37年目の介護離職
先日、古い知り合い(先輩)に道でバッタリお会いして「どうしてる?」と聞かれたので、「91歳の母親のケアで介護離職中でして」と応えたところボソリと「ウチは105歳」。思わず「ひゃあ」と声を上げそうになって危うく呑み込んだ(笑。
こちらのように独身母子家庭だと(昼間は外部からヘルパーさんなどを頼めるものの)夜は一対一の老老介護。泊まりの旅行どころか夜の外出すら難しい。結果ここ数年夜飲みに行くこともコンサートに行くこともなくなり、ますます音楽からも社会からも乖離してゆく。しかし、彼は奥さんから息子娘孫まで居るようで、とりたてて問題は出ていないらしい。なるほどちゃんと家庭を持って社会人になるというのはそういうことなのだなと(社会人にもなり損ね家庭も持ち損ねた身としては完全に手遅れながら)思い知る。
「でも、奥さんに親の世話を押し付けようとして逃げられ(離婚され)てしまったヤツもいるし、奥さんの方にも介護しなければならない親御さんがもれなく2人ずつ付いているわけで、結婚して家庭を持っていれば問題なしという話では全然ないよ」と件の彼は言う。
一方で女性の側からも、最近、何人かの独身女性演奏家から続けざまに老親介護の苦労話を耳にすることがあり、美しい音楽を奏でているその裏の「現実」に言葉を失うことしばし。ただ女性の場合は男性ほどパニックになったり「家庭崩壊」のような壊滅的な状況にならないのは、基本的に女性の方が強いから(というより育児を含めて「生命」を養うスキルが身体に備わっているから)なのかも知れない。そもそもミューズの神も女性なのだし。
…と人生は山あり谷あり崖あり色々だが、今年は平清盛公「900歳」(永久六年一月十八日/1118年2月10日生まれ)。悠久の歴史の中では人生50年も90年も一睡のネコの夢。