神宮散歩
ベートーヴェンもよくハイリゲンシュタットの森に散歩に行ったそうだが、ピアノの前では止まっていた楽想が、木々の下では動き出す。作曲家にとっては、仕事場の次に重要な創作場所である。
ただし、人がいると楽想は掻き消えてしまうので、なるべく人のいない森の深部へ行く。そこでは言葉も音楽も厳禁である。
楽想というのは妖精のようなもので、人がいると出て来ない。人がいない場所で静かに佇んでいると、おずおずと大気の片隅から降りてくる。
そして、誰もいないことを確認してから、こっそりと音楽を耳打ちしてくれるのである。
煮詰まっているからと言ってうっかり「音楽なんか信じない」と呟くと、世界のどこかで楽想がひとつプツンと消えてゆく。
だから、音楽は信じなくちゃいけない。
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