内需の功
コロナ禍のクラシック音楽界は大変な状況だが、微かに希望の持てる話もある。外来の演奏家や指揮者が来日できないためオーケストラの演奏会などで「代役」として我が国の若い演奏家が登場する機会がいくらか増えていることだ。
現代のように世界中から音楽家たちがひょいひょい来られる状態では、いくらテクニックや音楽性を磨いても世に出るのは至難の業。なので、今回のような鬼の居ぬ間(?)に自分の居住する地域での内需を確保する機会を得られるのは、演奏家にとっても聴き手にとっても健全なことのような気がする。特に、指揮者などは(こういう事態に備えて)国内在住の若手指揮者を常任に据えることがもっと推奨されていいと思う。
これまでは世界中を飛び回る売れっ子(今日はパリ・明日はニューヨーク・週末は東京というような)が成功した音楽家の理想の形だったが、それが今回そのまま感染拡大とパンデミックの温床となったわけで、この騒動を機に一定の地に土着・滞在するイン・レジデンスという形を再評価する時代が来るのかも知れない。なにしろ今回の騒動が収まっても、もう前のようには戻れないことは確かなのだから。
(ちなみに作曲家はというと…もともとクラシック音楽界では「死んでなんぼ」の存在なので、居ても居なくても生きていても死んでいても状況に殆ど変化はないような気がする(笑)