東京の雪
朝、起きると雪景色。
仕事場へ行く途中に急勾配の坂があり、雪が積もると「越えられない」ので本日は休業である。
などと言うと、雪国の方からは「何と軟弱な…」と笑われそうだが、逆にどかどか積もった雪ならざくざく踏みしめて行けるような気もしないでもない。中途半端にしょぼい雪が積もって半解けの状態の「坂道」というのが一番怖い(一度滑ってえらい目に遭ったので、懲りた)のである。
と、そんな軟弱な都会育ちながら、むかし「雪景色」を描いた曲を書いたことがある。雪国育ちで生涯雪景色ばかりを描いた日本画の先生(富岡惣一郎氏)の美術館に頼まれて書いた〈3つの白い風景〉という曲だ。
最初は先生も「東京生まれ東京育ちのヒトに雪景色の音楽なんか書けるわけがない」と思われていたらしいが、曲を聴いて貰うと「不思議だね〜、雪の香りがする」とひどく褒められたのが印象深い。
さらに数年後、その曲をイギリスで録音したとき、(そんな曲の由来など知らない録音技師氏に)「不思議だね〜、この曲を演奏するとスタジオの中の温度がすーっと下がる気がする」と言われたのも思い出深い。
音楽には、不思議なモノが付いていることがある(…ということなのらしい)。