隠響堂顛末
昨年から〈隠響堂〉と号している・(-_-)zzz・のだが 、これは勿論「隠居」にかけていると同時に、私の邦楽シリーズ「なばりの三ツ」「もゆらの五ツ」「すばるの七ツ」にも因んでいる。
これらはいずれも古い日本語で、なばりは「隠」、もゆらは「響」、すばるは「昴」と書く。モユラは珠がふれ合って出す響き(も・ゆら)のことで「響」は当て字。スバルは星が統る(すばる。集まってひとつになる)ので「昴」。ナバリは実際に「隠り」と書き、「隠れる」という意味である。
私がこの種のタイトルにはまったのは忍者マンガで有名な白土三平氏の影響だ。彼の作品には、忍者の名前や術の名などに魅力的な響きのものがたくさん登場するのだが、そのひとつに「カムイ外伝」に登場する伊賀出身の「名張の五つ(画像→)」という忍者がいる(なぜ「五つ」なのか…はぜひ作品を読んで頂きたい)。「名張(なばり)」という地名は実際に伊賀に存在(古事記の時代から伝わるという)し、「隠(なばり)」が忍者のことを指すという人もいるらしい。女忍のことを「くノ一」(足すと「女」という字になる)というのは有名だが、このジャンルはなかなかに洒落た命名のものが多い。
ちなみに、私の作品の方の「なばりの三ツ」の読み方は「みっつ」ですか「みつ」ですか?と聞かれたことがあるが、なかなかいい質問です。「丑三つ(うしみつ)」とか「暮れ六つ(くれむつ)」あるいは「三ツ目(みつめ)」「八つ頭(やつがしら)」というように、古い日本語では「促音(ッ)」は発音しない。
なので、「隠三つ」という題なら「なばり・みつ」も有り得るが、本体がすべて三文字のシリーズなので、数の方も三文字に揃えて(現代風に)「もゆらのいつつ」「なばりのみっつ」「すばるのななつ」と読むことにしている次第である。
蛇足ながら、「三ツ」「五ツ」というのは楽章の数(曲の構成)が 「3つ」「5つ」ということ。スバルはプレイアデス星団としては七つ星なので「七ツ」。ただし日本では「六連星:むつらぼし」とも呼ばれるように星の数はまちまちである。
もうひとつ蛇足ながら、このシリーズには「四ツ」がない。ゆえに4楽章の曲が存在しない。これは差別語に抵触するからなのだが、四ツが(四つ葉のクローバーや四ッ谷はOKなのに)なぜ差別語になるのかは・・・微妙な話になるので御興味おありの方は各自(内密に) 調べてみていただきたい。