KENJI 初演
東京オペラシティで行われた舘野泉リサイタルにて拙作《KENJI…宮澤賢治によせる》初演に立ち会う。
前半は、二宮和子(クラリネット)、多井智紀(チェロ)、小山実稚恵(ピアノ)さんとの共演で、エスカンデ「チェスの対局」(クラリネット)、coba 「Tokyo Cabaret」(チェロ)、「音の絵」(ピアノ三手連弾)。多彩な楽想が次から次へと繰り出すステキな世界が広がる。
そして後半が〈KENJI…宮澤賢治によせる〉。ピアノ:舘野泉、ヴォーカル(語り):柴田暦、チェロ:多井智紀さん。…賢治の詩をコラージュした8章40分ほどの宇宙だが、残念ながら(聴衆を泣かせられなかったという点で)及第点には遠く及ばず。演奏は三者とも力演で素晴らしかったのだが、「声」を使った舞台作品である以上、全体のバランスと方向性を整える専門の演出家が必要だったということなのだろう。特に、生の声だけで充分聞こえる小さな空間ならともかく、オペラシティのような大空間では、「歌詞が聞こえるようにPAを入れました」だけでは聴き手の心との距離間がつかめない。やはり「声」は難しい。
それでも、舘野さんが(涙をこらえて)弾き語った瞬間と、天上からコーラスが聞こえてきた瞬間だけは鳥肌が立った。というわけで、賢治のことばの威力と、作曲家の無力と、舘野さんの78歳を超えてなお全力疾走の強靱なバイタリティを改めて思い知った一夜だった。
このあと、KENJI…は6/6ヤルヴィホール(長野)、6/28宮澤賢治イーハトーヴ館(花巻)で再演予定。
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