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2016年7月

2016年7月29日 (金)

シン・ゴジラ

Goji公開初日に映画を見に行くのは・・・何十年ぶりだが、暑い最中出向いた甲斐があった。

現代の東京に身長100mを超す生物が現れて突然街を壊し始めたらどうなるか?というストレートな作劇。膨大なセリフ(登場人物全員が怖ろしく早口!)による情報の洪水が息もつかさず問題の多角的な面をあぶり出し、最新CGでスケールアップした「怖さ」(そもそも今回のゴジラ、目が死んでて本当に怖いのだ!)の設定もいい。

ゴジラ上陸シーンは東日本大震災の津波被害を思わせるし、自衛隊の攻撃手順(や指揮系統の描写)は怖ろしくリアル。対戦車ヘリによる機銃掃射、次いで戦闘機からミサイル、地上から戦車砲…などなど現実の兵器が総動員され、SF風熱線砲などは出て来ない。

唯一、ゴジラを倒すための作戦(第1作のオキシゲンデストロイヤにあたるもので、エヴァンゲリオンのXXX作戦を思わせる)の現実味だけは「?」な気がしたが、そんなものは許してしまおう。

これだけ歴史的な(そして世界中に口うるさいファンが多い)作品ともなると、音楽(鷺巣詩郎)も大変だったと思うが、ゴジラの存在が圧倒的な場所では伊福部サウンドを投入し、随所にエヴァンゲリオン(の有名なティンパニの)リズムもちりばめ、コーラスを含む荘厳なストリングスで重厚感と悲劇性を描く…という絶妙なバランス感覚で文句なし。

拍手。

2016年7月20日 (水)

ブラボーオーケストラ!の夏

40FM「ブラボー!オーケストラ」8月〜9月分2本収録のためNHKへ。

8月7日(日)放送分は、チャイコフスキー交響曲第4番、ブラームス:ハンガリー舞曲第5番。小林研一郎指揮東京フィル(2016年3月5日第55回響きの森クラシックシリーズより)

9月4日(日)放送分は、ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(p:三舩優子)、ダン・エッティンガー指揮東京フィル(2016年3月20日第67回午後のコンサートより)。およびロドリーゴ:アランフェス協奏曲(g:荘村清志)、シャブリエ:狂詩曲スペイン。三ツ橋敬子指揮東京フィル(2015年11月8日第65回午後のコンサートより)。

お知らせ・・・
7月24日(日)トロンボーン協奏曲「オリオンマシーン」(trb:井上浩一郎)、井上道義指揮大阪フィル(2016年4月8日大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会より)放送。

2016年7月12日 (火)

夏の特番@音楽のつぼ

Sand_2FM夏の特番(8月末放送)の打合せにNHKへ。

今回は、喜怒哀楽などを表現する音楽の「つぼ」について、作曲家の視点から(職業上のヒミツも含めて)語り合うトーク番組…らしい。

実を言うと、音楽というのは(リズム・メロディ・ハーモニーそれぞれに)かなり「薬物」的な効能があり、AをXg投与するとヒトは「興奮」し、BをYg注入すると「涙腺が刺激」され、CをXg服用すると「眠って」しまう…というような即物的な面がある。

なので、それらの成分や服用法そして致死量?などを,生体実験(生演奏)しながら研究するのが「作曲」であり、その研究の果てに純度の高く効率的な成分を抽出し上手く調合すると…注文に応じて自由自在に「喜怒哀楽」を描けるようになる。(それが「プロの」作曲家ということになるだろうか)

ただし、だからといって度を超すと音楽は危険薬物になる。例えば、ある薬を服用してヒトが突然笑い出し(喜)激怒し(怒)、泣きわめき(哀)飛び上がって乱舞(楽)し始めたら、それは「アブナイ薬」として即使用禁止になるように、「万人が感動して有無を言わせない」ような音楽が存在したら、それは逆に「危険」と言える。

聴く人の愛国心をかき立て独立の機運を煽ったゆえに政治的に演奏禁止になる…というのは(大スタジアムに集まった数万人の観衆を熱狂させるロックコンサートと同じく)作曲家にとっては逆に勲章かも知れないが、かき立てすぎて戦争や侵略に繋がってしまったら洒落にならないことも事実。(実際、第2次世界大戦で我々はそうした音楽の危険性も思い知ったわけだ)

なので、喜怒哀楽のような感情を絶対にかき立てない(聞いて何の感情も浮かばない)音楽…というのも現代では必要とされ生まれてきた。しかし、それが高じると今度は「不安」という別の感情をかき立てるわけで……音楽というのはなかなかに難しい。

・・・というような話になるかどうかは、さだかではない。

2016年7月 8日 (金)

夢あわせ夢たがえ

Photo

7月9日国立劇場〈日本音楽の光彩〉という公演で演奏される「夢あわせ夢たがえ」のリハーサルに立ち会う。

1998年に二十絃箏の吉村七重さんとウィーンフィルの来日メンバー(クラリネット、ヴァイオリン、チェロ)との共演のために書いた作品で、洋風?B♭の世界に和風の箏が夢のようにたゆたう(のが、合うんだか合わないんだか…というのがタイトルの由来)全5章20分ほどの作品。邦楽器アンサンブル版や室内オーケストラ版も存在するが、今回の4人編成版がオリジナル。

演奏は、二十絃箏:吉村七重、クラリネット:四戸世紀、ヴァイオリン:篠崎功子、チェロ:安田謙一郎。

2016年7月 1日 (金)

帰ってきたヒトラー

Hitler

中学3年のとき、ヒトラーに興味を持ったことがある。

当時、受験および将来の職業の目標のひとつに「医学部/医者」というものがあり、「白い巨塔」あたりの医学小説から専門の医学書などをごっそり読んでいるうち「医者のカルテはなぜかドイツ語」ということから「ドイツ」という国に興味を持ったのがきっかけだった。

まだクラシック音楽に興味を持つ前で、ナチス時代のドキュメンタリーLPに収められたヒトラーの「声」や民衆の熱狂の歓声から、甲高い声のこの不思議な独裁者に惹かれ、当時は普通に出版されていた「わが闘争」も手に入れ、学校の図書館にある戦記物やナチスについて記載されている書物を読みあさり、有志数名(と言っても2人ほど)と「ヒトラー研究会」を立ち上げた。シンボルマークはご想像の通りカギ十字である(笑)

とは言っても、別に彼の思想信条に引かれたわけでは無く、医学用語に使われるような言語を扱うほどの「知的なはずの」ドイツ人を(太古の昔ではなく20世紀に!)国家社会主義下のファシズムで統一した方法論に「なぜ?」「どうやって?」という興味が湧いただけなのだが、先生方には「なんでまた(高校受験が近いこの時期に)選りに選ってヒトラーなんだ!」とえらく評判が悪く、職員室に呼び出されてしまった。

当時は(今と違って)3年間学級長を務めた品行方正な優等生(?)でもあったので、別にヒトラーに興味を持って研究したからと言って、ヒトラーの思想信条に共感したわけでも、その行為を認めるわけでもありません。それは、推理小説やミステリーに興味を持って研究したからと言って、殺人や犯罪に共感するわけでも自分でやってみたいと思っているわけでもないのと同じです・・・というような説明をし、先生たちには「まぁ、そういうことならよろしい」と認めて貰ったのだが、「受験の時に面接などでその名前を絶対口にするなよ」と念を押された。イヤ、そのくらいさすがに分かっておりますよ、先生。

ただし、公立高に提出する内申書(本人には何を書かれているか不明の密書)にはどうやら何か「マイナス点」として記載されていたらしく、結果、公立へのまともな進学は諦めて私立の慶應義塾高校への進学一本に絞ることになったのは…怪我の功名と言えなくもない。ヒトラーに興味を持たず(当然そのあとベートーヴェンやワグナーなどのドイツ音楽研究にも進まず)、普通に医学への興味を胸にしたまま高校受験をしていたら、今頃は普通に「医者」になって難病の一つや二つ撲滅させていたかも知れない。

死してなおビミョーに人の人生を変えるヒトである。

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