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2019年1月22日 (火)

7番か8番か9番か

Moscrosa_2FM「ブラボー!オーケストラ」2月分2本の収録にNHK403スタジオへ。

2月3日(日)放送分は、前半にモーツァルト:フルートとハープのための協奏曲(fl:工藤重典、hp:山宮るり子)三ツ橋敬子指揮東京フィル@2018年7月6日第10回平日の午後のコンサートより。後半は大谷康子さんのヴァイオリンで、チャルダッシュ、タイスの瞑想曲、チゴイネルワイゼン。渡邊一正指揮東京フィル@10月1日第11回平日の午後のコンサートより。

2月10日(日)放送分は、ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲、シューベルト:交響曲第8(9)番〈ザ・グレート〉。バッティストーニ指揮東京フィル@2018年11月21日第121回東京オペラシティ定期より。

Nomiya2ひさしぶりに〈ザ・グレート〉を堪能。ただ、未だにシューベルトのこの大ハ長調交響曲を〈第8番〉と呼ぶのに違和感がある。そもそもシューベルトが生前書き残していた交響曲は6曲。それが死後10年ほどして机の上に未発表の交響曲のスコアが残されているのをシューマンが発掘し、メンデルスゾーンが初演。直前の6番と同じハ長調だったので6番を「小さい方」この曲を「大きい方(ザ・グレート)」と呼ぶことになった。この時点では《交響曲第7番》である。

ところが、さらに30年ほどして、埋もれていた〈未完成の交響曲(ロ短調)〉の楽譜が見つかる。7番の後に見つかった遺作なので《交響曲第8番:未完成》ということになった。しかし研究の結果、この曲は最後の交響曲より前の25歳頃に書かれたことが分かり、28歳で書かれたグレートの方が番号は後、ということで《第9番》となった。この方が最後の交響曲として座りがいいし、単なる「大きい方」という呼称も「偉大な(ザ・グレート)」な感じがして悪くない(そもそもシューベルト自身がフィナーレに「第九」の主題を紛れ込ませているほどだし)。というわけでLP時代は《交響曲第8番:未完成》《交響曲第9番:ザ・グレート》として音楽愛好家に親しまれてきた。

…のだが、シューベルトが完成させた交響曲はそもそも(未完成のロ短調を含めて)8つ。ということは交響曲全集を作ると1曲欠番になってしまうわけで、1970年代に国際シューベルト協会が番号を繰り上げ調整し「未完成が第7番、グレートが第8番」としてしまった。CDの時代からの表記はこれに倣うようになったものの、一時は〈第7(8)番:未完成〉〈第8(9)番:ザ・グレート〉とかなり混乱した表記が見られたし、解説する側も心の底で「余計なことしやがって!」と不満垂れつつ…「8番なんですが、前は9番で、元々は7番と呼ばれていて…」と説明したものである。いや、これはこれから先も(この曲が演奏される限り)延々続くのだろうけれど。

ちなみに、バッティストーニ氏の今回の演奏は、速めのテンポでこの曲の「天国的な長さ(冗長さ)」をスッキリ整理し、マーラーやシベリウスにも通ずるような乱反射する色彩とロマンを聴かせ、なかなか見事な演奏。こういう演奏を聴くと「第8番」っぽい感じがしないでもない。なぜだろう。

Nomiya

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