鳥たちの鉄則
作曲家として演奏家に新作を提供するにあたっては3つの鉄則がある。
1.〆切を守ること。ただし、万一〆切より早く出来ても、決して楽譜を見せないこと。
…〆切厳守は(作家によって個人差があるが)職業上のポリシー。私の場合、通常「初演の一月前」(+パート譜作成期間)が基本だが、中には「3日前」と豪語する作曲家もいる。演奏家としては、楽譜が全くない状態でコンサートが近付くのは恐怖なので「早く見せてください」とせがむが、曲を理解する以外の余計なことを考える「余裕」を与えてしまうので厳禁(++;)。ちなみに、プロなら普通どんな曲でも「3日」あれば弾けるし、3日かけて弾けない曲は3年かけても弾けない。
2.演奏家が「演奏不可能」と言っても信じないこと。
…今までたくさん曲を書いてきて、中には初演のとき演奏家に「この曲は難しすぎて弾けません」と断言された曲も10はくだらないが、10年もたつと、若い演奏家や学生さんがリサイタルやコンクールで平気で演奏するようになる。最近、サクソフォンのコンクールで「ファジーバード・ソナタ」、管楽器コンクールで「デジタルバード組曲」、ギターコンクールで「風色ベクトル」、アコーデオンのコンクールで「オニオンバレエ組曲」がそれぞれ課題曲となったそうなのだが、いずれも初演の時は「演奏不可能」のお墨付きを貰った曲ばかりである。
3.演奏する「姿」に惑わされないこと。
…聴衆にとって演奏家のアクションは「音楽を聴く楽しみ」のひとつだが、作曲家は違う。演奏家がどんなに熱演のポーズをしても「音」にそれが出ていなければNG。逆に、どんなに見てくれが変でも「音」が音楽を描いていればOK。むかし、とある現代音楽の新作で指揮者がノリノリの指揮をしていたので「そんなにあの曲、気に入ったんですか?」と聞いたら、「いやあ、面白くない曲だから、指揮だけでも面白くと思ってネ」とウィンク (^_-)-☆。なので、特にCDなどの録音の時は、演奏家の熱演ポーズでうっかり「OK」を出すのは危険。音楽を聴くには、演奏家を見ずに聴くべし。
ちなみに、演奏家の鉄則はただひとつ。「作曲家の言うこと(&楽譜に書いてあること)をすべて信じてはいけない」(^^)
注)以上の鉄則はプロの音楽家限定。音楽を純粋に愛好するアマチュアはこの限りではないので、念のため。
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