年末のシューベルト
夜、田部京子さんのリサイタルを聴きに朝日浜離宮ホールへ。
CDデビュー25周年という区切りもあってか前半のシューマン「交響的練習曲」から気力充実した圧巻の演奏。彼女持ち前の音の美しさに力強さと自在さが加わり、神がかった感じさえする。
そして後半は、(田部さんの演奏に出会うきっかけにもなった)シューベルト最後の変ロ長調のソナタ(第21番)。デビュー時に既に完成された演奏だったが、今回はさらに一音一音が磨き抜かれ、それに力感が加わった底知れぬ演奏。この曲、美しい旋律の裏で退屈冗長な楽句も少なくないのだが、すべての音を丁寧にすくい上げ、一音も無駄にせず生命を与えていることに舌を巻く。
この時期のシューベルトの音楽はどこか病んだ諦観と「男の弱さ」が漂うのだが、母性が全てを包み込んで補完…というより昇華(成仏?)させている感じがする。シューベルト自身がこれを聞いたら「これは僕の考えていた音楽じゃない。でもこの方がいい!」と言うだろうか。私も彼女がプレイアデス舞曲集を演奏した時まさしく「これは僕の考えていた音楽じゃない。でもこの方がずっといい!」と言ったことを思い出す。
アンコールには、そのプレイアデス舞曲集から「真夜中のノエル」も演奏され、作曲者として客席で立って答礼。そのせいか、帰り際、サイン会に列をなしていた田部さんファンのおじさま群のひとりに「ヨシマツさん、おしあわせですね」と羨ましがられる(笑。
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