音楽の考えられない軽さ
昨年の家計簿を見ていて、一年間で買ったCDが数枚(レアな現代モノ)だけだったことに気付いた。
むかし、ヒマさえあれば輸入レコード&CDショップをハシゴし、外出すれば必ず数枚のCDを買い込み、音楽評論をやっていた全盛期はヒト月100枚近い試聴盤を聴き、年間千数百枚単位で部屋に増殖していた頃を思うと、しみじみ「時代」を感じてしまう。
確かに若い頃ほど飢餓感を持って音楽を聴くことはなくなったが、今まで買い漁ったCDはほとんどパソコンに入っていてネット経由で聴けるし、新しいアルバムはiTunesで手に入れ、「どういう音楽か聴いてみたい」場合、クラシック系ならネットの音楽ライブラリ、ポップス系ならYouTubeで「即」聴くことが出来る。というわけで、そもそも数年前からCDプレイヤーというものが部屋に無い。
1980年代初めにCDが登場した頃、『SPの時代は「第九」一曲(十数枚組)が6〜7㎏。それがLP(2枚組)で200gほどになり、CD(1枚)で15g…と音楽はどんどん軽くなってきた。そのうち重さゼロになるに違いない!』…と〈冗談で〉言っていたのだが、現在クラウド上にある音楽は何万曲あっても0g。夢が現実になってしまったわけだ。
しかし、考えてみれば、音楽に元々重さはなく、空気を一瞬震わせて消えてゆく精霊のようなもの。二十世紀の初めにヘンな箱に入れられて重しを付けられていたものが、いま再び風のような軽さを取り戻したと考えればいいのかも知れない。
音即チ是レ空ナリ
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