杜を行く
東京にも緊急事態宣言が出され、代々木公園、新宿御苑と徒歩圏内の散歩コースを全て封鎖されてしまったので、最後の砦?である明治神宮をぐるりと回って生活必需品の買い物に出る。人影は殆どなく、なんだか地球ならざる星を宇宙服で歩いているような気分だが、深い緑の下は空気も清浄な気がしてマスクを外し、しばし深呼吸してみる。
神頼みをしようにも、もともと神に「人の命」を優先する理念などあろう筈もなく、人間だろうがキクガシラコウモリだろうがオオグソクムシだろうが平等に生と死を振り分ける。当のウィルスはただその習性のまま自己を複製させているだけで何の悪意も意志もなく、この事態の終息は(何かの拍子に突然ウィルスが消滅する以外は)、ワクチンが開発されるか、感染して免疫を持つしかない。全員が助かる術はなく、その間に何%かは犠牲になる。人間に出来るのは、それをどれだけ低く抑えられるかだけ。なんとも怖い設定のゲームに人類全体が入り込んでしまったわけだ。
…という虚無感と無力感を深く心に刻みつつ、一時間ほどの散歩の間で「人との接触」は結局コンビニのレジのお姉さん一人。会話はマスク越しの「支払はSuicaで」のみ。音楽はどこにもなく、ただ青い空と白い雲だけが頭上に広がるばかり。