展覧会の絵の運命
FM「ブラボー!オーケストラ」12月分2本の収録にNHK405スタジオへ。
今回は「東京フィル第69回響きの森クラシックシリーズ(9月14日@文京シビックホール)」での曲目を2回に分けて放送。12月8日(日)は、清水和音さんのピアノで、ショパン:ピアノ協奏曲第1番/ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。12月15日(日)は、ヴェルディ「運命の力」序曲とムソルグスキー組曲「展覧会の絵」ほか。いずれも演奏は、バッティストーニ指揮東京フィル。
前半はピアノとオーケストラによる名作(ショパン)、後半はピアノ曲をオーケストラ編曲した名作(ムソルグスキー)というプログラム。なぜここに「運命の力」なのだろう?と思って調べてみると、このオペラ、ロシアの歌劇場からの依頼で書いたもので初演はペテルブルク。当然ヴェルディもロシアに出向いたわけで、当時ペテルブルクで音楽の勉強をしていたデビュー前の23歳のムソルグスキーとの接点があることになる。なるほど。
ちなみに、このムソルグスキーの書いた「展覧会の絵」というのは(多くの音楽家がアレンジに挑戦しているように)とんでもなく不思議な魅力に満ちた曲なのだが、ムソルグスキー自身は、親友ハルトマンの遺作展を見て強烈なインスピレーションに駆られ数週間で書き上げたものの、そのまま演奏もせず出版もせず死んでしまった…と聞くと何とも怖ろしい脱力感に襲われる。死後40年以上たってロシア系指揮者クーセヴィツキーが「この曲をラヴェルに管弦楽編曲して貰ったらどうだろう」と思い付いたことで、このクラシック音楽屈指の人気曲が世に出たわけだが、それがなかったらどうなっていたのだろう?(EL&Pも冨田勲も運命が変わってしまっただろうし)。考えるだに怖ろしい。
クラシック音楽界にはこういう怖い話があちこちにあって、むかし「作曲なんて、無人島で手紙を書いてビンに詰めて海に流すようなもの」と自虐的に書いたことがあるが、40年漂流した後で巨大客船に拾われたのは奇跡的な幸運。しかし、…拾われたと思ったらタイタニック号だった…というような…想像しただけで鬱病になりそうな話も、おそらく沢山(かどうかは分からないが)あるような気がする。
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