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来春発売予定のパドゥシャの新アルバム打合せ。ジャケットやアルバムタイトルや曲順の相談(と、その倍くらいのネコの話)をしつつ、出来たてほやほやの追加曲《トラウマ氏の庭》…ピアノとパーカッションと電子音響のための…を聴いてもらう。
三田評論12月号@三人鼎談、冨田勲氏、私、藤岡幸夫氏の「音楽家になるなら慶應に行こう」を読む。(ちなみに、三人とも慶應義塾高校出身で先輩後輩の間柄である)
日本クラリネット協会より委嘱されていた無伴奏ソロ曲をようやく書き上げる。
クラシック音楽マニアになるとかかる病気のひとつに〈鬼の首症候群〉というのがある。
むかし私がクラシックおたく1年目だった高校生の時、音楽の先生が《拍子》の話を始めた。3拍子はこんな曲、4拍子はこんな曲がある、と挙げた後、「5拍子にはチャイコフスキーの悲愴の第2楽章があります」「7拍子にはショスタコーヴィチの森の歌のフィナーレがあります」と挙げてゆく。クラスのみんなが「へえ〜」と感心する中、私は内心「そんなことは知ってるもんね」と思っていた。
そして、「9拍子の曲はありません」と言うので、わたくし思わず手を挙げて、「あります!シベリウスのトゥオネラの白鳥」。先生、怪訝な顔をして音楽室の奥からスコアを引っ張り出してきて…「ホントだ」。
続いて「11拍子。こんな曲は絶対ない!」というので、「あります!ストラヴィンスキーの春の祭典の90ページめ」。以下同文。
まさに「鬼の首を取った」ようなドヤ顔だったに違いないが、いや、これは「イヤな生徒」だったろうな、と今思い出すと忸怩たるものがある。
しかし、クラシック・マニアというのは得てして「こういう性格」になるものらしく、「モーツァルトはね」とか「平均率クラヴィア曲集というのはね」とか、あちこちから色々な〈鬼の首〉を取り出しては、周りの人を複雑な顔にするのが得意である。
なので、コンサートやネット周辺でこの種の人を見かけると、昔の自分を思い出して苦笑いしてしまうというか甘酸っぱくも懐かしい不思議な気分になるわけなのだ。
しかし、ヘンな顔されようが煙たがれようが臆することはない。もっともっと〈鬼の首〉を集めて欲しい。たくさん集めると、やがてその首が人の受け売りでなく自分のことばで話し始める。そうしたら、そこが「始まり」だ。
「今、日本で一番売れているクラシック音楽書」…という怪しげな紹介で、拙著「調性で読み解くクラシック」(通称:調クラ)の特設ページを作ってもらえることになりました。 (著者インタビューに続いて、本に出て来る楽曲や譜例の音源視聴コーナーがあります)
ヤマハミュージックメディア → http://www.ymm.co.jp/feature/chousei.php
NAXOS → http://naxos.jp/special/chousei
今回、改めてインタビューされて気付いたのですが、45年も音楽をやっていながら、私自身は(15歳過ぎてから音楽を本格的に勉強し始めたことも含めて)自分が音楽の専門家だという意識は全くありません。情熱と鍛錬はなまじの専門家の数倍以上と自負しておりますが、所詮は独学。好奇心と興味は素人と同じ感覚のまま、30年以上プロの現場で音楽をやって来た異邦人…と言ったところでしょうか。ですからこの本は、「専門家が書いた音楽専門の本」ではなく、そんな「怪しい旅人」が覗いた音楽の世界の探検記というわけです。
ちなみにAmazonクラシック音楽部門第1位、ヤマハ銀座店音楽書年間売上第1位……なのだそうですが、あくまでも「クラシック音楽部門」に限っての話。普通の「ベストセラー書」とは数字が「ふた桁」違いますので念のため。…と、ここで自嘲気味に笑う場合、もちろん笑い声は・・・「けたけた」でしょうね。
今週Mac OSX が10.11.2にバージョンアップ。ElCapitanになってから記号を書き込もうとするとクラッシュしていた楽譜制作ソフト《Finale》が、なんとか普通に使えるようになった。
ついでに、起動すらしなくなっていた執筆支援ソフト《Scrivener》も、再ダウンロードすることで使用可能に。(より安定性を求める向きにはScrivener2というのも開発されている)
おかげでこの間ほぼ丸ひと月にわたり色々な作業が消し飛んだわけだが・・・まぁ、OSが9からXに変わったときの悪夢(それこそほとんど全てのソフトが動かなくなった)に比べれば、何と言うことのないほんの小さなトラブル…と考えることにしよう、そうしよう。
NHK 605スタジオでFM「ブラボー!オーケストラ」来年1月放送分残り1本の収録。
今回は1月31日(日)放送分で、ブラームス交響曲第4番ほか。大植英次指揮東京フィル(2015年9月22日第869回オーチャード定期より)。
ブラームスは、ベートーヴェンの呪縛(とブルックナーの追い上げ)に翻弄された末、ようやく交響曲第1番を完成させたのが43歳。そのあと45歳くらいから、トレードマークのヒゲを蓄え始め、最後の交響曲となった第4番を書いたのが52歳。ということは、交響曲作家としての活動期間はわずか10年足らずということになる。
その後、音楽家としては充実の日々を送るが、 独身老年の哀愁を漂わせながら57歳にして「創作力の衰え」を訴えほぼ隠居状態となり、63歳にして一人寂しく亡くなっている。・・なんだか身につまされて怖い話だが、それでも作曲家としては羨ましい人生のような気がする(のだがどうだろうか)。
そう言えば、同じ独身老年隠居作曲家のせいか、最近どこかで「ブラームス先生!(笑)」と(もちろん冗談で)声を掛けられたことがありますが・・・確かに、ヒゲと体型は似ております(笑)。上の写真など親近感が半端でないし・・・
「調性で読み解くクラシック」の販売促進?を兼ねた取材を受ける。
NHK608スタジオでFM「ブラボー!オーケストラ」来年1月分2本の収録。
1月10日(日)放送分は、チャイコフスキー交響曲第5番。指揮:小林研一郎(2015年10月18日第870回オーチャード定期より)
1月17日(日)放送分は、チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」.指揮:尾高忠明(2015年7月12日第866回オーチャード定期より)。どちらも演奏は東京フィル。
浜離宮朝日ホールに〈田部京子ピアノリサイタル〉を聴きに行く。
今回はBBワークス(ベートーヴェン&ブラームス作品連続演奏)シリーズのの第5回目(最終回)で、ブラームス:3つの間奏曲op.117、ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番「熱情」と第32番ハ短調。
彼女の演奏は、どんな曲も「今生まれ落ちたかのように瑞々しく」再生する。ブラームスの間奏曲やベートーヴェンの32番のソナタなどは大いなる偏見を持って言えば(独身男性作曲家が老境にかかって孤独の中で書いたという点で)…おそらく〈女性に最も似合わない枯れた曲〉の筈なのに、まるで女神が降臨して穏やかな佇まいで神話を紡ぐかのような世界が広がる。
さらに、ごつい男が殴り弾きするのが最も似合う…と勝手に思っていた「熱情」ソナタの演奏の緻密で繊細なパッションは、この聞き慣れた曲を「初めて聴いた」瞬間に引き戻してくれた。聴いているのは紛れもなく「音楽」なのだが、そこにあるのはもはや「音」ではなく、彼女の世界の「佇まい」に触れ「時の流れ」を共有することなのだろう。
最後にアンコールで、バッハの(最もシンプルな)前奏曲ハ長調をさらりと弾いたが、これもその向こうにある「平均率クラヴィア曲集」全巻の偉容が見えるような…巨大な銀河の中の小さな星のひとかけらをふと手に載せられたような…絶妙の「佇まい」。ひさしぶりに音楽の深淵を覗き込んだかのような体験をした。
A4サイズの大きさになったiPad Pro。微妙に重く(723g)、べらぼうに高価(128GBのWiFiモデルで ¥112,800 と通常サイズのほぼ倍!)なので今回はパス…と思っていたのだが、ふと寄ったAppleStoreに在庫があったので、つい買ってしまった。