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2010年4月21日 (水)

盗作・拝借・模倣・影響

Song 上海万博の公式PRソング「2010等你来」が岡本真夜の「そのままの君でいて」に酷似している、というネットでの指摘から始まった「盗作」問題、二つの曲を聴いてみると確かに「偶然に似てしまった」という釈明は不可能なレベルで、これは完全にアウト。
 結果、単なる「著作権」問題を超えて国を巻き込んだ大騒ぎになり、作曲者はどうやら雲隠れしてしまったらしい。などと聞くと、同じ作曲家の身としては何だか同情したくなる処も少し。

 ただ、プロなら「90%以上(故意に)マネる」というような言い逃れできないレベルの盗用は絶対せず、リスペクトを込めたバランスで「拝借」するはず。だから「誰が聞いてもそっくり」というレベルになると、これはむしろ「過失」(あるいは初歩的ミス)なんじゃないかと思ってしまうほどだ。

 そもそもポップスのヒット曲は、4小節単位の構成もビートもコード進行もすべて「至近距離」にあるから、逆に「まったく何にも似ていない楽曲」を創るのは不可能。それを逆手にとって「盗作」と言われない程度に「拝借」しまくることでヒット曲を生み出すのが、現代おけるヒット作曲家の「才能」。いや、皮肉ではなく。

 そう言えば、昔、ポール・マッカートニーが「イエスタデイ」を作曲した時、あんまり自然に出来たので「どこかで耳にした曲を書いてしまったんじゃないか」と心配して色々な人に確認して廻ったらしいし、ただ今ヒット中の坂本冬美「また君に恋してる」も、キング・クリムゾンの「ムーン・チャイルド」にサビ部分が酷似しているのは往年のロック・ファンなら既にお気付きのはず。

 100%の「盗作」は同情の余地なくアウトだが、75%の「拝借」、50%の「模倣」、25%の「影響」と考えてゆくと、その境界はかなり曖昧だ。ベートーヴェンはハイドンを模倣し、ビートルズはプレスリーを模倣し、それに「自分の意匠」を加えて次の世代に受け渡してきた。
 先代に敬意を払い、次世代に継承する。それが「音楽文化」というものなのだろう。

 ちなみに今回の件、万博事務局側が曲の同一性を認め、原作曲者(岡本真夜さん)が使用を承諾する…という意外や「大人の対応」で決着しそう。今後は作曲者名のクレジットを変更して明記し、新たに契約を結んで今までの楽曲使用料を支払えば「表向き」は解決。
 ただ、「裏」ではまだまだ色々な意見がくすぶりそうだが…。

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