不歌之歌
最近、ほとんど音楽を聴かなくなった。
十代の頃から、レコードやテープ・コンサート・放送・CD(そして、もちろん作曲と演奏)などなど…起きている間はほぼすべて音楽漬けだったことを思うと不思議な感じだが、50年目に玉手箱を開けてようやく「夢から覚めた」…ということなのだろう。
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最近、ほとんど音楽を聴かなくなった。
十代の頃から、レコードやテープ・コンサート・放送・CD(そして、もちろん作曲と演奏)などなど…起きている間はほぼすべて音楽漬けだったことを思うと不思議な感じだが、50年目に玉手箱を開けてようやく「夢から覚めた」…ということなのだろう。
今年の春、仕事場を引き上げる時に押し入れから出て来たテープ類のうち、NHK-FMでエアチェックしたことが明らかな現代音楽モノ(オープンテープとカセット計300本ほど)を、その後NHKアーカイブスに引き取って貰った。
オープンテープは1970年代、カセットは80/90年代にFMで放送された現代音楽を…国内の芸術祭や新作初演ものから海外の音楽祭までオーケストラを中心に…片っ端から録音したもの。AB面にそれぞれ2~3曲ほどずつ収録されているので全部で千数百曲(ぶっ通しで聴くと丸ひと月ほどかかる計算)になる。
引き取って貰ったのは一応整理してクレジット(作曲者/曲名/演奏者/放送日時)付きのものだが、未整理のまま廃棄処分したテープはこの倍くらいはあっただろうか。
もちろん武満徹/三善晃などCD化されている曲も少なくないが、半分以上はNHKにも保存されていないレアもの。アーカイヴ担当の方が丁寧に曲目とデータをリストアップして下さったが、低速で質より量とばかりにぎっしり録音してあるので、音質的にCD化などは無理だろう。
➡ちなみに現代モノCDの方も何やかやで千数百点。こちらはCD評用に送られてきたサンプル盤が多いので、処分するとなると廃棄しかなく(それはあまりに忍びないので)最終的にCD棚ひとつに収まる1000枚ほどを選んで温存することにした。
それにしても、よくもまあこんなに聴いたものだと呆れる(もっとも新譜で貰ったものの中には開封していないものもあるにはあるが(笑)。現代音楽を2分ほど聴いて「嫌い」というのは簡単だが、何千曲も聴いたうえ自身も現代音楽界に身を投じてわざわざ「嫌い」と言うのは…確かにイカれている、と今になって思う。などと今さら言ってももう手遅れだが(笑
夜、田部京子さんのリサイタルを聴きに朝日浜離宮ホールへ。
CDデビュー25周年という区切りもあってか前半のシューマン「交響的練習曲」から気力充実した圧巻の演奏。彼女持ち前の音の美しさに力強さと自在さが加わり、神がかった感じさえする。
そして後半は、(田部さんの演奏に出会うきっかけにもなった)シューベルト最後の変ロ長調のソナタ(第21番)。デビュー時に既に完成された演奏だったが、今回はさらに一音一音が磨き抜かれ、それに力感が加わった底知れぬ演奏。この曲、美しい旋律の裏で退屈冗長な楽句も少なくないのだが、すべての音を丁寧にすくい上げ、一音も無駄にせず生命を与えていることに舌を巻く。
この時期のシューベルトの音楽はどこか病んだ諦観と「男の弱さ」が漂うのだが、母性が全てを包み込んで補完…というより昇華(成仏?)させている感じがする。シューベルト自身がこれを聞いたら「これは僕の考えていた音楽じゃない。でもこの方がいい!」と言うだろうか。私も彼女がプレイアデス舞曲集を演奏した時まさしく「これは僕の考えていた音楽じゃない。でもこの方がずっといい!」と言ったことを思い出す。
アンコールには、そのプレイアデス舞曲集から「真夜中のノエル」も演奏され、作曲者として客席で立って答礼。そのせいか、帰り際、サイン会に列をなしていた田部さんファンのおじさま群のひとりに「ヨシマツさん、おしあわせですね」と羨ましがられる(笑。
虹を見ることなどここ数年(いや、数十年かも知れない)なかったのに、なぜか朝・昼・晩と一日三回も見てしまう。
突然思い立って一瞬だけ、京都に行く。
紅葉も終わり、束の間のシーズンオフ……だと思ったのだが、あちこちに修学旅行や海外の団体さんがわさわさいて、落ち着かない。(TAXIの運転手さんに聞くと「紅葉の時に比べればガラガラですよ。ちゃんと道を歩けますもん」とのこと。
それでもなんとか、むかし平重盛の邸宅だったという新しいホテルの庭を覗き、清盛ゆかりの三十三間堂や六波羅蜜寺を訪ね、祇園の隠れ家的な(紹介されなければ絶対辿り着けないような細い路地の奥の)小さな料亭に寄る。
しかし、どこもかしこも自撮り棒を突っ立てた観光客だらけで、以前のような…しっとり・はんなり…は薄くなった。「Too Much Love Will Kill You」というQUEENの歌が頭の中でリフレインする。QUEEN人気も京都も、もう少し寂れて…もとい、落ち着いてくれた方がいいのに、と勝手なことを思う。
FM「ブラボー!オーケストラ」2本の収録にNHK 401スタジオへ。
三鷹市芸術センター風のホール〈須川展也リサイタル〉で、サイバーバード協奏曲TRIO版の初披露を聴く。
うっかり新しいiPad Proを買ってしまう。