ファンファーレ脳の煩悶
とあるコンサート用にファンファーレを頼まれている。
ファンファーレという曲種自体は、既に幾つか書いているが、どちらかと言うと普段の自分の世界にはない(明るい)タイプの音楽なので、作曲するには、まず頭を《ファンファーレ脳》に切り替えるところから始める。
すると、ようやく頭の中にファンファーレが鳴り始める…のだが、ひとつ鳴り出すと(夏の太陽に照らされてセミが鳴き出すように)次から次へと鳴り出して止まらなくなる。なので、ちょっと油断すると頭の中でわさわさと増殖し始め、卵から孵ったオタマジャクシの群のように頭が池を埋め尽くす状態になるわけなのだ。
こうなると問題は、この膨大な数の中から「どのひとつを選ぶか」になるのだが、みんな基本的に♪パンパカパンなので、選ぶのもひと苦労。そう言えば、むかし某先輩が言っていた。「5分の曲が5分で書けることもあれば、10秒の曲を作るのに10週間かかることだってある」。音楽は……深い。