べっちんとまんだら
eBookの新刊で読んだ松本次郎「べっちんとまんだら」に感心する。この人、HPの「魚座の部屋」でデビュー作「ウェンディ」(2000)を紹介したことがあるが、ダークな(リアルな悪夢のような)イマジネーションの飛翔が天才的で、かなり気になる作家の一人。
この作品、河川敷に転がっている廃戦車に住む女子高生べっちんと友人のまんだらが主人公で、周りにいるのはすべてゾンビ化した杉並死民たち(++;)。武器を持った管理人と称する妙な男がこの河川敷を管理しゾンビ狩りをしているが、時々、爆撃機が死体を空から投棄し補充している…というふざけた設定の悪夢の世界。
深く考えるだけ無駄なシュールな筋立てだが、絵柄を丸っこいマンガタッチにすれば意外と吾妻ひでお師のモーツァルト的JK世界と共通するので、それで気に入ったのかも知れない。
ただ、むかし「ウェンディ」を「この本面白いから」と若い女性編集者に貸したところ、口をきいてくれなくなってしまったことがあるくらいで(…なにしろ、この人の描く世界は、SEX・排泄・嘔吐・ドラッグ・血・殺戮・死体そして狂気がフツーに日常化しているアナーキーな世界なのです)、無防備な一般の人にお薦めしにくいのがチトつらいところ(++;)。
最新の短編集「善良なる異端の街」も秀逸な傑作揃いなのだが、さしあたり「青少年の健全な育成」などという単語が頭の中に1ミリでもある人は、手に取らない方が無難。
子供にも健全な大人にも読ませられない…どう間違っても朝日の推薦コミックスなどになるはずもない…けれど、漫画の表現技法の高さを芸術的レベルで具現している。世の中にはこういう作品もあるのです。
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