冨田勲@Dr.コッペリウス
この5月に亡くなられた冨田勲さんの遺作「Dr.コッペリウス」の初演を見に渋谷のBunkamuraオーチャードホールへ。
第1部
・イーハトーヴ交響曲
・惑星 Live Dub Mix
第2部
・ドクター・コッペリウス
@渡邊一正指揮東京フィル+初音ミク
期待の「Dr.コッペリウス」 は全7章で構成されたバレエ組曲。冨田さんの死によって前半の1・2章が存在しないそうで、確かに未完の印象は否めないが、最終章で「イトカワとハヤブサ」が聞こえてくるあたりからコーダまでの密度が濃く、充実した感動を与えてくれる。初演半年前に作曲家が亡くなってしまったら公演は大混乱になりそうなものだが、最後の部分の構想がしっかり出来ていたのでGOサインが出しやすかったのだろう。
第1部で再演された「イーハトーヴ交響曲」はダンディの「フランス山人の交響曲」が中心素材になっていたが、今回の「コッペリウス」ではドリーブの「コッペリア」のほかヴィラロボスやワーグナーなど複数の曲が素材。シンセサイザーでのReMixをオーケストラに持ち込んだ不思議な作風で、クラシック通には賛否が分かれそうだが、むかしむかしは耳馴染みの曲を精妙に構成するのが「大作曲家」で、オリジナルの旋律を使う人より格が上だったそうだから(今でも「演奏家」はそうしてリサイタルを開いている)充分アリだろう。
バレエ自体は象徴的な物語で、筋書きが分かりやすいとは言えないが、初音ミク嬢の歌う「コッペリア」の耳馴染みのワルツや「トリスタンとイゾルデの愛の死」など聞き所は多く飽きさせない。主人公の「博士」とミク演じる「コッペリア」は、「羽衣伝説」の男と天女であり、糸川博士と宇宙生命であり、それと同時に冨田さん自身とシンセサイザーの精霊なのかも知れない。
それにしても公演が終わって満員の観客の拍手を聞いていると、会場に冨田さんがいないことに改めて寂しさがこみ上げてくる。僕たちは今みんなトミタ・ロスですよ。冨田さん。
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