FM「ブラボー!オーケストラ」6/7月分2本の収録にNHK401スタジオへ。
6月17日(日)放送分は、グルダ:コンチェルト・フォー・マイセルフ(p:小曽根真)。
7月8日(日)放送分は、ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調。演奏は共にバッティストーニ指揮東京フィル(2018年3月9日第904回サントリー定期シリーズより)
奇才ピアニストとして知られるグルダの怪作「オレ様のコンチェルト!(超意訳)」は、自作自演による初演(1988)の様子がYouTubeでも見られるが、冗談音楽?になりかねないぎりぎりラインで古今の楽想を乱舞させるまさにジャズ!な世界。
対して、あれから30年の時を経た小曽根真/バッティストーニ両氏による今回の演奏は、端正かつクラシカルで美しく、逆にモーツァルト風。勿論これはこれで充分楽しいのだが、ニット帽をかぶりお尻をふりふり指揮をし、時には全裸でパフォーマンス!したグルダの(往年のタモリ的な)狂気や毒はもはやない。いや、再現不可能と云えばそうなのだが。
以前、そのタモリ・山下洋輔対談でだったか、ジャズ(ブルース)というのは「オレは大変だったんだ・聞いてくれ」という愚痴・嘆き・恨み・諦めを聞かせる音楽だ…と云う話に深く納得したものだが、ジャンルが確立し権威を持つようになると怨念は消えて古典(形骸)化してゆく。ジャズもロックも現代音楽も。そして〈クラシック音楽〉も。
その流れでラフマニノフ(交響曲第2番)を聞くと、「オレの憂鬱を聞いてくれ」という愚痴が長々とそしてひたひたと押し寄せて来るのを感じ、万感迫るものがある。まさに(ロシア風)ブルースだ。
ちなみに、グルダ自身は、音楽とは…「前向き」で「踊れて」「色っぽい」モノ(実際、今回のコンチェルトもまさにその3つで出来ている)…と喝破しているのだが、その真逆の心の闇(後ろ向きで・踊れなくて・色気のない)から生まれる音楽もまた多いことも事実。それが音楽の怖い…もとい、面白いところかも知れない。