三村奈々恵@マリンバクリスタル
三村奈々恵さんの新しいアルバム「マリンバクリスタル」(オクタヴィアレコード:OVCC-00133)届く。
作曲32年目にして初めて音になった〈バードスケイプ〉(1984)収録。最近、福田進一氏が録音してくれた「忘れっぽい天使Ⅱ」(1979)と並び、30年以上前の遠い昔に書いた作品との御対面が重なる。
曲は8分半ほどの小品で、〈デジタルバード組曲〉〈鳥の形をした4つの小品〉に次ぐ「鳥のシリーズ」として書いたもの。元々は〈バードスケイプⅠ〉というタイトルで、この後ソロ楽器によるⅡ・Ⅲ・Ⅳと(ベリオのセクエンツァのように) シリーズ化するつもりだったのだが、一作目の不遇で頓挫してしまった。以後、楽譜棚の中で30年以上眠っていたわけだが、聴いてみるとまさに「押し入れの奥の玩具箱から出て来た可愛くとっ散らかった木製の鳥のおもちゃ」という趣。今回三村さんの手でようやく大気に音として放たれ「なるほど、こういう曲だったのか!」と時空を超えてようやく知ることになった。
アルバムには、ほかにバッハ(前奏曲&フーガやシャコンヌ)と現代作品(ゴリホフ、ハツィスらの魅力的な作品)、さらにキース・ジャレット(ケルンコンサート)が収められ、最後にエルガーの「二ムロッド(エニグマ変奏曲より)」で締めるという不思議な構成。
〈祈り〜prayer〉という副題が示すように、「大切な人に寄せて書かれた作品」が裏テーマになっているそうで、そう言われてみると、確かに、彼女の自然児っぽいキャラクターと巫女のような「神性」が曲の並びにも生きている気がしてくる。「鳥」もまた自然であり神のものなので、そんな世界に融け合うのかも知れない。
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