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2017年10月25日 (水)

英雄・受難・亡き子

HaydnbeethovenmahlerFM「ブラボー!オーケストラ」の収録にNHK401スタジオへ。

10月29日(日)放送分は、ベートーヴェン交響曲第3番〈英雄〉。ミョンフン指揮東京フィル(9月16日第61回響の森クラシックシリーズより)

11月5日(日)放送分は、ハイドン交響曲第49番〈受難〉およびマーラー〈亡き子をしのぶ歌〉(MS:小野美咲)プレトニョフ指揮東京フィル(10月18日第113回東京オペラシティ定期より)

No3今回、ちょっと妙なところに注目してしまったのが、ベートーヴェン〈英雄〉の「3づくし」な点。3番目の交響曲、調性は音階の3番目の音「Mi♭(Es)」の調、当然♭が3つ。(しかも1・3・4楽章が変ホ長調、2楽章がハ短調なので、楽譜は全楽章♭3つ)。主人公はEs管のホルン(しかも3本)、EroicaSymphonyと綴ると頭文字は「ES」。音楽の三和音、フランス革命の三色旗(自由・博愛・平等)に通ずるのだろうか。

Fm こんな「3づくし」みたいな算数的凝り方はベートーヴェンっぽくないような気もしないでもないが、今回、師のハイドンの第49番〈受難〉のスコアを見て「さすが師弟!」と納得した。この曲、4楽章全部がヘ短調という妙な作りなのだが、ヘ短調はフラットが4つ。つまり全楽章で曲の始まりに必ず「十字架」が並ぶのだ(受難だけに!)。作曲家というのは時々こういうヘンなことをする(そう言う自分も心当たりがあるのだが)。

ちなみに「英雄」をナポレオンとするには、第2楽章に葬送行進曲というのは妙だと昔から思っていた。それだと後半2つの楽章は「おまけ」にしか聞こえないからだ。しかし「人は死して〈不滅の存在=英雄〉として生まれ変わる」という人間賛歌と捉えれば、再生後の後半2つの楽章の明るさが納得できる。
もしかしたら「英雄」というのは革命や自由のために死んだ無名の市民たちであり、この曲は(現世の英雄などと言うちっぽけなモノではなく)「神の手に抱かれて兄弟となった」彼ら(英雄=人間)を描いた、ある意味では第九の先駆けとなる壮大な作品なのかも知れない…。

Kindertotenという視点で最後に「亡き子をしのぶ歌」を聴くと…何だか色々と儚さや切なさや透明な哀しみがひたひたと大気に広がってゆくのを感じる。

始まった音楽はいつか必ず終わる。でも、新しい音楽がまたどこかで始まる。同じように、人は生まれ、いつか死ぬ。でも、どこかでまた新たな人が新たな夢を抱いて生まれてくる。そうして世界は遙かな未来へ歪んだ夢のように繋がってゆく。

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