微笑むベートーヴェン
FM「ブラボー!オーケストラ」2月分残り1本の収録にNHK605スタジオへ。
今回は2月16日(日)放送分で、スメタナ歌劇「売られた花嫁」序曲とベートーヴェン交響曲第5番「運命」。円光寺雅彦指揮東京フィル(2019年12月2日第3回渋谷の午後のコンサートより)
ベートーヴェンというと…子供の頃に音楽室で見てトラウマになる怖い顔の肖像画の代表格だが、最近人気のAI表情エディタ「Face App」というのを使うと一瞬にして笑顔になる(笑 →
こういう顔の肖像画が残っていたら、クラシック音楽を「固い」と感じる印象も随分変わっただろうと思うが、「(AI技術で無理やり笑わせるなんて)冒涜だ!」と激怒する方も居そうだ。むかし「運命」のフィナーレで舞台裏からブラス別働隊やドラムスが登場してどんちゃん騒ぎになる演出をさるオーケストラに提言した処、団員やスタッフは面白がってくれたのだが、指揮者が「(楽聖の書いた楽譜を改竄するような演奏をするなんて)冒涜だ!」と主張してボツになってしまったことがある。ロボットに「運命」を指揮をさせるコンサートをやった時も、会社のトップが「(神聖なる指揮を機械にやらせるなんて)冒涜だ!」と激怒して開発セクションが吹っ飛んでしまった。そこは面白がって笑って欲しい、と思ったのだが、冒涜マンの怒りの前では風前の灯火だった(笑
そう言えば(ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」(中世を舞台にしたミステリー小説)でも描かれていたが)、キリスト教(特にカトリック系)の世界では聖書にキリストが笑う描写が無いことから「笑い」は忌むべきことだと主張する人が居る。その延長線上なのか芸術界でも、普段は結構冗談を言って笑う人なのに写真を撮られるときだけ真面目くさった顔でポーズを取る人が少なくない。個人的には、「面白いこと」「笑えること」を否定するロジックが存在する…というのは、逆に面白いし笑える(?)と言えなくもないが、ベートーヴェンだって(肖像画を描かれているとき以外は)笑っていただろうし、ロックやロボットと共演する自分の曲をきっと楽しんでくれたはず(だと思うのだがどうだろうか)。
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