平常でない平常
諸々の自粛要請がひとまず全面解除となり、通常の生活に戻った東京・・・のはずだが、この蒸し暑さの中でも律儀にマスクを付けている人の多いのに驚く。(そういう私も付けているのだが)
そして、ほんのひと月前まではジョークだった…全員「マスク」で演奏するオーケストラや合唱も、客が2mずつ離れて座るガラガラのコンサートホールも、共に現実となり、全員マスクしての第九もリアルに有り得そうな世界になってしまった。
もともとクラシックのコンサートは、客は全て同じ方向を向いて座り声も出さず咳も御法度という、もっとも感染からは遠い状況下で行われる。最初からお客の入りが少ない現代モノのコンサートなどは、こういうご時世には推奨されてもいいくらいだ。なのに「万一」を考えると(特にクラシックの聴衆は高齢者が多いので)恐怖が全てを制止する。
私が解説を担当しているFMの音楽番組も、テレワークで解説の録音は自宅でもできるようになったが、肝心のコンサートの音源が(ここ数ヶ月分ぽっかりと)「ない」。まるで「戦時下」だ。
色々な形を模索しながら徐々にコンサート自体は再開されそうだが、ビクビクしながら音楽を聴くのでは「癒し」とは程遠い。(演奏中に咳をしたり声を出したりしようものなら、即、叩き出されかねないし)。満員のコンサートホールで鳴り響くフルオーケストラを心から楽しめる日は……いつになるのだろう。