三村奈々恵マリンバリサイタル
銀座のヤマハホールへ三村奈々恵さんのマリンバ・リサイタルを聴きに出向く。
新しいアルバム(マリンバクリスタル)にも収録の拙作〈バードスケイプ〉30年ぶりの復活初演ほか、イヌイットの喉歌との掛け合いによるハティスの作品、チェロ(古川展生) との美しいデュオによるゴリホフの作品、ピアノ(塩入俊哉)とパーカッション(楯直己)を交えた自作のポップ&スピリチュアルな作品など、多彩な響きを堪能する。
マリンバは、元々はアフリカ起源で木片(rimba)を音の高さの順に並べた(ma)民族楽器。20世紀になって中南米で半音階自在の形に改良され、ラテンやキューバ音楽などに欠かせない人気楽器になった。しかし「木片を叩く」という構造上、自然倍音の成分が少なく、和音が和音に響かないのが弱点。…ではあるのだが、その一方、「木」の感触と機動性そして音のエッジの鮮明さは出色で、リズムとスピード感とエスニックな要素を醸し出すのに最高の楽器でもある。そのため個人的にオーケストラの中によく編入楽器として組み込む。「マリンバなくして〈タルカス〉のオケ版はなかった…」と言ってもいいかも知れない。
ただ、三村さんが弾くバッハ(シャコンヌ)、キース・ジャレット(ケルン・コンサート)、エルガー(二ムロッド)などが繰り広げる美しいハーモニーを聴くと、ちょっと考えを改めなければならないかな…とも思う。あるいは、もう少し倍音を加減できるような改良があればもっと面白くなるのかも知れない。
…とぶつぶつ言いながら、ひさしぶりに金曜日の夜の街を歩く。やけに居酒屋などが混んでいるなと思ったら、プレミアム・フライデー(月末の金曜日は午後3時退社を推奨するという政策)なのだそうだ。…私などの世代からすると、日本人は「勤勉」だったからこそ、ここまでやって来られたわけで、その唯一の取り柄を失ってしまったらもうお終いだろう…と思うのだが、まあ、どっちにしろもうお終いなのだから、仕事なんかやめて酒でも飲みなさい…ということなのか。ま、それなら…賛成(笑)