厳島神社の春
大河ドラマ「平清盛」(2012)のロケハン以来ひさしぶりに宮島を訪れる。
むかし若い頃、真冬のシーズンオフの平日に来たときは、人より鹿の方が多いんじゃないかと思ったほど閑散とした景色だったが、今回は暖かい陽気で桜も満開の春休み。どこからこんな大勢の人が?と驚くほどの人の群れが島を埋め尽くしていた。
その後、大河ドラマの話が決まって清盛ゆかりの地を京都〜神戸〜広島と回った時は、痕跡のあまりのなさに愕然としたものだが…この厳島神社に辿り着き、ようやく「清盛の存在した証拠」を実感。これこそ唯一にして最大の清盛の夢の跡だという感慨を深くする。
今回ここで清盛公への奉納コンサート…などという話が出て、一瞬「舞台にグランドピアノを乗せて舘野泉さんが海に向かって清盛のテーマ弾いたら面白いだろうな」と妄想したのだが、「底が抜けますよ」と言われて我に返る。確かに、上は空で、板一枚下は海。建物は世界遺産。天候も含めて「神のご加護」がなければ無理な話だ。
ただ神社の構造をよく見ると、海にせり出した舞台の左右に屋根付きの小さな楽房がある。西洋風に言うならオーケストラピットだ。ここで雅楽の楽器を演奏し、真ん中にある髙舞台で右方左方の対の舞楽をちゃんと舞えるようになっている。ということは室内オペラなら上演可能か…と不遜なことを考えるが、ここで「おごれる人もひさしからず」などと歌ったら清盛公に怒られそうだし。