プログレッシヴ写楽
一日だけ夏休み。NHK-FM「今日は一日プログレ三昧」を聴きながら、島田荘司「写楽 閉じた国の幻」を読む。
夏休みに読むのを楽しみにとっておいた、島田荘司氏の新作は686ページの大著。子供を事故で亡くした男が、ひょんなことから写楽の謎(写楽とは誰だったのか?)に肉薄する……という話なのだが、さすが島田センセというべき「アッと驚く謎解き」が展開。驚きの「写楽=○○説」の最新仮説が登場する。
その驚愕の正体は本書を読んでいただくとして、確かに浮世絵というのは、原画を描く「絵師」がいて、その絵を元に版木を彫る「彫り師」、そしてそれを刷りあげる「刷り師」がいる。
ということは、原画がもし「モナリザ」だったとしても、一級の版下絵師と彫り師と刷り師の手を経れば、それらしい「浮世絵」になることは充分あり得る。
写楽のあのデフォルメされたユニーク極まりない絵柄は、浮世絵にも歌舞伎にも素人の「予想外の人物」の手によるものだったからこそ…という説はかなり説得力がある。
さらに、この新説、「なぜ写楽個人に関する記録どころか伝聞すら皆無なのか」という点も納得させるのが重要ポイント。そして実際に、当該人物が写楽の活躍した1794年の江戸にいた…と判明するくだりは、もはや小説なのか史実なのか分からなくなるほどの衝撃だ。
もっとも、真面目に研究している学者からは総スカンを食いそうな奇説だし、もしこれが真相なら日本美術史の常識を覆す大スキャンダル。そうそう簡単に賛同する人は出ないだろうけれど。
ちなみに、冒頭で謎の浮世絵下図に「鬼は外、福は内」とオランダ語で書かれていた……という下りで、もしかしたら「写楽はゴッホだった」と言うんじゃないだろうな!と思わず妄想。(ちなみに、写楽の活躍年は1794年。ゴッホは1853年生まれで1890年没。生きた年代が100年近く違う)
でも、御手洗潔が主人公だったらやりかねなかったんじゃなかろうか。
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