暗い童話と死の影と
FM「ブラボー!オーケストラ」6月分2本の収録にNHK502スタジオへ。
6月9日(日)放送分は、イタリア近代の作曲家リッカルド・ザンドナーイ(1883-1944)の珍しい作品、あるおとぎ話の印象「白雪姫」(1939)@バッティストーニ指揮東京フィル(2019年1月23日第914回サントリー定期より)。
そして、6月9日(日)と16日(日)の2回に渡って、マーラー:交響曲第9番ニ長調を放送。9日は前半の第1楽章、16日は、後半の第2-3-4楽章。演奏は、ミョンフン指揮東京フィル(2月15日第916回サントリー定期シリーズより)
童話の世界…というのは、現代では子供向けに人畜無害なものが鉄則だが、そもそもは結構暗くて残酷な復讐譚のようなものが多い。「白雪姫」も…自分より綺麗な白雪姫に嫉妬した王妃は「家来に白雪姫を殺させ、その内臓を食べてしまう」ことを計画。それに失敗すると、今度は自ら絞殺・毒の櫛・毒リンゴと3度にわたって殺害を試みる。その死んだ白雪姫の「死体」を、通りがかった王子が7人のこびとからから買い受けるのだが、家来が足を滑らせた拍子に喉から毒リンゴを吐き出し生き返る。そして二人は結婚。悪役の王妃は「真っ赤に焼けた鉄の靴」を履かせられて死ぬまで踊り続けた・・・と結構怖い展開だ。
マーラーは、そんなグリム童話や「少年の魔法の角笛」などの暗い森の中で繰り広げられる奇妙な物語が大好きだったようで、交響曲第1番の葬送行進曲は「死んだ猟師の死体を担いで運ぶ森の獣たち」というなかなかシュールなイメージ。その延長線上に最後に到達したのが交響曲第9番の世界だと思うと不思議な感慨に襲われる。暗くて悲観的な音楽を書いていた割には、実は結構明るく野心に満ち溢れていたという説もあるが、屈折した性格だったことは確か。自己愛と自虐が交錯し、誇大妄想を大声で喚いたと思ったら、いじいじと小声で暗い悲観的な独白をし、自己陶酔が顕著で、語り口はくどくどと果てしなく長い。しかし、その分裂気味の「寄る辺なさ」が、病んだ現代人にはなんとも魅力的なのだから音楽というのは面白い。
« 舘野泉&ラ.テンペスタ室内管弦楽団 | トップページ | 白い巨塔の過去と未来 »
「仕事&音楽」カテゴリの記事
- お知らせ@市民講座(2024.10.12)
- 対談@都響WEB(2024.09.20)
- 草津の夜(2024.08.30)
- Finaleのフィナーレ(2024.08.27)
- 草津音楽祭オープニング(2024.08.17)