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2016年7月 1日 (金)

帰ってきたヒトラー

Hitler

中学3年のとき、ヒトラーに興味を持ったことがある。

当時、受験および将来の職業の目標のひとつに「医学部/医者」というものがあり、「白い巨塔」あたりの医学小説から専門の医学書などをごっそり読んでいるうち「医者のカルテはなぜかドイツ語」ということから「ドイツ」という国に興味を持ったのがきっかけだった。

まだクラシック音楽に興味を持つ前で、ナチス時代のドキュメンタリーLPに収められたヒトラーの「声」や民衆の熱狂の歓声から、甲高い声のこの不思議な独裁者に惹かれ、当時は普通に出版されていた「わが闘争」も手に入れ、学校の図書館にある戦記物やナチスについて記載されている書物を読みあさり、有志数名(と言っても2人ほど)と「ヒトラー研究会」を立ち上げた。シンボルマークはご想像の通りカギ十字である(笑)

とは言っても、別に彼の思想信条に引かれたわけでは無く、医学用語に使われるような言語を扱うほどの「知的なはずの」ドイツ人を(太古の昔ではなく20世紀に!)国家社会主義下のファシズムで統一した方法論に「なぜ?」「どうやって?」という興味が湧いただけなのだが、先生方には「なんでまた(高校受験が近いこの時期に)選りに選ってヒトラーなんだ!」とえらく評判が悪く、職員室に呼び出されてしまった。

当時は(今と違って)3年間学級長を務めた品行方正な優等生(?)でもあったので、別にヒトラーに興味を持って研究したからと言って、ヒトラーの思想信条に共感したわけでも、その行為を認めるわけでもありません。それは、推理小説やミステリーに興味を持って研究したからと言って、殺人や犯罪に共感するわけでも自分でやってみたいと思っているわけでもないのと同じです・・・というような説明をし、先生たちには「まぁ、そういうことならよろしい」と認めて貰ったのだが、「受験の時に面接などでその名前を絶対口にするなよ」と念を押された。イヤ、そのくらいさすがに分かっておりますよ、先生。

ただし、公立高に提出する内申書(本人には何を書かれているか不明の密書)にはどうやら何か「マイナス点」として記載されていたらしく、結果、公立へのまともな進学は諦めて私立の慶應義塾高校への進学一本に絞ることになったのは…怪我の功名と言えなくもない。ヒトラーに興味を持たず(当然そのあとベートーヴェンやワグナーなどのドイツ音楽研究にも進まず)、普通に医学への興味を胸にしたまま高校受験をしていたら、今頃は普通に「医者」になって難病の一つや二つ撲滅させていたかも知れない。

死してなおビミョーに人の人生を変えるヒトである。

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