え、昼は山荘のベランダでコーヒーを飲みつつ、夜は近くの蕎麦屋で熱燗をすすりつつ一冊ずつ読みふける日々……(それってもしかしてフィンランドじゃないだろ!…というツッコミはともかく)
着いた日の午後から降り出した雪は、何とも絵のようにきれいに降り積もり、静かだし、人はいないし、景色は良いし…の天国模様。
ただし、うっかり雪道に迷い込むと遭難しそうだし、あまりにも人がいないのでお店もあちこち閉まっているし、昼間の最高気温ですら氷点下なので、ある意味〈生命の危険〉も少し。
それにしても、客の少ない飲み屋のカウンターで、独り静かに酒をちびちび飲みながら推理小説のページをめくる…。これに勝る至福の時間がこの世にあろうか。
もし、悪魔に魂を売るとしたら、金でも権力でも地位でもなく、これ(カウンターとお酒と推理小説)だ。
待てよ、もう売ってしまっているのかも知れないな(笑)