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このところネット書店で読書三昧。
ミステリーとかコミックスとか数十巻まとめての大人買い中。
しかし、まだまだネット書店で読める本の数は少ない。というより少なすぎる。駅前の小さな本屋さんの方が遙かに品揃えが豊富という印象だ。
そのうえ更にネット上の複製行為の締め付け法が施行されるとかで、広大で自由だったはずのネットの世界の矮小化(特に日本での)が気になる今日この頃。
そもそも「複製」と「検索」という…かつては選ばれた者にしかできなかった高度な技術と莫大な投資を要する行為が、いとも簡単に無料かつ瞬時にできる時代にいきなりなってしまったわけで・・・「ちょ、ちょっと待って」とあわてる人たちがいるのは分からないではない。でも、この流れは決して止めることは出来ない。
確かに現存の音楽業界や出版業界は壊滅するかも知れないし、「プロの作家」とか「プロの音楽家」も消滅するかも知れない(純音楽の作曲家は一足先に絶滅してしまったし)・・・でも、歯止めをかけずに行くとこまで行ったらどんな世界が立ち現れるのか、そちらの方が楽しみだったりする。ってサドなんだかマゾなんだか・・・
楽譜作成ソフトFinaleを日本に供給しているMI7(エムアイセブン)の取材を受ける。
楽譜作成ソフトはパソコン黎明期の1980年代から導入しているが(当時は〈Composer〉というソフト)、実用に耐えるようになったのは90年代後半〈Finale〉日本語版が登場したあたりから。仕事に使えるようになったのは2000年以降、作曲ツールとしてようやく完成されたのはここ数年だ。
もともとMacベースのソフトだったのにOSXに切り替わるとき対応が遅く、その間(いち早くOSXに対応した)〈Sibelius〉も使うことに。その時の印象としては〈Finale〉がマニュアル車〈Sibelius〉がオートマ車という感じ。
扱いは微妙に難しいが上級のテクニックを駆使できること、97年以降ほとんど全ての作品をFinaleで作成しているので今さら変えられないこと・・の2点で今はヘビーユーザー・(^_^;。
当然ながら今回の大河ドラマの音楽制作でもフル稼働した。・・・と言うより、たった一人で1年に130曲600ページものスコアを書くのは、Finale無しでは不可能だったろう。
今では、ピアノが1、Finaleが9…というほどの全面依存ぶりだが、若い人にも勧めるか?というとそれは微妙。若い頃は手書きで徹底的に基礎を覚え込むべし。若い頃に楽をするとろくなオトナになれない(というようなことが古代エジプトのパピルスにも書かれていたらしい)
それにしても、この「楽譜」というプログラミングソフトで、人類の作った色々な音楽…オーケストラやピアノやロックやジャズや歌や合唱や雅楽などなど…を「鳴らす」ことが出来るというのは・・・本当に面白い仕組みだ。
実際、その「面白さ」にはまってしまったのが、何十年も作曲家をやるはめになった唯一にして最大の理由。
逆に言えば、身を持ち崩す悪魔のソフト…と言えなくもないわけだが。
NHK604スタジオで丸9時間ほどかけて、大河ドラマ本編音楽vol.8(16曲)およびvol.9(16曲)と追加収録の「タルカス」&「サイバーバード」ほか全32曲のミキシング&トラックダウンを行う。
これは、先日3日間かけてスタジオ収録したマルチトラックの音源を、音のバランスや音質および残響などを調整しながら放送用のステレオ2chに落とす作業。
最近はすべてコンピュータ上での作業なので、スタジオはほとんど宇宙船みたいである。
編成は、オーケストラ&室内管弦楽に加えて、二十絃、琵琶、笛、ソプラノ、サクソフォン、チェロなどの独奏ありで、計80分(1時間20分)ほど。
新しい紀行の音楽(第3期・第4期分)も含め、番組への登場は7月後半あたりから。
今回の新曲を含めたサウンドトラック盤第2集は9月に出る予定。また、制作した音楽全曲を網羅した「コンプリートBOX」の企画も進行中らしいのでお楽しみに。
というわけで、番組はまだまだ半年続くが、音楽担当としては一足先にクランクアップ(?)。いやあ、長かった・・・(=_=)
追記。一瞬だけ軽井沢に行って帰って来たところ「大河の作曲料で豪遊ですか?いいですね♡」と言われてしまったが、あははは…と力なく笑うしかない。ブログで何度か(しつこく)書いたように、編成の大きな曲をぱかすか書きまくったため音楽費をほとんど使い尽くし、マイナスにならなかっただけラッキーというレベル。くれぐれもオーケストラのご利用は計画的に。それにしても「豪遊」。ああ、なんという甘美な響きでありましょう。というわけで「平清盛」次回は第25回「見果てぬ夢」・・・
Blog「月刊クラシック音楽探偵事務所」6月号更新。
今回は、わたしが作曲家として道を踏み外す(?)きっかけになった「B♭」の話ほか…音感や調にまつわるよもやま話。
そう言えば、今回の大河ドラマの音楽でも、平安の響きを意識すると「Em(ホ短調)」、和風を意識すると「Dm(ニ短調)」にチューニングが合う感じがして、ちょっぴり不思議な気がしたものだ。
なるほど、「調子が良い」とか「調子っぱずれ」というのは、これなのか・・・と
*
その大河ドラマ「平清盛」第23回「叔父を斬る」放送。
中盤のクライマックス〈保元の乱〉三部作の3。
叔父を斬った清盛 vs 父を斬れなかった義朝…
父が父を斬る場に立ち会った頼朝 vs 何も知らされず叔父に竹馬をねだる無邪気な宗盛…
それぞれの処刑の場を蔭から見つめる西行と鬼若(弁慶)…
我が子の行く末を思う頼朝の母:由良と義経の母:常磐…
そして、憤怒の形相の清盛と笑いまくる後白河帝・・・
対比と伏線の構造が見事すぎる。
今回の忠正(清盛の叔父)、為義(義朝の父)、前回の悪左府頼長、崇徳帝、そして鳥羽帝に白河帝などなど、ここまでで助演男優賞クラスが7〜8人(特別賞はやっぱり鸚鵡!)。
NHK506スタジオで、大河ドラマの音楽用「サイバーバード協奏曲」抜粋版のソロパート・アフレコ。
演奏は、sax:須川展也さん、p:小柳美奈子さん、perc:山口多嘉子さん。
今回の大河ではオリジナル新曲のほかに、NHK側からの注文で「タルカス」や左手ピアノ曲などを提供してきたが、この「サイバーバード」もそのひとつ。
CDの音源をそのまま使う…のではなく、「大河ドラマversion」としてセッションを組んで、4つの部分を収録。
須川氏の狂乱のアドリブが炸裂するフィナーレや泣き節全開のアンダンテが、清盛の世界でどう響くか、・・・お楽しみに。
*
というわけで・・・丸一年に渡った大河ドラマ本編音楽の制作作業はこれにてひとまず完了。。
たんまり貰った作曲料でしばらく豪遊でもし、その後は印税でぬくぬく隠居生活を・・・(^O^)/
・・と思ったが世の中そう甘くない・(@_@;)。(何度かここでも愚痴っているように)昨今のドラマや映画の世界は、音楽の「総予算」というのが決まっていて、そこからオーケストラにかかる費用やパート譜制作費などが引かれ、最後に残ったのが「作曲料」になる仕組み。
なので、大きな編成の曲を書けば書くほど、音符の量を書けば書くほど作曲家の取り分は限りなくゼロに近付いてゆくというチキンゲーム。今回これだけ好き勝手に大量に書いたので、残りはほとんど雀のむにゃむにゃ・・(T_T)
頭の中にリフレインする「♪遊びをせんとや、生まれけむ〜」という歌の意味の「怖さ」を実感しつつ諸行無常の鐘が鳴る・・・(v_v)
NHK506スタジオで、昨日に続いて大河ドラマ「平清盛」本編音楽vol.9の録音。
室内管弦楽編成でN01からN16までの16曲(紅蓮、儀式、奈落、風早、常風、風見、円舞、梵鐘、悠久、無機、細波、息吹、枇杷、静寂、友愛…紀行、夢詠み…紀行)。
演奏は、藤岡幸夫指揮東京フィル。番組最後の紀行の音楽用に、ソプラノ:市原愛さんが加わる「友愛」と、チェロ:長谷川陽子さんの演奏にストリングスをかぶせた「夢詠み…紀行」も収録。
和楽器として、二十絃:吉村七重さん(夢詠み、儀式ほか)、笛:竹井誠さん(細波)、琵琶:稲葉明徳さん(枇杷)も参加。
今回は「今までとは違ったタイプの音楽も」ということで、(基本モチーフは同じながら)お祭り風ロックあり、雅楽&邦楽風あり、ワルツあり、ミニマルあり、アフリカ風ポリリズムあり、十二音音楽あり、カンパノロジーありの玩具箱。どういうシーンに使われるのか・・・お楽しみに・・(-。-;)
というわけで、オーケストラおよび合唱そして和楽器を使って、全3回計6日36時間、全9巻100曲ほどに別稿などを含め130曲ほど(時間にして5時間強)の録音が完了。(さらに劇中で歌われる今様数曲の作曲もあり)
中には今回のドラマのために書いたものでないオーケストラ編曲版「タルカス」(K.エマーソン作)、左手ピアノのための「アイノラ抒情曲集」「アヴェマリア」「5月の夢の歌」(p:舘野泉さん)そして「サイバーバード協奏曲」などもあり、40年の作曲家人生で培ったネタを全部絞り出した(搾り取られた?)気分。
あとは、アフレコ作業数曲と今回収録した32曲のミックスダウン&編集立ち会い。それが終われば1年以上にわたる長丁場もひとまずゴール。
終了後、指揮の藤岡幸夫氏と記念撮影→。丸2日の収録作業で二人共くたびれ果てた顔になっていて、この一枚だけが唯一の貴重な笑顔の写真。(^◇^)¥
NHK506スタジオで、大河ドラマ「平清盛」本編音楽vol.8の録音。
2管編成オーケストラでM01からM10までの10曲(撃破、命運、禹歩、覇気、地響、激流、栄華、宿業、鬼道、想望)、およびNHKからの要望による「タルカス」の追加2曲(マンティコア、アクアタルカス)と拙作「サイバーバード」からの抜粋4曲。
基本は4モチーフ(遊びをせんとや&平家・源氏・朝廷)の交響的展開形で、物語の後半に向かってそれらが絡み合い、中には全部のモチーフが重なるものも登場。
演出からの注文による「(拙作)交響曲第2番風」のもの。さらに、師匠:松村禎三風(地響)や伊福部昭風(鬼道)の曲も・・・(^_^)b
演奏は、藤岡幸夫指揮東京フィル。13時から18時まで5時間かけて全16曲を録音。
休む間もなく明日もvol.9全16曲の収録・・
舘野さんの左手ピアノのための「海鳴(うみなり)」の楽譜すすめる。
大河ドラマの清盛のテーマによる5分ほどの変奏曲。
もともとは「紀行三景」(遊びをせんとや、友愛、夢詠み…とドラマの音楽中のきれい系で静かな曲だけを集めた小品集)と一緒にまとめるはずだったのだが、この曲だけちょっと異質で・・・大河がらみコンサートでオーケストラ付き協奏曲仕立てにしようか、あるいは「ごつい系」だけで三楽章作って「源平ソナタ」(?)にでもしようか・・・とも妄想中。
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NHK-FM「ブラボー!オーケストラ」解説回、師匠の師匠:伊福部昭「交響譚詩」放送。
祖師の凄いところは4つの「ない」の徹底ぶり・・・
音楽大学=出てない。
ソナタ形式=使わない。
対位法=やらない。
転調=しない。
(しかも簡単に真似出来そうで絶対出来ない!)
*
大河ドラマ「平清盛」第22回「勝利の代償」放送。
今回の大河、日曜日の夜に家族団欒で見るにしては「情緒」への刺激が強力すぎ(なにせ、鸚鵡の死にも泣かされるのだから・・)
しかも、すべての登場人物が(鸚鵡すら!)群像劇の中の一人として同価に描かれている。(時代劇ファンは「味方(善玉)」と「敵(悪玉)」が明快でないと頭がついて行けないのに…)
これを「面白い!」と取るか「分からない!」と取るかで評価が真っ二つに分かれるのが(共犯の音楽担当としては)本当に面白い。
遊星よりの物体X(1951。監督:クリスチャン・ナイビイ)再○
遊星からの物体X(1982。監督:ジョン・カーペンター)再◎
・J.キャンベルの古典SF「影が行く」の新旧映画化作。
トリフィドの日(1962。監督:スティーヴ・セクリー)再○
ラスト・デイズ・オブ・ザ・ワールド(2009。監督:ニック・コパス)×
・J.ウィンダムの古典SF「トリフィドの日」の新旧映画化作。
アイ・アム・レジェンド(2007。監督:フランシス・ローレンス)△
・R.マシスンのSF「地球最後の男」の最新映画化作。
クローバーフィールド(2008。監督:マット・リーヴス)○
・ドキュメンタリー風怪獣映画。
第7鉱区(2011。監督:キム・ジフン)○
・韓国製海洋エイリアン。
30年前のジョン・カーペンターの「物体X」が今見ても圧倒的。特にモンスターの造形はSF映画史上に残る衝撃度・・・音楽のエンニオ・モリコーネにも注目・・φ(.. )