50年前の今月今夜
50年前、14歳の冬のクリスマス。高校受験直前の12月になぜか「交響曲」なるものを聴きたくなってレコードを一枚、父に買ってもらった。カラヤン指揮ベルリンフィル「運命/未完成」のカップリング盤だ。
そして、夜、小さな卓上レコードプレイヤーでそのレコードを聴いていると、父が「こんなモノがあるぞ、見てみるか」とベートーヴェンとシューベルトの楽譜を持って来た。父が若い頃アマチュアオーケストラでフルートを吹いているときに手に入れた古いスコアだ。
それを見ながらレコードを聴き直し、「ここで鳴っているすべての音が楽譜に書かれている!」と気付いた時、頭の中で宇宙が誕生するときのビッグバンのような何かが炸裂した。そしてその夜、「僕は作曲家になる。そして交響曲を書く!」と決心し、翌朝から音楽との長い長い格闘が始まった。
あれからちょうど50年。今はもうあの時の狂気のような音楽への熱はすっかり消え失せ、懐かしさの入り交じった淀んだ残滓だけが記憶の底に浮遊している。気が付けば人生は終わりに近付き、長かったような…短かったような…という微妙な感慨だけが枯れ野をかけめぐる。
そんな人生について、最後に何か一言……と悪魔(サンタクロース?)に問われたら、こう答えたい。
「あぁ面白かった。」